ドイツ・環境・自然

環境の国って言われるドイツだけど、色々とジレンマがあるみたい。環境・自然を中心に日常の事書いています。

ディーゼル車問題のその後とドイツ環境援助機構について

卵の農薬問題からすでに2週間。当初は卵検査が拡大されたが、現在、スーパーに卵が復活。卵の殻一つ一つには通常出荷確認コードが印刷されており、またそのコードの見方が卵のパーケージにプリントされているのだが、今回の卵スキャンダルの影響で卵売り場にも出荷確認コードの見方が大きく掲示されている事が多い。また食品に添加された卵については、その多くが出荷元の追跡が不可能な状態であった。結局、多くの環境問題・健康問題同様、一過性で終止符が打たれるようだ。

 

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ディーゼル車問題に関しては、先日、ドイツ社会民主党(SPD)のマルティン・シュルツ氏が自動車メーカーへより強い圧力をかける事が必要だとし、より厳格な排気ガス検査と欧州全体での電気自動車の普及を強制的に定める事を提案している。

しかし、今回のシュルツ氏の発言の対してメルケル首相は自動車業界の姿勢に関しては強く批判するものの、シュルツ氏の提案には賛成できないと言う。

 

ドイツは今年9月に連邦議会選挙が行なわれる。シュルツ氏が独首相となれば彼の今回の発言が実行される可能性がでてくる。

近年、電気自動車の研究・開発に力を入れている企業は、更に電気自動車界が活性化され、新しい経済効果に繋がると言う。

 

しかし他の専門家が指摘するように電気自動車のバッテリーの生産過程では多くの有害なCO2が発生する。またバッテリーの廃棄も考えなければならない。この事実を踏まえると、今後、より環境を考えての新しい技術が自動車産業界に要求されることにもなりそうである。

 

ソースZeit-onlinespiegel-onlineWDR-radio

 

なおここから下は先週のブロク内容なのだが更新が間に合わなかった為、要約を記載する。テーマはこのディーゼル会談の引き金ともなった裁判の原告にあたるDUHという環境団体についてである。

 

ドイツにはBUNDドイツ環境自然保護連盟)やNABU(ドイツ自然保護連盟)と言った色々な環境団体がある。DUH(ドイツ環境援助機構)もそのような環境団体の一つである。

発足は1975年。主な活動目的は、生物多様性と自然資源の保全、大気環境保存、再生可能エネルギー、資源の再生化とリサイクル、持続可能なモビリティ、持続可能な生活環と経済システム。

 

DUHはディーゼル車から排気される窒素化合物の値がEUの規定の基準値(0.08g/km)より高くなっていること、つまりEU環境法令違反している事を指摘し、現在16都市にて環境団体訴訟を起している。環境を守る為、行政に(企業にも??)違法行為の差止と是正を求めているのである。

 

2015年7月には欧州委員会はすでにドイツが大気汚染基準に違反している事を通達し、改善を求めているのだが、それとは裏腹に不正ソフトウェアによるVWの排出ガス規制不正問題がその数ヶ月後に露見した。そのような事を踏まえての訴訟だと聞く。

 

なお訴訟を起す際に、DUHは独自に窒素化合物と二酸化炭素の排気量の調査を行なった。その調査データーを元に筆者がディーゼル車の窒素化合物排気量の平均を計算すると0.34g/km、また二酸化炭素は143.9g/kmとなる。加えてガソリン車(ハイブリッド車含む)の場合だが、窒素化合物は0.01g/km、二酸化炭素は106g/kmという値になる。ただしドイツ連邦環境庁の発表によれば2017年のディーゼル車の窒素化合物排気量の平均は約0.51g/kmで、DUH調査に基づく筆者の数字より大きい。また通常、ディーセル車の二酸化炭排気量はガソリン車に比べて少ないというが上記の数字ではハイブリッド車を含むガソリン車より大きい。このような調査データーを目にすれば、やはりディーセル車の禁止を考えてしまう。

さて訴訟を起すだけでは解決策にはならない。ではどのようね解決柵をDUHが挙げているか紹介すると、ディーゼル車の変わりに天然ガスやハイブリッド車への変換、バスなど公共機関にはより効果的な排ガス浄化触媒装置の設置。また、割引切符の販売や公共機関に隣接した駐車場を充実され、車からの公共機関への乗り換えを促す。自転車用高速道路の整備(既に一部の街には建設されている)や車の市内での大幅な時速制限など。大都市への車の乗り入れ台数を減らす事で、窒素化合物だけではなく、排気ガス全体を削減できると言う。

