エコと自転車・ドイツ 2017
シティーサイクル
ドイツの発明家カール・ドライスが発明した「ドライジーネ」(下写真)という自転車の元祖が誕生してから今年で200年。Climate Alliance(気候同盟)がシティーサイクル活動をスタートしてから今年で10年。何かと今年は自転車が注目されて年である(加えてツール・ド・フランスのスタートも今年はドイツ)。
ディーゼル車やガソリン車からの窒素化合物や二酸化炭素が大気汚染の一つ原因であることに比べると自転車ほどエコな乗り物はない。
ドイツの自転車所有数は7300万台(日本7100万台)、人口当たり自転車保有台数0,83(日本0,61)、自転車利用者の自転車走行距離は平均1日あたりに3.4km(日本2.9km)、自転車の値段の平均8万円(日本2万円)というデーターがある。(ソース:ZIV, Ramp, VSF, JBPI)
自転車の値段以外はドイツと日本の自転車データー、なかなか近いものがある。ちなみにドイツの自転車一台平均8万円には電気アシスト自転車は含まれない。電気アシスト自転車を含めると自転車1台の平均価格は17万円ほどになるというから、これにはびっくりである。
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ドイツ |
日本 |
自転車所有数 |
73000000 |
71000000 |
人口当たり自転車保有台数 |
0.83 |
0.61 |
走行距離平均:1日当り |
3.4km |
2.9km |
自転車価格:1台当り |
80000円 |
20000円 |
統計データーはさておき、今日のテーマ。「シティーサイクル」
これはドイツ・フランクフルトに本部を置く環境団体「気候同盟」がは2007年にスタートしたサイクリングイベントである。
簡単に気候同盟から説明。この機関は温暖化対策を推進するヨーロッパの26カ国、1700以上の地方自治体が加盟するネットワーク組織である。メインになる活動と目的は二酸化炭素(CO2)の削減である。その活動の一環としてドイツ全国規模でサイクリング週間をもうけ、cycling for a better climateをスローガンに政治家や市民へ積極的な自転車利用を呼びかけている。これが「シティーサイクル」である。
ここに更なる遊び心がある。自転車週間も設けるだけではなく、都市対抗、及び市内でグループ対抗や個人対抗でサイクリング週間内(3週間)で走行距離を競う会う事ができる。イベント参加者(政治家・市民)は自分の街の「シティーサイクル」に登録し、ホームページにて毎日の走行距離(下画像)を書き込む事ができる。なお登録に関してはグループ参加でも個人参加でもOK。また対抗システムがある為、他の参加者の走行距離も見る事ができる。加えて走行距離をCO2の削減量に置き換えての数字もアップされる。環境の為に走るのも良し、自分の健康の為でも良し、また参加者と競い合っても良し、と多目的に楽しめる。今年の参加都市・自治体数620、参加者数22万人(東京の渋谷区の住人と同じくらい)、参加議会議員・政治家数3800人とのこと。
(ソース:stadtradeln)
ちなみに筆者の参加するグループは一人当たりの平均走行距離653kmで市内で3位を獲得。なおグループ対抗ではやはり地元の郵便局グループが強し。仕事がら郵便屋さんの自転車利用率は最大である・・・。
しかし昨日のメディアは「ドイツのCO2の排出量を2020年までに40%削減する」という目標の達成が危ういことを伝えている。現状維持(環境税の引き上げ等なし)で算出した場合、最大でも32.5%の削減だと言う。目標設定時には専門家により2020年のCO2の排気量は7億5000万トンだと推定されたが、最新の推定排気量は8億4400万トンだと言う。
(ソース:Zeit Online)
自動車の排気ガスからのCO2も一つの原因だが、ドイツではまだまだ石炭・褐炭火力発電への依存も高い。2017年の発電量のデーターでは石炭・褐炭火力発電は約40%である。ただし再生可能エネルギーの発電量も石炭・褐炭に匹敵するほど現在は増加し、全体の約38%を占める。。ちなみに稼動中の原発も発電を行なっているわけで、その発電量は全体の約13%である。
(ソース:Fraunhofer ISE)
ドイツの発電の割合 |
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石炭・褐炭 |
40 % |
再生可能エネルギー |
37.9 % |
原子力 |
12.7 % |
天然ガス |
8.3 % |
石油・その他 |
1.1 % |
今年の気候変動会議及び国連気候変動枠組条約の締約国会(COP23)のホストを務めるドイツ。(しかもCOPは条約事務局がある都市で行なわれる)
今から「目標達成は無理・専門家の見当違い」と逃げの体制になるのか又は「すべての手段を駆使し目標達成」を果たし世界に環境先進国ドイツをアピールするのか、大変興味がある。