ドイツ・環境・自然

環境の国って言われるドイツだけど、色々とジレンマがあるみたい。環境・自然を中心に日常の事書いています。

ドイツ・環境・「アシナシトカゲの話」

Blindschleich(ブリントシユライヘ)アシナシトカゲ

決して目が見えないわけでは無いが、なぜか目無し(Blind)だと言われている、この生物は実はトカゲである。足が無いのが特徴である。

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昔し高校の漢文の教科書に「蛇固無足。子安能為之足」と言った「蛇足」なる詩があった。もともと足の無い蛇に余計な足を描き加えた為、これでは蛇にあらずっと言う説話である。

話の内容は、何かの競争があり、早く綺麗に蛇を描く事で勝ち負けを競った。参加者で一番先に蛇を描いた人は、時間が余った為(また自分の画才を自慢する為?)蛇に足を描く加えたのである。結果、「これは蛇では無い」っと言う事になり、勝負に負けてしまった。

それより後、「蛇足」とは意味の無い余計な物を有らす言葉になった。

確かこんな感じの説話であった。子供心に「なるほどなぁ」と感心してしまった事を覚えている。

 

ではもともと足のあったトカゲが足をなくした場合はどうなるのか?やはり単純に足りないから「不足」なのだろうが、蛇足に習い、何か良き説話があれば大変興味深い。

 

さてこのアシナシトカゲだが、中央ヨーロッパでは多く見られる爬虫類で、ここ南ドイツでも暖かい(暑い?)夏の朝晩にアスファルトの道の上で休んでいる姿を見かける。

変温動物、つまり体温が外の環境温度に依存するため、とりわけ朝方などは夜の低い気温の為、体温も低く、活発な活動が出来ないのである。それを日光浴する事で体温を上昇さ、活動を開始する。私自身も冷え症なのか常時体温が低い。今後トカゲを見習い日光浴の習慣と取り入れたいと勝手に思っている。

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写真では蛇の様に見えるが蛇ではない。以下簡単に蛇との違いを挙げると、

1・・尾っぽが簡単にちぎれる。

2・・を感じる事が出来る。

3・・まぶたがあり、瞬きをする(結構カワイイ)。

4・・なお骨格には骨の残りが確認出切る。

 

「でも何故足が無いのか?」と考える事もある。好奇心の塊であるちびっ子達から質問される事も多々ある。

下記、思いあたる理由を簡単に書いてみる。

1・・自然界に「蛇は毒があって危険」と言う概念があり、たまたま足の無いトカゲが天敵から蛇と間違われ、生き残り、子孫を残し、それが増えてた。

 

と言う仮説も可能だが、

 

2・・広葉樹が多い南ヨーロッパの森では、落ち葉が地面にたまる。その落ち葉の中を進むには足で体重を支えて歩くより、体全体で体重を支え、蛇のようにクネクネと這って進む方が都合が良い。

 

のかもしれないし、また

 

3・・天敵に遭遇したときには狭い隙間にも容易に滑る込む事ができる。

 

そして特殊化した事で

 

4・・他のトカゲの種と生活層めぐって競争する事が少なくなり、故に悠々自適な生活ができる。

そのような様々な要因と偶然が重なり結果とし足が退化したのであろう。

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話には聞いていたが、やはり初めて遭遇したときには「なんだこいつは?」と言うのが率直な感想である。爬虫類が苦手な人でも一見する価値があると自分は思う。そして、その奇妙な姿を目にし、進化について思いを馳せる、そんな夏の午後がたまに有っても良いだろう。

 

 

下記辞典によるデーター

  • 長さ 35から55cm
  • 重さ 500から1500g
  • 食性 昆虫一般、芋虫、ミミズ、ナメクジ・カタツムリなど
  • 寿命 10から50年
  • 繁殖 5月から6月。なお卵胎生(卵がメスの体内で育って、孵化する)なので10cmくらいの小さなトカゲとし産まれてくる。

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ドイツ・環境・「アフリカのゾウの引越しの話」

Aflikaアフリカ東部に位置する小さな国、マラウイ共和国。国立公園、森林保護区、動物保護区が周辺にあり、自然を満喫できる。また国土の3分の1をが占めマラウイ湖は北海道と九州を合わせたぐらいの大きさだと聞く。

