ドイツ・環境・自然

環境の国って言われるドイツだけど、色々とジレンマがあるみたい。環境・自然を中心に日常の事書いています。

ドイツ・昆虫減少に政府機関動きだす!?

日ほど前のニュース番組に元環境大臣クラウス・トッパー氏が出演していた。 彼のインタビューのなかで久々に「Silent Spring」という言葉を聞いた。

 

Silent Spring」と言うのは1962年に出版されたレイチェル・カーソンの著書である。日本語では 『沈黙の春』 と訳されている。「自然は、沈黙した。うす気味悪い。鳥たちは、どこへ行ってしまったのか。」「春がきたが、沈黙の春だった」―― DDTをはじめとする殺虫剤や除草剤を大量に使っている事により、化学薬品が、生物や環境などを汚染し、人間にも被害を及ぼしている現状を鳥が鳴かなくなった春という出来事で表している本である。

 

DDT欧州では1940年代から殺虫剤として使用されてきた。なお禁止になったのは70年代。ちなみに今年の夏、欧州では養鶏場の卵から殺虫剤フィプロニル が検出された事が問題となったが、韓国ではDDT が検出されたという。どちらも毒性のある化学薬品である。

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さて、この『沈黙の春』 がインタビューのなかで語られた理由なのだが、昨10月に発表された昆虫の減少と関係している。

 

世界的に昆虫が減少している事はほぼ明確であろう。ドイツでも自然保護区に生息する飛行昆虫数が、27年間で約7%あまり減少したという調査結果が米科学誌「プロスワン」で発表された。

その内容に危機感を感じたのだろうか?11月9日に昆虫の価値を見直すべく学会が行なわれた。研究分野、経済分野、政治分野、環境保護分野から様々な専門家120名が集まり昆虫の役割や価値を再認識すると共に、昆虫減少という問題に今後どの様に対応していくべきか議論された。

 

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昆虫は生態系ピラミッドの下の部分を占める。多くの土壌昆虫は分解者であり、落ち葉や多くの有機物を分解する。菌類を含め分解者がいなければ、それこそ、「林道など人間の髪の毛だらけになってしまう。」という変な心配をしている自分である。また多くの草食の昆虫(嫌な吸血の蚊やアブも含めて)は鳥や魚、カエルやトカゲの餌となる。餌が無ければ、鳥を始め多くの生物が餓死してしまう。そして鳥達の春の喜びの歌を耳にする事がなくなり、『沈黙の春』 が訪れるのである。

 

このような事になっては流石にまずいっと思い、やっと政府機関が動きだしたようである。主な講演者は元環境大臣のトッパー氏をはじめ、連邦自然保護庁、州環境・自然保護、農業・消費者保護省など(現ヘンドリクス環境大臣は国連気候会議COP23で関係で不参加)。また環境団体NABUの代表、フンボルト博物館 (余談:ドイツ最大の自然史博物館、25メートルのブラキオサウや始祖鳥もみる事ができる)研究者、ミュンスター大学、動物環境学教授など。

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また大変面白い事にスピーカーとして殺虫剤を生産しているメーカーの代表が講演をおこなった。この会社は50年代中期より害虫対策の為の殺虫剤の生産・販売を行なっているのだが、5年前よりバイオ・ニュートラルな殺虫剤/殺虫方法の開発に取り組んでいるという。また販売価格の一部を環境保護・生物多様性の保護に還元するという。虫によって生活の糧を得ているため、売り上げの一部を自然保護に回す事は良いCSRである。

 

 

何処までどの様にニュートラルなのかはまだ開発中ということで発表できない部分もあると思うが、情報を仕入れるべく、メーカーに問い合わせをしてみたい。バイオ・ニュートラルな殺虫剤/殺虫方法ついて詳細が判明したら、また報告した。

ドイツ・緑の党にがんばってもらいたい

国連気候変動会議の開催中なので、何かと政治と環境とが一緒になり報道されてる。

 

今年のドイツの総選挙が行なわれたのは9月末である。メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU)が33%の投票率で党を維持。二大政党の一つドイツ社会民主党(SPD)は20.7%の投票率で第二党となった。しかしこの二大政党は前回の選挙より大幅に議席を減らすこととなった。移民排斥を唱える極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)は13%の投票率で第3党に躍り出た。引き続き自由民主党(FDP)は10.6 %、左翼党(Linke)、9%、緑の党(Grüne8.9% という結果になった。