 

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※Euro6とは大気汚染物質の排出規制値を定めた排ガス規制で2014年にスタートした。対象の大気汚染物質は一酸化炭素、窒素酸化物 炭化水素 ディーゼル排気微粒子など。なお二酸化炭素に関しては規制値がない。

※2009年欧州委員会は乗用車の二酸化炭素排気量の段階的削減を定めている。2012年から2015年に掛け、新車の二酸化炭素排気量を130g/kmとし、また2021年より95g/kmとしている。

※測定平均値はDUHの調査書を元に筆者が計算。

(調査書NOx- und CO2-Messungen an Euro 6 Pkw im realen Fahrbetrieb, Messergebnisse)

 

ソース ドイツ環境援助機構ドイツ連邦環境庁

 

 

 

 

ディーゼル車会合に思う事。8月3日

ドイツをはじめ欧州ではディーゼル車、ガソリン車の生産・販売、また都市への乗り入れ規制の議論が活発である。先月30日にはシュトゥットガルトの裁判所にてディーゼル車禁止の判決が下った。これを受け、昨日8月2日、ベルリンにて自動車産業界の代表とドイツ政府閣僚が緊急会合をおこなった。

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この会合に参加した自動車メーカーはフォルクスワーゲン、ダイムラー、BMW、オーペル、フォード。なお環境保護団体、消費者団体などは会合には呼ばれおらず、またドイツ首相も休暇中で欠席だっという。

 

なおこの会合の背景に2年前のフォルクスワーゲンの排出ガス検査不正行為による消費者の信頼損失という事実を踏まえ、大都市でのディーゼル車走行禁止を回避するだけではなく、失われた信頼とディーゼル車支持率の回復を狙う目的があると推測されている。

 

この会合の結果、各社が国内で販売したディーゼル車、およそ530万台について、排ガス制御ソフトウェアを更新する事、また費用はメーカーが負担する事で政府と自動車メーカーは合意に達したと聞く。またメーカー側はこのソフトウェアの更新で窒素酸化物の排出量を25%から30%削減できるとし、これにより法律で規制されている40µg/m3 (空気)以下まで値が下がる事が期待されている。

 

しかし反対意見もあり、環境団体、ドイツ環境援助機構(Deutsche UmwelthilfeDUH)はこの処置では窒素酸化物排出量はわずか2%から3%の削減になるであろうと懸念している。

ドイツ環境自然保護連盟(Bund für Umwelt und Naturschutz DeutschlandBUND)も不十分な結果であるとコメントを出している。

 

加えてソフトウエアの更

新によって窒素化合物の削減に取り組む事には合意したものの、現時点ではメーカーの対策も義務化しておらず、ヘンドリクス環境相は自動車メーカーに速やかな対応を要求している。

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国民感情もまた色々である。

ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンよりも比較的燃費がよく二酸化炭素の排出もガソリン車より少ない。2020年までに二酸化炭素40%削減を目標にしているドイツはディーゼル車の普及率も高い。さらにクリーンディーゼル車は減税の対象だったと記憶している。故にディーゼル車のメリットを重視する人も多い。

 

しかしながら逆にディーゼル車からの窒素化合物や粒子状物質などによる環境汚染や健康被害を重要視する声も大きい。

加えてディーゼル車・ガソリン車の変わりに電気自動車分野に力を注ぐべきだと言う意見も多い。しかし再生可能エネルギーによる発電が他国に無い速さで進められているドイツだが、現在でも褐炭露天掘りは続けられており、年々露天掘りの面積が広がり、近辺の集落がゴーストタウンと化している。その事実を指摘する人もいる。

(余談)褐炭火力発電の削減政策は行なわれているが、ここ数年褐炭露天掘り予定地に足を運ぶ旅に少しづつ住民が減り、最後には荒れた農地と人が住んでいた状態で残されている家屋をみると非常に寂しい気持ちになる。

また私の目には目先の快適さを優先させる人がまだまだ多い様に映る。2キロの距離の為に車を使用する人。踏み切りや信号待ちで車のエンジンをきらない人。しかしそれらは人其々の生活の中での優先順位や考え方が異なため、私の目に映るのと他の人の目に映るのでは異なる事だろう。ただ私個人としては、少しでも環境に優しくありたい、なぜなら環境や自然は十分に病んでいるので・・・と思いつつ、今日も自転車での移動。自転車用車線の整備をお願いしたいのは、やはり自分も目先の快適さを求めるからなのかもしれない。