 

今回はヨーロッパの話では無いのだがゾウの引越しの話を紹介。

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マラウィ政府はアフリカゾウの密猟防止キャンペーンの一環として、押収した密猟象牙など6・6トンの焼却をしたっと言う話を聞いたのは昨年の事である。その価値数百万ドルだと言われている。

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現在アフリカゾウは絶滅のおそれがある種に分類されている。ワシントン条約の締結により象牙の取引が禁止になったのは確か80年代の終わりだったと記憶している。しかし90年代の後期になり、一部の国でゾウの生息数が増えすぎたという理由で象牙の取引が再開されると、それに伴い需要、すなわち買い手も急増。結果再び密猟が盛んになったっと聞く。

 

20世紀はじめ、生息していたゾウの数は300万から500万頭だといわれる。調査がなされるようになってから、アフリカ大陸全体としの生息数は減り続け現在は50%まで生息数が減ってしまった。WWFの調査によれば2010年から2012年末までに密猟により命を落としたゾウの数10万頭。現在のゾウの生息数は47万頭だと言われる。

 

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マラウイ共和国にはマラウイ湖につなぐ大きな川が数本流れており、本来ゾウの生息地であった。その数1500頭、しかしその姿が消えはじめ、近年100頭まで減ってしまった。背景には象牙の密猟がある。また近年の人口増加、あるいは干ばつなどによる食料不足によって人間とゾウとの衝突も増え、殺されるゾウも後をたたない。また狭い地域に生息するゾウの数が増えすぎてしまいゾウ自身による環境破壊の問題も多発している。

 

その様な背景があり、ゾウの「引越し」が決まった。近年マラウイ共和国では積極的にゾウの引越しを行なっており、効果を収めている。しかし今回は500頭と言う数を数ヶ月間掛けてコタコタ野生動物保護区(面積約1750km2、香川県よりちょっと小さくいくらい」に移動させるという、大規模プロジェクトになる。なおこの大規模プロジェクトはAfrican Parks (NPO)及び政府機関によって進捗されている。

なおその背景には野生動物を重要な観光資源とし捉えている部分もあるが、私個人の意見としては、「それでも良い」と思う。

 

実際の捕獲方法なのだがレンジャーがヘリコプターからダート銃で鎮静剤をゾウに打つ。その際、ゾウの家族・群れがバラバラにならないよう、一回の作業でゾウの家族・群れを全て捕獲しないといけないらしい。麻酔後、一頭づつ体に番号をスプレーで書いていく。この作業には現地の子供達も参加している。その後クレーン車で一頭づつ大型トラックの荷台に乗せて固定してく。

移動距離300キロ。ゾウ達はコタコタ野生動物保護区とへと運ばれていく。なお麻酔の効果時間は最長で24時間。それまでにすべての作業を終へ、引越し先の柵内までゾウ達を運び込まなければならない。なお到着後、ゾウ達は引越し先の環境になれるまでの数日間は柵内に留まる事になるが、その後柵から放たれる。

 

さてこの引越し費用だが大よそ約160万ドル、日本円で1億6000万弱だと聞く。加えて囲い柵や、パトロール、また法律との調整の為に更なる費用が掛かる。政府資金だけではなく慈善財団からの援助金。また面白い事にオランダ郵便局の発行している宝くじの収益金の一部も寄与されていると聞く。

 

なお余談なのだがこのプロジェクトに英国のハリー王子も一役買っているとの事。一時期そのやんちゃぶりを発揮し世間を騒がす事も多々あったのだが、最近は大分「大人」になったとか。昨年よりサイやゾウなど絶滅が危ぐされている野生動物の保護プロジェクトの為にアフリカをたびたび訪れている。今回もその一貫で何らかの形でプロジェクトに貢献すべく、現地を訪問していると聞く。

 

 