これまで大連立を組んできた二大政党(CDU)と(SPD)は大幅に議席を減す結果となった為、今現在どの政党がどの政党と連立を組むのか政党同士の話し合いが続けられている。

連立の可能性が高いのはキリスト教民主・社会同盟(CDU)、自由民主党(FDP)、緑の党(Grüne)の三党による連立で、三党のシンボルカラー(黒、黄、緑)がジャマイカの国旗の三色と同じため「ジャマイカ連立」と呼ばれる。

ちなみにドイツ議会では一党で過半数の票を集められなかった場合、議席の過半数となるように他の政党と連立を組む必要があるという。


さてこの連立に関してなのだが、なかなか難しいようである。連立を組むためには緑の党の協力が必要である。しかし緑の党は環境主義であるが自由民主党やキリスト教民主・社会同盟は考え方が違う。


緑の党は選挙前は石炭火力発電所の閉鎖と内燃機関自動車、(ガソリン車、ディーゼル車)の販売禁止による「2030年までに脱炭素」を公約として掲げていた。


自由民主党の政策は経済自由主義の目指しており、急速な脱炭素化による経済的ダメージの大きさを主張。CO2の削減に関しては非現実的なCO2削減目標の廃止を主張している。


またCDU/CSUだが電気自動車の拡大や更なる開発、また脱石炭・脱化石燃料の必要性・重要性は主張しているだが、性急な販売禁止には反対であり、2030年というレッドラインをおかない、長期目標として脱石炭・脱炭素化を掲げている。


個人的には緑の党にがんばってもらいたいっと思っていたところ、昨日のニュースで緑の党が連立を組むために妥協的な姿勢を示してきたという。なんでも2020年のCO240%削減目標の達成が大事であり、 2030年までに脱石炭なのか2032年までに脱石炭なのかは重要ではないという。


「期限を無くす訳なんですか??」

 

国連気候変動会議自体2005年からつづいていの未だに温暖化問題が解決してないという事実があるにも係わらず、目標年を定めないと、何時までの先送りになってしまう危険がある。福島の原発やVWのディーゼル詐欺など社会を大きく揺るがし事件・事故が起こらない限り環境問題解決はなかなか進まないのではないかと心配する。



カーボンナノチューブの毒性において

連気候変動枠組条約第23回締約国会議での日本パビリオンや他国の講演内容が各関連団体のHPで発表されたのが10月。大変興味深い講演がある為聴講に行こう思い開催地のボン市に問い合わせたところ、一般市民の聴講申し込みは9月中に締め切れてたとの事。確かに今日テロ対策なのでセキュリティーを大切にするのは分かるが、締め切りが早すぎるのではないかと、一人文句を言っている。しかしCOP23には多くの専門家の皆さんが参加しているので、その方達の報告を楽しみにしたい。

 

よって違う話を今日は一本。カーボンナノチューブについて。

 

カーボンナノチューブ(CNT)を簡単に説明すると、炭素原子が網目のように結びついて筒状/ホース状になったもので直径はナノメートル(nm)と言った非常に細いものである。

ナノメートルがどの位かと言うと髪の毛のほぼ5万分の1の太さである。またナノの世界

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での比較対象を記するとDNAの螺旋の直径が2nm、微小管の直径25nmである。またこれらのDNAや微小管を含んでいる細胞は大体10から30μm(10000nmー30000nm)の大きさであるので、いかにカーボンナノチューブが細いものか想像できるであろう。

 

この物質の発ガン性について近年様々な議論が行なわれている。

 

悪名高いアスベストはその発ガン性のため、現在多くの国で使用が禁止されている(新規使用が禁止であって、現在建築等に使用されたままの物も多い)。しかしアスベスその耐熱性、絶縁性、保温性に優れた性質により以前は多くの国で使用されていた。

 

     このアスベストに取って変わる様に使用され始めたのがカーボンナノチューブである。耐久性、導電性、耐熱性、化学安定性は抜群、また強靭なのにしなやかでもある。90年代初期に発見され驚異の新素材とし注目された。現在はエレクトロニクス分野や光学機器分野、また身近なところでは自転車(スポーツタイプ)のフレームやテニスのラケットなどスポーツ用品など多様な分野で使用されている。