 

ソース。

NDR, Tagesspiegel, Zeit Rbb24、他

 

 

 

 

 

卵の中から農薬が・・・。

卵の中から農薬が。

 

朝食に半熟ゆで卵が好きなドイツ人。その卵の中から農薬が検出された。

 

農薬が検出されたのはオランダ産の卵で、ドイツの多くの店舗に卸されている。現在オランダおよびドイツで農薬が混入している可能性のある卵の回収が行なわれるとともに、消費者に注意を促している。

 

検出された農薬はフィプロニルというもので、農作物を害虫被害から守る為に使用されるだけではなく家畜やペットについたノミやダニといった害虫駆除にも使用される。

今回は養鶏農家で鶏の飼育施設の清掃・害虫駆除に使用されたものが、鶏に取り込まれ、その結果、卵の中が農薬で汚染される事になっという見方が有力である。

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ちなみにこのフィプロニルだがネオニコチノイド系農薬とともにミツバチの大量死の原因の一つではないかと推測されており、今から数年前にフランスでおこったミツバチの大量死の際には直接の原因はフィプロニルであるという結論がまとめた。

 

さてフィプロニルの毒性だが、遅効性であり、この毒に暴露した昆虫は直ぐには死なないと聞く。ゆえにゴキブリや白アリ駆除等にも使用され、この毒を摂食した固体は巣に戻ってから絶命し、またその糞や死骸がさらなるフィプロニル元になるため、巣全体への効力は広いという。

 

人間の場合における中毒症状だが皮膚や目などの炎症、また頭痛や嘔吐などが挙げられる。またこの物質は神経に影響をあたえるため神経過敏などの症状が生じる事もあり、加えて神経毒のため、個人の感受性によって毒性が強く発症される恐れもあるらしい。現在オランダ・ドイツでは卵から検出された農薬が致死量に至らなくとも中毒症状、とりわけ子供の中毒症状の発症に注意を促している。

 

なおドイツ国内でもフィプロニルの調査が行なわれており、既にいくつかの養鶏場でのフィプロニルの使用が確認されている。またオランダからの卵の中には有機農法、オーガニックの卵も含まれている。(ドイツではビオという)。このビオの概念だが遺伝子組み換え植物、化学肥料、農薬の使用は禁止を挙げているが、今回の汚染卵の一件でどうも家畜舎の洗浄剤の規定・規則および監視が緩いのではないと自分は考えるようになった。その考えが正しいかのように、今日の新聞では市販の許可が下りている飼育施設の洗浄剤の中に使用制限があるフィプロニルが混じっていたという。

 

ソース。

NDR, Tagesspiegel, Zeit

 

ディーゼル車禁止の判決下る。シュトゥットガルト7月28日

フランス政府が2040年までに国内におけるガソリン車およびディーゼル車の販売を禁止すると発表したのは記憶に新しい。続いてイギリスでも同じように禁止になる見通しだと聞く。

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ここドイツではまだ政府としてはガソリン車およびディーゼル車の販売禁止については発表されていながい、今からい1時間はど前にシュトゥットガルトの裁判所にてディーゼル車禁止の判決がくだった。

 

シュトゥットガルトがバーデン=ヴュルテンベルク州の州都でありダイムラーやポルシャのある都市である。また同州には環境対策に力をいれているフライブルクもある。

 

裁判ではディーゼル車に基づくシュトゥットガルトの空気汚染の数値が基準を大幅に上回る事が提示され、また今までのディーゼル車対策でも空気汚染から回復が難しいとみられ、今回のディーゼル車禁止という判決につなっがっと聞く。なおこの判決では2018年より禁止となる。

 

地球温暖化をはじめ環境対策は大きな課題である。医療技術やテクノジーが発達して、人類そのもの平均寿命も延びているが、大きな環境の変化、またそれによる飢餓・飢饉の恐れら、また戦争だけではなく、環境の変化による自然災害が増えれば、自国を捨てて他の地へ逃げる人々も増えるだろう。そのようね事を考えるとこれは良い判決だと自分は思う。環境問題は今の世代の人達だけでなく、これからの世代の人達の問題でもある。環境を守る為、自分のできる身近な事をしたいと改めて思った。

 