ドイツ・環境・「イタリア・アスベスト除去予算の話」

負の遺産と戦い続けるイタリア。ヨーロッパの中でも数少ないアスベスト採取・生産国であった。今もまだ過去の亡霊を引きずっている。この亡霊と少しでも早く決別すべきイタリアはここ3年間の石綿対策費を可決した。

2016年の予算は550万ユーロ(約6.2億円)17年及び18年は更に予算を増やし、各年度600万ユーロ(約6.8億円)だと聞く。

 

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この予算は「現在まだ多く使用されているアスベスト」の現状改善を目的とするもので、環境保護法の一部として可決された。

今回、公共建築物のアスベストの除去及び廃棄作業、屋根などの石綿セメントのスレートの除去などが対象とされている。

 

イタリア環境省ガルレッティ担当大臣は「これにより、多くの公共建築物からアスベストを除去で出来ると共にさらに地域の企業などと協力しながらプロジェクトに推進したい」とコメント。

費用の確保、更なる石綿対策プロジェクトの推進、隠されている危険性をはっきり示す事が重要であると言う。

 

助成金額は費用の50から100%で付加価値税を控除し付与されるという。ちなみにイタリアは確か付加価値税22%だと記憶している。なお予算の割り当て先に関しては毎年調整しなおされる予定である。

 

助成に関しての優先順位も決められており、幼稚園、学校、公園、病院そしてスポーツ施設など、とりわけ子供たちに多く利用される施設、そしてその施設から半径50mの地域を中心に対策が展開される。またその他の基準としては、一年以内で完了できる石綿対策、厚生当局や環境当局が「即時にアスベスト対策を必要」と判断した建築物、国益に繋がる公な建築物、そして既にアスベストのマッピングが存在する建物などが対象となる。

 

また今回のプロジェクトにあたり、技術報告書、石綿含有物質に関する調査書、具体的な除去費用に関する書類、そして経済状態を示す書類などの提出が義務づけらている。

 

さらに学校施設対象のリモートセンシングの先駆けプロジェクトの展開も予定されている。

これは学校校舎内にあるアスベストをマッピングして記録するシステムである。アレッサンドリア、ピサ、サレルノの3県からスタートさせるという話である。

 

ちなみにここドイツでは国のアスベスト対策費予算の話は聞かない。民間の建築物の場合、石綿除去工事などに掛かった費用は、確定申告の際に控除の対象にはなると聞く。ただし事前に専門のアスベスト調査機関に石綿除去の即時・随時必要性を判断してもらう必要がある。その際に即時除去の必要性が認められた場合、控除の対象になる。すなわち石綿スレートの屋根などで、現在アスベスト繊維の飛散がない場合は、即時除去の必要性がなく、控除の対象にならないらしい。なのでなかなか石綿スレートが減らないのが現状である。

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ドイツ・環境・「イタリア・エタニット社の話」

Casale Monferrato カザーレ・モンフェッラートはイタリア北部、トリノ郊外に位置する街である。

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街中には多くの古い建物が残されており、なかなか見ごたえがある。周辺には田園が広がり、またイタリアきってのワイン産地として有名である。

 

しかしこの町の名はもう一つの大きな出来事でも知れらるようになった。

 

汚名の多い、スイスの建築資材メーカー・エタニット社。イタリアのカザーレ市に工場があり、1985年まで操業していた。その工場の従業員・周辺住民23000人がアスベストによる疾患で死亡したと言うイタリアでの社会問題は決して過去の事ではない。

 

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労災認定者、約1700人。彼らには補償金及び労災が払われる結果となったのは90年代初期の事である。

90年中期より、アスベスト環境曝露による被害者数も増えてきた。その数大よそ500人。彼らは環境曝露の為、労災の対象外となり、補償もないままであった。

 

2009年、当時のスイス人及びベルギー人の経営者2名(シュミットハイニ被告、ルイ・ド・カルティエ被告)が過失致死罪・環境破壊罪及び安全配慮義務違反の容疑で起訴された事は記憶に新しい。なお2056件の死亡被害と833件の疾病被害の責任が問われた。

 

トリノ裁判所での一審・二審では有罪判決が下だり、また二審では禁固刑18年及び賠償命令が言い渡された。しかし、この判決を不服した被告側は上告。最高裁で経営者の責任追及がなされる結果となった。