 

しかし似ているは物質の良き性質だけではない。長く細い形態はアスベスト繊維にも似ているのある。『ネイチャー ナノテクノロジー』では2008年に既にカーボンナノチューブでアスベストに似た健康被害を誘発する危険性が高いと論じており、発がん性が懸念されている。

昨日のCurrent Biology紙にも再びカーボンナノチューブの発ガン性についての論文が掲載されていた。

それによると細く長いカーボンナノチューブは中皮腫(アスベスト曝露特有の肺の膜のできる癌)を起す可能性が十分にあるという。

 

実験では短・長のカーボンナノチューブとアンモサイト(茶石綿)を用意しマウスへ投与。20ヶ月に渡り細胞および組織の変化、また遺伝子発現につき調査をおこなった。

 

その結果比較的太くまた短いカーボンナノチューブについては免疫システムにより排除されたが長く細い物に関してはアスベスト繊維同様に排除されず組織に停留し、結果、組織に慢性的な炎症反応がおこる。

またマウスへの投与後6ヶ月で腹膜や胸膜に病変が見られ、また20ヶ月後では形態異常な細胞の塊が確認できたと言う。結果としては10から25%の割合でカーボンナノチューブにより組織の病変そして中皮腫が生じたと論じられている。

 

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また遺伝子発現の調査ではカーボンナノチューブによる中皮腫発生に関し、アスベストに由来する中皮腫と同様の分子機構が働くと言う。

よってマウスの実験では細く長いカーボンナノチューブにはアスベストと同様に発ガン性があると言わざるを得ない

上記の結果と同じ事が人で起こる可能性は高い。

しかしまったくその通りだとも言えない。今回はマウスでのin vivoである。調査をする為にマウスはカーボンナノチューブとアンモサイト(茶石綿)を長期間、大量に吸う込む環境におかれている。また遺伝子発現調査の為には胸膜部に直接カーボンナノチューブとアンモサイを投与している。現状では日常生活で人がどの位のカーボンナノチューブに曝露しているのか現在不明である。

またこの論文によるとすべてのカーボンナノチューブではなく、細く長い物で発ガン性の危険がある事を示唆している。よってカーボンナノチューブの生産者やカーボンナノチューブを加工使用する産業界はカーボンナノチューブをどの様な形態で使用するか注意をする必要があるかもしれない。第二のアスベストにならない様に気をつけてほしい。

ソース: current-biology Volume 27, Issue 21, p3302–3314.e6, 6 November 2017

第23回気候会議と市民デモ

明日11月7日より23回気候変動枠組条約締約国会議(COP23)が開幕するドイツの旧首都ボン。参加国約200、世界中から2万5千人の参加者が見込まれている。

 

それに合わせ、ボン市内で昨日大きなデモが平和的な雰囲気の中で行われた。主催はBUNDNABUといったドイツの主要環境団体及びGreenpeaceWWFのドイツ支部など。

テーマは「脱石炭・褐炭」である。

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この呼びかけに答え2万5千人(主催者発表)がend coal!の為にボン市内の中心、ミュンスター広場に集まり、12時にend coal!への行進がスタートした。当初の予測では参加者数約9000人ほどだったと聞くが、実際には予測の2倍以上の人々が集まった結果になる。これにより市民の環境意識の高さが伺える。(ただしボン市の総人口は約32万ほどなので、デモに不参加な成人人口の方が断然多い。なおベルリンなどの大都市では10万人規模のデモも珍しくはない。またドレスデンの反イスラム運動のデモでも2万5千人が集まったと聞く。もう少し気候・環境の改善を求める人々の声が強くても悪くは無いと個人的に思う)

 

ドイツではまだまだ石炭褐炭火力発電への依存は高く全体の40%である。再生可能エネルギーの発電量(約38%)の上を行く常態である。また技術的な問題があり、風力発電で更ならエネルギー生産が可能なのだが、石炭・褐炭火力発電を休ませる事ができない為、風力発電のプロペラを意図的に制御して、全体の発電量を調整してと聞く。何十本かある中で時折、2,3本停止しているプロペラがあるのはその為であると聞く。

