ドイツ・環境・自然

環境の国って言われるドイツだけど、色々とジレンマがあるみたい。環境・自然を中心に日常の事書いています。

ドイツ人の環境政策に関する意識調査

やっとやっとやっとの更新。書きかけの文章はいくつかあるのだが、長くほっと置くと新鮮がなくなってしまう。でも今回は3,4日前のニュースから・・・。

 

先週のパリでの大暴動。政府の政策や社会問題に不平・不満を抱いている多くの市民が「燃料税引き上げ」をきっかけに、大型デモをおこなった。それがエスカレートし大暴動へ。その結果増税はひとまず延期されることになった。環境対策は大切な事だが、弱者にシワ寄せが行く形では問題だろう。

 

そんな事を思いつつニュースを見ていたら、今月頭に行なわれたアンケート調査の結果が放送されていた。その一部でドイツ人の環境政策への満足度をあらわすようなアンケート調査の結果があった。ニュースが終わってからオンラインでニュースの再放送とアンケートのソースを探し出し目を通した。

 

さてこの調査でドイツの気象環境保護・温暖化防止において重要で意味のある対策・政策について1000人以上から意見をきいたという。なお各質問に対し「はい」「いいえ」で答えるものであった。

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はじめに再生可能エネルギーの施設の増設は重要な環境対策・政策であるか?いう質問に対し全体の92%が「はい」と回答している。

 

次に産業・工業などの分野で環境汚染を防止すべく、対策を強化する事が重要であるか?と言う問いに「はい」と答えた人も90%と高い数字である。

 

また「ハムバッハの森」でメディアを騒がしている石炭発電からの迅速な撤退が環境を守る上で重要な政策であるとした人も半数を上回り69%である。

 

加えて飛行機による環境破壊をへらすべく、飛行機の運賃を値上げする事が有意義な政策であると答えた人も62%である。

 

また約半数である53%の人がディーセル車やガソリン車から電気自動車への変換が重要であると答えている。

 

ただし、流石車社会のドイツ。ディーセル車やガソリン車の購入費や維持費、また燃料費を高額にすることが環境保護に一役買ってでるっと考えている人は全体の27%である。多くのドイツ人は自動車の燃料費や自動車税が高くなることに反対であるという。

 

また私生活の中で自分の行動に変化があったかどうかと言う質問では約半数が自動車を使用する際にエコを気にするようになったという。ただしまだ半数は「変化なし」と答えている。

 

 

脱石炭と石炭委員会

ディーゼル車乗り入れ禁止ハンブルクで試行され、シュトゥットガルト、アーヘン、フランクフルト、ベルリン、マインツと次々にディーゼル車の乗り入れ禁止が広がっている。事の発端はディーゼル車からの排出ガスに含まれる窒素化合物の濃度が基準値を長年上まっていた事にある。

 

重たい腰をあげやっと(苦肉の)対策案を今月冒頭に発表した矢先、今度は欧州理事会で車両から排出される二酸化炭素(CO2)の量を2030年までに2021年に比べて35%削減する目標が発表された。ドイツは30%削減を求めていたが、多くの国が40%以上の削減を求めた為、その中間値で合意にいたった。

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色々と解決すべき課題が多いドイツである。

 

さて今日10月25日、現在、石炭委員会の会議が行なわれている。この会議の主要テーマはCO2による気候変動対策と雇用問題である。

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気候変動に関して言えば豪雨や日照りなど、これほど顕著に現れた年はまれであるだろう。また現在でも日照りの弊害が残っており、ダムの貯水量が回復するどころが、一部では更に貯水量が減少していると聞く。ドイツの産業地帯を結ぶライン川でも水量が減少し、大型タンカーや貨物船は重量を半減し、川を行き来している。これによりガソリンの供給が心配されだしており、また生産業等では輸送貨物の遅れが懸念されて始めている。

 

車社会や工業や生産業、また食に関する農業や畜産業、これらは気象環境が許すから成り立つのであろう。気候変動が更に加速すれば、それだけ弊害も大きくなるだろう。よって一番大事なのは気候変動を抑える事であると私自身は考えている。

 

そんな事を思うと「脱石炭」は一日でも早く実現させる必要がある。

 

 

