ドイツ・環境・自然

環境の国って言われるドイツだけど、色々とジレンマがあるみたい。環境・自然を中心に日常の事書いています。

ドイツ・昆虫減少に政府機関動きだす!?

日ほど前のニュース番組に元環境大臣クラウス・トッパー氏が出演していた。 彼のインタビューのなかで久々に「Silent Spring」という言葉を聞いた。

 

Silent Spring」と言うのは1962年に出版されたレイチェル・カーソンの著書である。日本語では 『沈黙の春』 と訳されている。「自然は、沈黙した。うす気味悪い。鳥たちは、どこへ行ってしまったのか。」「春がきたが、沈黙の春だった」―― DDTをはじめとする殺虫剤や除草剤を大量に使っている事により、化学薬品が、生物や環境などを汚染し、人間にも被害を及ぼしている現状を鳥が鳴かなくなった春という出来事で表している本である。

 

DDT欧州では1940年代から殺虫剤として使用されてきた。なお禁止になったのは70年代。ちなみに今年の夏、欧州では養鶏場の卵から殺虫剤フィプロニル が検出された事が問題となったが、韓国ではDDT が検出されたという。どちらも毒性のある化学薬品である。

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さて、この『沈黙の春』 がインタビューのなかで語られた理由なのだが、昨10月に発表された昆虫の減少と関係している。

 

世界的に昆虫が減少している事はほぼ明確であろう。ドイツでも自然保護区に生息する飛行昆虫数が、27年間で約7%あまり減少したという調査結果が米科学誌「プロスワン」で発表された。

その内容に危機感を感じたのだろうか?11月9日に昆虫の価値を見直すべく学会が行なわれた。研究分野、経済分野、政治分野、環境保護分野から様々な専門家120名が集まり昆虫の役割や価値を再認識すると共に、昆虫減少という問題に今後どの様に対応していくべきか議論された。

 

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昆虫は生態系ピラミッドの下の部分を占める。多くの土壌昆虫は分解者であり、落ち葉や多くの有機物を分解する。菌類を含め分解者がいなければ、それこそ、「林道など人間の髪の毛だらけになってしまう。」という変な心配をしている自分である。また多くの草食の昆虫(嫌な吸血の蚊やアブも含めて)は鳥や魚、カエルやトカゲの餌となる。餌が無ければ、鳥を始め多くの生物が餓死してしまう。そして鳥達の春の喜びの歌を耳にする事がなくなり、『沈黙の春』 が訪れるのである。

 

このような事になっては流石にまずいっと思い、やっと政府機関が動きだしたようである。主な講演者は元環境大臣のトッパー氏をはじめ、連邦自然保護庁、州環境・自然保護、農業・消費者保護省など(現ヘンドリクス環境大臣は国連気候会議COP23で関係で不参加)。また環境団体NABUの代表、フンボルト博物館 (余談:ドイツ最大の自然史博物館、25メートルのブラキオサウや始祖鳥もみる事ができる)研究者、ミュンスター大学、動物環境学教授など。

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また大変面白い事にスピーカーとして殺虫剤を生産しているメーカーの代表が講演をおこなった。この会社は50年代中期より害虫対策の為の殺虫剤の生産・販売を行なっているのだが、5年前よりバイオ・ニュートラルな殺虫剤/殺虫方法の開発に取り組んでいるという。また販売価格の一部を環境保護・生物多様性の保護に還元するという。虫によって生活の糧を得ているため、売り上げの一部を自然保護に回す事は良いCSRである。

 

 

何処までどの様にニュートラルなのかはまだ開発中ということで発表できない部分もあると思うが、情報を仕入れるべく、メーカーに問い合わせをしてみたい。バイオ・ニュートラルな殺虫剤/殺虫方法ついて詳細が判明したら、また報告した。

ソース:westfalen-Blatt "Der Wert von Insekten" 9.11.2017