 

話を元に戻す。

 

13時45分、ケルンからの自転車デモ隊が到着。その数約1000人。ADFC(ドイツ自転車連盟)が主催となり、呼びかけを行い、その結果ケルン市郊外の広場に多くの自転車愛好家が集合。計画の当初は高速道路でのデモを申請していたと言うが許可がおりず、急遽ルートを変更しボン市内までの30キロの道のりを1000台の自転車がサイクリングしてやって来た

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15時30分、デモ行進は特設ステージのある会場に到着。

 

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15時30分、デモ行進は特設ステージのある会場に到着。会場のステージでは様々な人々が気候環境の改善、脱石炭・褐炭の重要性をスピーチ。マーシャル諸島からの代表はすでに海面上昇による浸食被害やまた水没危機を切実に訴えた。(マーシャル諸島は海抜3mほどの低い陸地で海面が1m上昇すれば80%の土地が沈んでしまうと言われている)。それにひきつづきセネガルからの代表やペルーからの代表(WWF)が次々にメッセージを伝えた。

 

 

またアメリカからの代表(Greenpeace)は10年前のバリでの第13回気候変動枠組条約締約国会議(COP13)「2020年までにCO2排気量40%削減」と言うドイツの温暖化問題に対する前向きな姿勢が大きな歓呼喝采を受けた事をスピーチすると共に近年のCO2排気量が削減されていない事実を指摘し、改めて政府機関及びメルケル首相に目標の遂行と達成を呼びかけた。

 

End Coal Now!!End Coal Now!!

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またステージには姿を見せなかったもののバーバラ・ヘンドリクス環境大臣(ドイツ社会民主党)もボン市内におり、「すべての石炭・褐炭火力発電の即時停止は難しいが発電所一つづつ順に停止の方向に向けていきたい」とメッセージを発表。(このヘンドリクス環境大臣は以前より石炭・褐炭火力発電対策の必要性と将来的な廃止を言ってきた)

 

それに対しデモ主催者側ではヘンドリクス環境大臣と同じ政党のジグマール・ガブリエル(元)経済・エネルギー大臣が石炭・褐炭火力発電から撤廃を強く反対した事を指摘・批難した。

 

 

ドイツ:昆虫の減少について思う事

こ40年の間に昆虫を含む無脊椎動物の数が45%削減したいう論文を何処かで読んだ。

 

普段は車を運転しないので気には止めなかったが、指摘されればまったくその通りで、以前の様にフロントガラスが虫でいっぱいになる事がない。

3年前の夏、2度も蜂に刺されたのに、今年はベランダに植えてあるラベンダーやミントの花を訪れた気配があまりない。

 

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ここドイツでも最新の研究データーによると有翅亜綱(ユウシアコウ※主に羽を持ち飛ぶ事ができる昆虫)に属する昆虫が過去27年間の間に75%減少したっと先月のメディア(10月18日)が報じていた。自然保護区内63箇所で採取トラップを用い、トラップにかかった昆虫を量として測定調査を長期に渡りおこなってきた。その結果、昆虫の活動が活発な夏期で最大約82%の減少がみられたという。なおこのデーターを収集したのはデュッセルドルフから東南20キロに位置するクレーフェルトという街にある昆虫愛好会(Entomologischer Verein Krefeld)で、会の創立は1905年という。メンバーには現職の生物学者を始めとする専門家から昆虫を愛でる市民まで多様である。

 

自然保護区内でこのように多くの昆虫が姿を消している事にまったく驚きである。

 

昆虫の減少というのはここ数年ずっと懸念されているテーマである。減少のはっきりし原因は特定されていない、様々な事情が絡み合っている事だろう。気候環境の変化、生息域の破壊、単一作物栽培での多様性の損失、普遍的な農薬や化学肥料の使用など

 

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生態系とは相互に関連する複数の要因が重なり合って作られている。一つの要素にダメージがあると補正システムが働き、生態系が回復される。しかし近年、生態系を作る複数の要素にダメージや変化があり、生態系の回復能力及び回復速度が追いつかないのではないだろうか?