しかし最高裁での判決はアスベスト被害の犠牲者やその遺族の気持ちを顧みないものであった。「既に時効が成立している」との理由で同被告は免訴になったのである。すなわち裁判が打ち切られ、法の基での責任追及が無効になった。賠償命令も取り消された。2014年の冬の出来事であった。

 

それから約半年後、2015年夏。トリノ裁判所の検察当局をはじめ閣僚評議会議、ピエモンテ州、アレッサンドリア県などがローマの最高裁の判決を批判すると共に、原告人となり、スイス人元経営者シュミットハイニ氏の再審を要求した。起訴の理由としてはアスベストによる健康被害での死亡者258名に対しての過失致死罪である。

 

ここで問題になったのは一事不再理の原則である。つまり「ある事件で一度裁判で責任を追求した場合、同じ事件で有罪・無罪・免訴に関係なく、再び起訴できない」っと言う決まりがある。今回の258名に対しての過失致死罪での起訴が憲法違反にあたるかどうかを判断するため、まずはイタリア憲法裁判所にて審議が行なわれ事となった。

 

その判決が2016年今月21日に下った。

 

今回の起訴内容258名のうち、186名に関しては一事不再理の原則にて再審不可と言う内容であり、「起訴状より186名を削除するように」とトリノ裁判所の検察当局に伝えられた。

 

しかし逆の見方をすれば残り72名の過失致死罪での起訴の可能がまだ残っているとみられている。

 

シュミットハイニ氏の代理弁護人は「前回の裁判ではすべて決着がついている」とコメント。また一事不再理の原則とは同一事件で再審を受けないという事なので、つまり今回新たな被害者名が挙ても事件としては前回と起訴内容と同じでものであるっと言う見解を示したと聞く。

 

これに対し原告側は「法律に基づく訴追責任の権利」を主張。前回の裁判では「時効」と言うで事で、結局有罪でも無罪でもない判決結果である。すなわち検査当局に責任追及の権利があると言う意見もある。

また原告側は「被害者の救済を行なわない為、今後欧州人権裁判の介入の可能性もある」とコメントとした。

エタニット裁判はまだ終わっていない。

 

 

 

 

ドイツ・環境・自然とビールを愛するドイツ人

Natur & Bier (ナチュゥアー&ビァ)自然とビールを愛するドイツ人。

 

多くの企業がCSRとし環境問題への取り組んでいる、今日。その中でクロンバッハ社の環境プロジェクトを紹介したい。

 

クロンバッハ社はケルンから東に200キロほど行った、のどかな田舎町「クロンバッハ」にある醸造所。200年以上の歴史がある。麦芽・ホップ・水・酵母のみを原料とした口当たりが滑らかなピルスナーはドイツで好まれ、飲まれるピルスビールの10杯に1杯はこのクロンバッハのピルスナーであるとも言われている。とりわけ麦芽の風味が強い事から「飲むパン」と言われる所以が納得できる。多くのドイツ人愛され、国内消費量ナンバーワンと言っても過言ではない。

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そのクロンバッハ社がWWF(世界自然保護基金)、NABU(ドイツ自然保護連盟)などと提携し生物多様性保全の為に一役買った。

現在ドイツ国内で約71,500種の動・植物が確認されている。そのうち約1/3の動・植物が希少種・絶滅の恐れがあると数えられており、また今世紀までに6%、約4300種がドイツ国内では絶滅したと言われている。

生物多様性、環境保全はドイツでは決して新しい課題ではい。何十年も取り組んでいるにも関わらず、現在する動植物の生活環境の61%は「悪い環境」としてランク付けされているのが現状だ。

そのような調査結果(最新版2014年)が背景にあり、今回の大規模な生物多様性保全キャンペーンが行なわれた。ちなみにモットーは「保護と満喫」。ビールの味わいを満喫する事と自然を満喫する事がかけてある。

 