しかし現在鉱山で働く人々や鉱山地域と密接に関係して事業を行なっている人にとっては炭鉱の閉鎖は死活問題である。昨日もRWE社員を中心に2,3000人が集まり安定した雇用、安定した生活を求めデモをおこなった。

 

鉱山で生活をしている人々の気持ちも理解できる。

 

しかし環境保護派の人々に槍を向けるのは違うのではないだろか?「脱石炭」は遅かれ、早かれやってくる。しかし地域の自治体、州政府や国政府、また雇用者であるRWEは今まで鉱山で生活をしている人々の雇用問題や死活問題につき、進んで対応策を検討してこなかったようにみとれる。

 

ドイツでは現職での就労が困難な場合や他の職業へ転職したい場合、職業転換/再教育訓練(Umschulung)を受ける事が日本より盛んである。そのために助成金を申請する事もできる(ただし申請を却下される事も多いが・・・)。また雇用者側が積極的にキャリアアップの一貫として、向上職業訓練(Fortbildung)を提供している場合も多い。このようなシステムが整備されている社会なのに、そのシステムを積極的に活用してこなかった会社や社員の姿勢も気になる

 

何にせよ、今日は朝からラジオでこの石炭委員会会議について語られている。この会議の中心になるのは上記にあるようにやはり鉱山で生活をしている人々の雇用や生活であり、これらの鉱山地方の再構造化である。

 

アイデアとしてあるのは「脱石炭」後に政府機関や研究機関などの転地、今後増えるであろう電気自動車やバッテリーなどの生産業の転移、また現存する施設を再利用し再生可能エネルギーで作られたエネルギーの蓄電施設やより効果的な蓄電システムの研究開発施設へのリニューアル、また広大な土地があるのでアグリビジネスやアグロインダストリーへの誘致などが挙げられている。

 

会議の結果については早ければ今日の夜のニュース、遅くとも明日のニュースで報道されるだろい。なおこの委員会は多彩なメンバーで構成されている。何らかの合意にいたるだけでもなかなか難しいだろう自分は思っている

 

ソース WDR5

 

子供の中皮腫の話

イギリスの9月のニュースで14歳の少女が中皮腫を病んでいるという記事を読んだ。

 

通常、中皮腫の主な発生場所は胸膜で、その原因の一つにアスベスト繊維がある。これが肺組織に刺さる事が疾病の原因だと言われている。なお発病するまでに長い歳月がかかり、石綿曝露から30-40年経ってから発病するケースが多い。但し潜伏期間15年未満で発病してケースもあると聞く

 

しかし子供の中皮腫というのは極めて稀である。更に驚くべき事に彼女のケースは腹膜に腫瘍ができた腹膜中皮腫であるという。腹膜にできる中皮腫は胸膜の中皮腫よりさらに稀であり、割合を見るとおおよそ腹膜:胸膜=2,5:7である

また現在イギリス国内で腹膜中皮腫を患っている子供の数が9人、世界規模でも20人ほどだと言われている

 

さてこの少女の名前はメイシーちゃん。今年3月に中皮腫がみつかった。現在までに4回もの化学療法が実施されているが、なかなか良い結果が現れず、今年8月に入り手術による患部の摘出も検討されたが、検査の結果手術は適さないという事で実施にいたらなかった。

 

現在は治験を兼ねての薬剤療法に希望を託しているという。

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しかし実際どうして14歳の少女がアスベスト由来の癌になったのか?担当医を含め家族や関係者は頭を悩ませている。

 

中皮腫の発生率は60歳代、70歳代が多い。また胸膜に発病する割合の方が圧倒的に多い。

しかし論文等を検索すると腹膜中皮腫の場合でも、石綿曝露の関与が示唆されている。よって腹膜中皮腫の原因の一つもアスベストだと言って良いだろう。

 

しかし小児若年成人では聊か事情が異なるようである。

 

まず中皮腫全体で見ても小児・若年成人の中皮腫患者は世界規模でも300例ほどであると聞く。またこれらの若い患者の場合、生活史のなかでアスベストとの接触や曝露経験がはっきりしない事が大半である。よってアスベスト曝露歴を確認する事は極めて難しいのが現状である

 