 

そんな事を考えてから約一週間。

 

今度は除草剤「グリホサート」に関してのニュースを聞いた。発がん性の疑いがあるモンサント社の除草剤グリホサート。2017年末に暫定的使用の認可が切れるため、欧州委員会がそれまでにグリホサートの使用に関し最終結論を出す意向である。それに伴い欧州化学品庁(ECHA)が発がん性について再調査を行なっている。再認可された場合、グリホサートの使用が今後10年間許可される。

 

しかし先月中旬、欧州議会はグリホサートの使用を2022年12月までに禁止する決議を採択した。それに対し欧州委員会はグリホサートの使用有効期限を最長で7年間に短縮する案を提案した。まだ決着がついていない。

 

ドイツでは収穫直前でのグリホサートの使用は禁止だと聞く。しかし年間使用量は5000トン。ドイツ国内の農地の40%以上でグリホサートは使用されている。また冬小麦や他の冬穀類の畑だけをみた場合では全体の70%でグリホサートが使用されていると言う。これはグリホサートの効果が大きく、また価格も安いからである。農家にとっては大変助かる商品である。もしこの除草剤が禁止になった場合、農家は生産率を維持する為に更なる労働力や機械が必要になってくる。その結果農作物を収穫するまでの費用が11%程高くなるという (Universität Gießener )。またプラウなどと言った耕作機械を常用する事で土壌への負荷が高まり、また弊害が生じる事も重々考えられる。

 

農作物の生産コストの増加は販売価格の値上がりにつながり、国民の生活に支障が出ることも懸念される。しかしドイツでは年間約1100万トンの食料品が廃棄されており、家庭から廃棄される量だけでも約670万トンだと言う(Universität Stuttgart)。そんな事を思うと食料品の値上がりで、消費者が節約志向になっても良いのではないかと考えてしまう。

 

また別の専門家は販売価格の高騰だけではなく、外国産農作物の市場での割合が増えるだろうと予測している。(Fraunhofer Institut

 

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グリホサートが安全なものであれば、農家も消費者も助かる。しかし現在はその安全性が疑問視されている。疑問を無視したまま使用を許可した場合、「第二のアスベスト」になる可能性もある。

しかし何においてもやはり一番困るのは農家なのではないだろうか?生産コストの増加、消費者の節約志向、安い外国産農作物の流通、また花粉を媒介する昆虫や害虫を食べる昆虫といった有益な働き手を失う事が懸念される。

 

ソース:Entomologische Verein Krefeld、PLOS ONE、Zeit OnlineSpiegel OnlineUniversität Stuttgart、 Universität GießenerFraunhofer Institut

エコと自転車・ドイツ 2017

ティーサイクル

 

ドイツの発明家カール・ドライスが発明した「ドライジーネ」(下写真)という自転車の元祖が誕生してから今年で200年。Climate Alliance(気候同盟)がシティーサイクル活動をスタートしてから今年で10年。何かと今年は自転車が注目されて年である(加えてツール・ドフランスのスタートも今年はドイツ)。

ディーゼル車やガソリン車からの窒素化合物や二酸化炭素が大気汚染の一つ原因であることに比べると自転車ほどエコな乗り物はない。

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ドイツの自転車所有数は7300万台(日本7100万台)、人口当たり自転車保有台数0,83(日本0,61)、自転車利用者の自転車走行距離は平均1日あたりに3.4km(日本2.9km)、自転車の値段の平均8万円(日本2万円)というデーターがある。(ソース:ZIV, Ramp, VSF, JBPI)

自転車の値段以外はドイツと日本の自転車データー、なかなか近いものがある。ちなみにドイツの自転車一台平均8万円には電気アシスト自転車は含まれない。電気アシスト自転車を含めると自転車1台の平均価格は17万円ほどになるというから、これにはびっくりである。

 

 

ドイツ

日本

自転車所有数

73000000

71000000

人口当たり自転車保有台数

0.83

0.61

走行距離平均1日当り

3.4km

2.9km

自転車価格:1台当り

80000円

20000円

 

 

統計データーはさておき、今日のテーマ。「シティーサイクル」

 

これはドイツ・フランクフルトに本部を置く環境団体「気候同盟」がは2007年にスタートしたサイクリングイベントである。

 