簡単に説明するとビール1ケースを購入すると10セント(約11円)が保全プロジェクトに流れる仕組みになっている。さらい小粋なのはビール瓶に貼ってある銘柄ラベルの裏側に動物の写真ステッカーが貼ってあり、これをコレクションをする事もできる。もちろんコレクション用のアルバムも用意されており、「収集」と言う人間本能をくすぐっている。

 

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生物多様性保全キャンペーンでの収益金は具体的には以下の6つのプロジェクトに使われると言う。

1.オオヤマネコ(リンクス):

  ドイツ・フランス国境にあるペルツァーの森への野生復帰・移住計画。

2.カワウソ:

  北ドイツ・ゴーデン村にて、カワウソの生息域の水位の回復

3.カワウソ:

  交通事故防止の為の横断用トンネルの設置。

4.アシナガワシ:

  北ドイツ・ポーランド国境近くにある湿原での原生林保護。

5.アシナガワシ:

 獲物の狩りに適した開けた草原などの保全。

6.ナベコウ(黒コウノトリ):

  ブランデンブルク州。水深が浅い池沼の保護・水質保全。

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キャンペーン期間は4月15日より今月15日までの3ヶ月間。当初の目標金額は1,500,000ユーロだったが最終的には1,862,165ユーロ(約217,661,018円)に達したと言う。計算すると約18、000,000ケースが売れたという事になる。

 

ビールを飲みながら、環境問題について語る。いかにもビールと自然を愛するドイツ人らしき発想ではないだろうか?

 

 

ドイツ・環境・イタリアの話

Italyのお話。

 

現在はテレコム・イタリアの傘下に入りイタリアを代表するシステムソリューション事業を運営しているオリベッティ社。歴史も長い。

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このオリベッティ社の工場従業員約20名が2008年から2013年次々に中皮腫で死亡した

これは70年代後半から90年代中期まで工場で使用されていたアスベストの飛散による健康被害が原因とされ今月18日に地方裁判所にて判決が下った。

 

この裁判はオリベッティ社のデ・ベネデッティ「責任者」をはじめ、オリベッティ社及ぶ関係の幹部役員17人名を相手に起された裁判である。

 

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デ・ベネデッティ氏はイタリアでも著名な実業家で、イタリア最大部数を発行する日刊紙 レ・プッブリカ新聞社の所有者であるだけではなく、エネルギー分野、自動車関連分野などと幅広く事業を展開している。その為、裁判の成り行きに注目が集まっていた。

 

裁判にあたり同社工場従業員の死亡とアスベストの因果関係が2年以上の月日をかけて慎重に調べられた。その結果、デ・ベネデッティ氏をはじめ、幹部役員「アスベストの危険性を知りながらも適切な対策を怠った」と言う判決が下された。デ・ベネデッティ「最高責任者」及び兄弟にあたるフランコ「幹部役員」に対しては業務上過失致死罪・傷害罪とし禁固5年2カ月の実刑判決言い渡された。加えて判決では損害賠償支払いも命じられた。

 

なおオリベッティ社と関係が深いパッセラ「元経済開発・インフラ整備交通相」に対しては、90年代にオリベッティ社のCEOを努めていた経歴に基づき、責任に問われていたものの、1年11カ月の執行猶予と言う判決が言い渡された。

 

デ・ベネデッティ氏は今回の判決を「検察側の主張はまったく事実無根である。」とコメントを発表し、判決を不服として控訴するとの方針だと聞く。

 

 

近年イタリアでは子の様なアスベスト被害に対しての刑事責任が問われている。

 

イタリア北部にある汚名の高い建材製造会社エタニット社の裁判では従業員及び周辺住民2000人以上がアスベスト関連の疾病で死亡したとされ、当時の経営者2名に多額の賠償命令と共に禁固18年の実刑判決が言い渡された。

 

また大手タイヤメーカ・ピレり社の裁判では工場従業員20名がアスベストによる健康被害で死亡したとし、同社最高責任者に対し禁固7年11カ月の実刑判決が言い渡された。また同時に賠償金の支払いも命じられた。

 

この様にイタリアでは悪に対し個人の責任を追及する傾向があるようだ。

 