今年春には国連気候変動会議がドイツ・ボンにて開催された。また国連気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)が11月にボンで開催される予定だ。今後のドイツの環境対策の動きが大変気になる。

 

二酸化炭素の排気2016年

先ほどドイツのニュースで放送されたのだが、昨年度のCO2の排気量は前年度の902mio.トンを上回り906mio.トンだと言う。9億600万トンだと言う事になる。ここ数年、二酸化炭素の削減率が横ばい状態のドイツ。交通量の増加が多きな原因の一つだと言う。このままでは2020年目標の7億5千万トンへの削減が難しいとのこと。色々と思う事があるので後日、改めて文章にしてみたい。

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wikimedia U.S. Census Bureau

ケルンに残されているビルの話

ドイチェ・ヴェレ(Deutsche Welleとはドイツの国際公共放送局でラジオやテレビ、インターネットでサービスを提供している。とりわけラジオはドイツ語・英語、さらに29ヶ国語で放送されている。

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ドイチェ・ヴェレのビル/Wikimediaより引用

そのドイチェ・ヴェレの建築物がケルンの街中に立っている。建設がはじまったのは1974年、6年を費やし1980年に完成した。高さ138m、34回からなるビルは当時、))近代的様相と中性からのゴシック様式の混じるケルンの街中で脚光を浴びた。当時、1000人もの関係者が建物内で働いていたと聞く。

 

しかしこのビルには、建設当時はまだ禁止になっていなかったに石綿吹き付け剤が各階の防災対策の為に使用されていた。その量は約500トンだと言われる。また吹き付け剤以外にも石綿含有の石膏ボートを多くの箇所に使用されている。2003年には建物内で働いていた1000人もの従業員を連れ、ドイチェ・ヴェレが隣街のボンに引っ越す原因の一つになった言うのがこの石綿である。

 

それから今まで、このビルはケルンの街中に手つかずのまま、放置されていた。

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ベース部分の取り壊し                          エレベータ型のゴンドラの設置                        

現在このビルの解体作業が行なわれている。解体工事が始まったのは2015年の夏である。当初の計画ではまずは敷地内のベース部分を取り壊し、機材やトラック等の為の場所を確保。次のステップとして中央のビルにエレベーター型のゴンドラを設置。これで各階の廃棄物を地上階まで輸送する。また同時に各階を養生隔離し、室内を負圧に保ち、石綿の除去作業が行なわれる。この過程を最上階から下階に向かって進められていく。最終的には骨組のみ残され、爆破解体が行なわれる予定である。なお石綿除去と爆破だけでも数千万ユーロだと言う話である。

 

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 各階は養生隔離され負圧に保たれる。        石綿含有廃棄物はゴンドラで地上階へ。

        

本来のプランでは2017年の春に爆破される予定であったが、石綿除去工事の許可がなかなか下りず、除去工事の着手が先送りなっていた。やっと2017年1月に除去工事が始まったと聞く。

 

爆破解体自体の予定も咲く送りとなり、2018年を目処としている。この建築物が爆破されれば欧州で爆破解体されたビルの中では最も高いビルと言う事になる。

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骨組のみ                        爆破イメージ 

 

 

しかし、このドイチェ・ヴェレのビルの隣に立つ、ドイツラジオにて粉塵や建築物からの破片等による問題、また騒音問題への懸念が高まりつつある。ドイチェ・ヴェレとドイツラジオの隔たりはたったの35mだと言う。故に現在は爆破解体の許可は下りていない。

なお解体跡は住宅地とし整備され750戸の居住住宅が建設される予定でいる。

 

画像の引用:youtube, Deutsche Welle Rückbaukonzept, Bauwens-Unternehmensruppe/Die Wohnkompanie

 

 

 

 

 

 

ドイツ・環境・「バイエル社のモンサント社の買収」に思う事

週のニュースより。

 

色々と言われている除草剤グリホサートの製造元・アメリカの大手農薬メーカー・モンサントの買収が決まった。買収元はアスピリンで有名なドイツの大手医薬品メーカー・バイエル。買収提示総額は620億ドルだと言われていたが、モンサントが金額に不満を示していた。

しかし昨日660億ドル(67800億円)にてモンサント社と最終合意にいたり、買収が決まった。

 

 

農薬の大手企業には色々あるがやはり市場シェア率が一番高いのはシンジェンタである。あるデーターによると1位シンジェンタ(スイス・23.1%)、2位バイエル(独・17.1%)、3位BASF(独12.3%)(ETC Group, 2013 – 11“ Putting the Cartel before the Horse...and Fram, seeds, Soil, Peasants, etc.