簡単に気候同盟から説明この機関は温暖化対策を推進するヨーロッパの26カ国、1700以上の地方自治体が加盟するネットワーク組織である。メインになる活動と目的は二酸化炭素(CO2)の削減である。その活動の一環としてドイツ全国規模でサイクリング週間をもうけ、cycling for a better climateをスローガンに政治家や市民へ積極的な自転車利用を呼びかけている。これが「シティーサイクル」である。

 

ここに更なる遊び心がある。自転車週間も設けるだけではなく、都市対抗、及び市内でグープ対抗や個人対抗でサイクリング週間内(3週間)で走行距離を競う会う事ができる。イベント参加者(政治家・市民)は自分の街の「シティーサイクル」に登録し、ホームページにて毎日の走行距離(下画像)を書き込む事ができる。なお登録に関してはグループ参加でも個人参加でもOK。また対抗システムがある為、他の参加者の走行距離も見る事ができる。加えて走行距離をCO2の削減量に置き換えての数字もアップされる。環境の為に走るのも良し、自分の健康の為でも良し、また参加者と競い合っても良し、と多目的に楽しめる。今年の参加都市・自治体数620、参加者数22万人(東京の渋谷区の住人と同じくらい)、参加議会議員・政治家数3800人とのこと。

(ソース:stadtradeln)

ちなみに筆者の参加するグループは一人当たりの平均走行距離653kmで市内で3位を獲得。なおグループ対抗ではやはり地元の郵便局グループが強し。仕事がら郵便屋さんの自転車利用率は最大である・・・。

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しかし昨日のメディアは「ドイツのCO2の排出量を2020年までに40%削減する」という目標の達成が危ういことを伝えている。現状維持(環境税の引き上げ等なし)で算出した場合、最大でも32.5%の削減だと言う。目標設定時には専門家により2020年のCO2の排気量は7億5000万トンだと推定されたが、最新の推定排気量は8億4400万トンだと言う。

(ソース:Zeit Online)

 

自動車の排気ガスからのCO2も一つの原因だが、ドイツではまだまだ石炭褐炭火力発電への依存も高い。2017年の発電量のデーターでは石炭・褐炭火力発電は約40%である。ただし再生可能エネルギーの発電量も石炭・褐炭に匹敵するほど現在は増加し、全体の約38%を占める。。ちなみに稼動中の原発も発電を行なっているわけで、その発電量は全体の約13%である。

(ソース:Fraunhofer ISE)

 

ドイツの発電の割合

石炭・褐炭

40 %

再生可能エネルギー

37.9 %

原子力

12.7 %

天然ガス

8.3 %

石油・その他

1.1 %

 

今年の気候変動会議及び国連気候変動枠組条約の締約国会(COP23)のホストを務めるドイツ。(しかもCOPは条約事務局がある都市で行なわれる)

 

今から「目標達成は無理・専門家の見当違い」と逃げの体制になるのか又は「すべての手段を駆使し目標達成を果たし世界に環境先進国ドイツをアピールするのか、大変興味がある。

 

 



肺癌予防に希望

癌予防に希望!

肺癌は癌の中でも死亡率が一番高いと聞く。肺癌の一種に中皮腫(正しくは肺ではなく、肺を覆う胸膜にできる癌)という病気がある。悪性の癌で、ステージIの場合での5年生存率が21%だと言われている。多くの癌でのステージIでの5年生存率は80から90%と言われている今日において、中皮腫は未だに生存率の低い癌である。それだけこの癌が悪性である事がわかる。

この癌の主な原因は肺に刺さったアスベスト繊維で、アスベスト曝露から3040たって発病する事もしられている。肺にささった繊維はマクロファージ(食細胞)によって分解されることなく滞留する。更に悪い事に、刺激をうけたマクロファージは炎症を起こすサインになるシグナルタンパク質であるサイトカインを放出する。この信号が更に刺激となりマクロファージが患部に集まると共に、炎症を起こすサイトサイトカインを放出する。これにより持続性の炎症が起こり、また組織周辺の細胞がダメージを受け、これが細胞の変異、後には癌化の原因となると考えられている。