なお、エタニット社の裁判なのだが、地方裁、高等裁では当時の経営者の刑事責任が認められてものの、最高裁では「時効が成立している」とし、それまでの判決を廃棄し無罪を言い渡した。同時に賠償命令も取り消しになった。

 

エタニット社は富を築く為に健康と環境に多くの犠牲を出した。その結果が無罪と言う。被害者は遣るせない思いだろう。ここ数年被害者の数は増え続けている。

 

責任の追及も大切だが、被害者の救済・今後の石綿飛散対策の方がより大事ではないかと個人的に思う。

 

 

 

 

ドイツ・環境・ゴミの不適正処理の話

Wein(ワイン)畑に囲まれたュトゥットガルト。市内から約12km程に北にルートヴィヒスブルクと言う街がある。ヨーロッパ最大規模のバロック宮殿 ルートヴィヒスブルク城佇む。その庭園の一角にはメルヘンの庭があり、グリム童話の世界が再現されている。シュトゥットガルト中央駅から電車で20分、日帰り旅行に最適である。

そのようなメルヘンの世界とは裏腹のロマンチックとかけ離れた話を紹介。

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Simisa/wikimedia

 

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Fzrtaarn/wikimedia

 

 

ルートヴィヒスブルクの廃棄物回収協会(AVL)はルートヴィヒスブルク郡の100%資本による公益・公共団体であり、廃棄物、つまりゴミ処理事業を行なっている。そのずさな管理・運営が公になり、地元住人に波紋が広がった。

 

このゴミ処理場は10数年前より建築廃材の最終処理地とし実験的に運営されてきた。しかしAVLの上層部は一般市民に情報公開をすることなく、また同郡管轄の地方行政局に重要報告を怠ったていたと言う過去がある。市民感情を逆なでる行為はそれだけではない。AVLは原子力発電からの撤退ともに発電所の解体で更に生じる建築廃材3300トンの受け入れを容認しているという。

 

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Graham Horn/wikimedia

 

 今年に入り、地元の環境団体がゴミ処理場の状態を独自調査した。その調査写真には産業廃棄物が詰められている廃棄袋が破れたまま、また数週間そのままの状態で放置されてる様子が収められている。廃棄袋の中身は特別管理産業廃棄物に当たる、発がん性の高いアスベスト。他の建材廃棄物と一緒に処理されていた。なお法律では分別して破棄しなければならない。

 

このような事実が発覚し「健康被害がでるまで数十年かかるアスベストの管理でさえ、ずさんな状態なのに、放射性で汚染された建築廃材の最終処理など安心して任せる事ができない」、結果AVLは市民の信頼を失うとなった。なお昨年度搬入されたアスベストの量は約13000トン。

 

ルートヴィヒスブルク郡行政局・ハース局長は提出されて写真については「これだけではなんとも言えない」とコメントするものの「毎回正しく処理されている事を証明する事も難しい。この様な事実はあってはならない」と述べた。その背景には市民からの批判・非難を受け入れた場合、同時にAVLの廃棄物処理法違反の疑いが生じる事を懸念しての回答となった。

 

ちなみに今回のような不適正処理では最高50000ユーロ(575万円)の罰則が科せられる可能性があるとの事。なお日本だと不法投棄の際は5年以下の懲役または1000万円以下の罰金で、不適正処理はまず行政指導だったと記憶している。またドイツではこの様な不適正処理でアスベストの飛散などが起こった場合は傷害罪としての対応になる事もあると聞く。

 

今回のアスベスト不適正処理の責任とし、ルートヴィヒスブルク郡行政局はアスベストの搬入を停止するともにAVLの処理管理長の解任及び部署の異動を行なった。またAVLの総責任者、並びに直接現場に近い場所で働く技術担当長も市民の批判が強まり辞任に追い込まれたと聞く。

 

日本のような連帯責任的な概念はあまり無いドイツなのだが、3人の関係者が次々と任務を降りたのは珍しい個人的に思う。なお謝罪は無かったと聞く。

 

責任をとろうとしない責任者、謝罪をしない責任者も多いドイツだが、そう思うと日本の方が形だけでも謝罪があり、地位のある任務を降りるので、ある意味では潔い良いのかもしれない。