 

また種苗市場においては欧州議会発行の調査書によると1位モンサント(アメリカ・21.8%)、2位デュポン(アメリカ・15,5)、3位シンジェンタ(スイス・7,1%)だと言う (CONCENTRATION OF MARKET POWER IN THE EU SEED MARK: The Greens, EFA in the European Parliament; 欧州議会)

 

しかし今回の買収によりバイエルーモンサント社グループによる種苗市場でのシェア率は30%までに拡大、また農薬部門においてのシェアは25%程になると予想され、世界シェアの1位シンジェンタを追い越す形になる。

http://www.spiegel.de/wirtschaft/unternehmen/bayer-chef-zu-monsanto-uebernahme-eine-aussergewoehnliche-moeglichkeit-a-1112434.html)、

 

ここ数年、農業化学分野での大手企業の合併や買収が目立つ。ダウ・ケミカルとデュポン、中国国有の中国化工集団とシンジェンタ。農業関連市場が再編されつつある。バイエル社も例外ではなかった。この波に乗り遅れてはならないっと言う気持ちもわかる。

 

しかしエコ・ビオ・オーガニック ブームのドイツ。市民の多くがエコ・ビオ商品の存在に賛成であり、またエコ・ビオ・オーガニック商品を通常購入しない人でも遺伝子組み換え商品には反対であると聞く。統計的にみても70%以上の市民が遺伝子組み換えに反対だと言う。

 

そんなドイツなのにバイエルが買収したのは悪名高いモンサント社である。

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モンサント社は化学薬品・農薬の会社であった。ベトナム戦争で使われた枯葉剤の製造元でもある。この枯葉剤の影響で奇形児出産率が高まり使用が禁止されている。また同戦争からの帰還兵の間でも健康被害が現れており、枯葉剤製造元(モンサント社)に対し集団訴訟が起されたと言う過去がある。(https://ja.wikipedia.org/wiki/枯葉剤)

 

現在は遺伝子組み換え(GM=genetically modified)をおこなった種子、またそれと一緒に強力な除草剤を販売している。この除草剤の効果は抜群で、害虫・雑草・益虫(蜜バチやミミズなどの役に立つ動物)を死滅させる(話によるとネズミなどの脊椎動物にも効果があるらしい)。しかしGMをおこなった植物は耐久性があり、毒性の強い除草剤にも係わらす成長する。個人的に「自然の理に反した怪しい植物」と言うイメージを持っている。進んで食べたいとは思わない。

 

また同社の事業方針も批判されてる。GMした種に特許を申請してあり、同社の種を使用しての、自家採種(植物を育てて種を取る事)は特許の侵害とし禁止している。またつい昔からの習慣で

同社の種を自家採種した農家は同社の持つ特殊なネットワークにより発見され、違約金を請求される。更に加えて同社は自社の種の権利を守る為、種に自家採種した場合、元気に育たないと言う特徴を組み込んでいる。

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聞くところに因るとドイツでは母乳や尿からこの除草剤に成分が検出されていると言う。ラットによるGM食物実験により発がん性も強く疑われている。同社の製品を買わないようにするデモも盛んである。しかしドイツ政府の対応は曖昧である。ドイツ国内でのGM種子の販売の不許可、GM植物の栽培・収穫の禁止などに向けと調整をする方向であるとは聞くが、発がん性の疑いがある同社の除草剤グリホサートの使用も学術データーがそろっていないと言う事で未だに禁止されていない(なお長期使用の許可も認定されていない)。

 

また健康被害への懸念だけではなく、特定の植物の栽培により動植物の多様性の減少が心配されている。特に昔からその地で栽培されてきた、在来種の栽培が抑制されたり、またGMとの交配なども心配される。

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ドイツではTTIPの反対も強い。TTIPとは環大西洋貿易投資パートナシップの事でアメリカとEUとの間の自由貿易協定の事を言う。ドイツ市民はこれによりGM農作物の流入を懸念している。

 

しかしこれにより欧州において毎年1200億ユーロ、アメリカでは950億ユーロの経済効果があるとされており(Raoul & Renaud 2014)、またモンサント社、バイエル社、共にTTPIの望んでいると聞く。この買収の裏にはTTIPとの何らかの関連性があるのかもしれない。