さてこの炎症をおさえる抗炎症薬が現在、注目されている。

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この抗炎症薬の元になるのはカナキヌマブである。カナキヌマブとはインターロイキン-1βを標的にする抗体である。インターロイキン-1βIL-1β)とはサイトカインの一種で炎症反応と関係が深い。このIL-1βが受容体と結合し炎症がおこる。カナキヌマブはIL-1βに特異的に結合し、IL-β受容体と結合することを阻害し炎症症状を抑制するという。商品名「イラリス」(ノバルティス ファーマ社)として知られている。

このカナキヌマブが肺癌の発生率および死亡率を下げる効果あるというデーターをブリガム・アンド・ウィメンズ病院(Brigham and Women’s Hospital)のPaul M. Ridker氏をはじめとする研究チーム発表した。8月25日付けのLancet誌オンライン版に掲載した

今回の調査はまずは薬の心筋梗塞および心血管系の疾病への効果を調べるためのもであった。

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下記簡単に臨床試験の内容を紹介する。

心筋梗塞歴があり炎症性アテローム性動脈硬化症を患っている患者で尚且つ炎症マーカーであるCRPタンパク質を2mg/L以上発現しており、加えて癌病歴のない1万人以上の被験者を対象と治験が行なわれた。

被験者を4つのグループに分け、カナキヌマブまたは偽薬(プラセボ)を三ヶ月毎に皮下投与し、カナキヌマブの効果及び投与量との関係を調べた(カナキヌマブ50mg, 150mg、 300mgなお偽薬とは効き目のある成分が何も入っていない薬の事で被験者に「効果がある薬を投与されている」と思い込ませる為に使用する。

その後最長で5年6ヶ月、被験者の追跡調査が行なわれた。

その結果カナキヌマブの投与で心筋梗塞、脳梗塞などの大血管障害のリスクが15%減少する事がわかった。ただしカナキヌマブ50mgでは些か効果が弱いという。

さて、ここで心筋梗塞と肺癌の関係を疑問に思う読者もいるかと思う。筆者の知見によれば下記のような関係があるらしい。

長年、動脈硬化の発生にマクロファージ(炎症と関係がある食細胞)深く関係しているといわれている。動脈硬化の原因の一つはコレステロールである。血中にあるコレステロールは通常体内の必要な箇所で細胞にとり込まれる。しかし高血圧や糖尿病などで血管に負担がかり管の内皮細胞に傷つくと、そこから血中のコレステロールが組織ない入り込むそこで酵素の影響をうけ酸化されて、体内で必要でない物質になってしまう。この不要物を消化すべくマクロファージが働くのである。ただし大量の酸化コレステロールを取り込む事でマクロファージはやがて死んでしまい、跡にはコレステロールの塊が残るという。この塊が蓄積し血管が狭くなり血流の減少したり血栓ができ心筋梗塞や脳梗塞と原因となるといわれている。またこのマクロファージが様々なサイトカイン(細胞にとって信号となるタンパク質)を放出して血管局所で炎症反応が起こると共にこの信号により更なる炎症性サイトカインの産生が刺激しされ、慢性の炎症をともなり動脈硬化が少しずつ進展していく。炎症性アテローム性動脈硬化というのもこのように炎症を伴う動脈硬化の事であるらしい。

ここで何となく心筋梗塞や脳梗塞と言った心血管系の疾病と肺癌の関係が見えてくるだろう。双方に関係してくるのが炎症である。故に抗炎症薬の有効性が注目されるのである

さて臨床試験に話を戻す。

今回カナキヌマブの投与で癌の死亡率、取り分け肺癌での死亡率が、偽薬グループに比べ低い値となった。とりわけ300mgのカナキヌマブ投与では肺癌の死亡率が偽薬グループに比べ77%減少したという。

また同時に肺癌の発生率も投薬量と関連し減少したと報告された。(カナキヌマブ50 mg、150 mg、300 mgで肺癌発生率を各26%、各39%、67%減少)

ちなみに他の部分の癌の発生を比べると投与グループと偽薬グループでは統計的有意な差がなかったと聞く。

今回のこのデーターは今後肺癌の予防や治療に繋がる大変興味深いものである。

ただしカナキヌマブについて難点を言えば、今回の調査では投与グループでは感染症及び敗血症が偽薬グループに比べ多かった事と(多分副作用)、注射一本約150万円ほどといわれる値段である。

 

ソース

Novartis Pharmaceuticals Lancet. 2017 Aug 25. 全国がん(成人病)センター協議会, 他