簡単にアスベストとの接触・曝露の可能性を挙げ見ると

・・1)アスベストに接触・曝露した大人がその粉塵を自    宅に持ち帰った場合の家庭内曝露 

・・2)学校にあるアスベスト建材からの粉塵との接触・    曝露(もちろん自宅にあるアスベスト含有健         材からの可能性もある)

・・3)環境曝露(空気中や土壌中にあるアスベスト繊維    との接触・曝露

・・4)アスベスト含有の雑貨との接触、曝露(チョー     ク、クレヨン、粘土など)

※今年の春先に子供用のキラキラメイクや化粧品にアスベストが混じっており、店頭に並んでいる一部の子供用化粧品を下げるよる欧州加盟国内で緊急指令が流れたのは記憶に新しい。

 

などがある。家庭内曝露や学校曝露、また雑貨や玩具が汚染源になっている場合には家族や他の児童にも被害が生じる可能性は十分にある。また環境曝露の場合もまったくの偶然も考えられるし、何らかの汚染源が近隣に有り、今後、患者が増える可能性もある。

 

しかし通常は中皮腫の発病までに数十年かかる為、年齢が低い子供の中皮腫では家庭曝露、環境曝露はなかなか考えがたい。

だが子供時期に起こったアスベスト曝露で発ガンリスクは高まる事は十分考えられている。

 

また詳細がはっきりしない事のひとつに子供の中皮腫の根源がアスベストであるかどうかという点も挙げられている。いくつかの論文では放射線曝露、イソニアジド系の薬剤による副作用、また遺伝的な要因でも中皮腫になる可能性があるという。

 

下記に様々な考察簡単に紹介する

 

・・) 放射線曝露

 

いくつかの小児癌の研究では放射線曝露も中皮腫の原因になりうると言う報告がある。例えば幼少期に特定の癌に対する放射線治療を受けた場合など中皮腫リスクが高まる可能性があるという。また実際にこの放射線治療を幼少期に受けた子供の患者2名でその後、中皮腫が確認されているという。

(※この特定の癌というのは小児の腎臓に発生する悪性腫瘍でウィルムス腫瘍と呼ばれている。抗がん剤が比較的効きやすく腫瘍のステージにもよるが80%以上で治癒が期待できると聞く。)

 

・・) イソニアジド曝露

 

出生前のイソニアジドという薬剤曝露でも中皮腫になる可能性が無くはないとも聞く。動物実験では母体にイソニアジドを注射する事で、胎児で肺癌が確認されている。ただし人では現在1例のみ確認されているという。

(※この薬は主に結核に対して使用される。ちなみに結核は感染力が強く空気感染する病気で、世界規模でみるとまだまだ死者も多い。また発展途上国だけでなく先進国でも感染者は多く、東京都の感染症情報センターによると日本でも約2万人が毎年新たに報告されていると言う)

 

・・) 遺伝性による癌

 

またほかの要因として遺伝的な要素も考えられる。(遺伝性がんと言う。)これは子供の遺伝子に何らかの変異があり、それが原因となりうる事例である。2013年に発表されて論文だとBAP1と言う遺伝子に問題があると中皮腫などの癌の発生率が高まるという。またこの遺伝変化は親から子へも伝わるという。この遺伝変化により少量のアスベストやそれに似た物質、例えばエリオン沸石(※人に対する発癌性が認められている)やゼオライト(人に対する発癌性が分類できない)などにも過剰反応し癌を引き起こすのではないかと考察することもできる。

 

子供の中皮腫患者を調査したデーターがあるがそれによると80人の患者のうち、2名でのみ幼少時代でのアスベスト曝露があり、また他の2名においても他の危険因子による曝露があったと報告されている。しかし残りの76名に関しては原因不明だと言う

 

さらにネットサーフィン、論文検索をしてみたがやはり若年層(20代)での中皮腫患者では幼少時にアスベストと接点があった、またはあった可能性がある事例もいくつかあるが、10代の患者を含め多くの場合には原因不明であることの方が多いようである。

 

大人でも子供でも病んでいる人も見ると痛々しく辛い。しかし当人は更に辛い事だろう。彼ら達が、心穏やかに過ごせる時間が少しでも多く増える事を願ってやまない。

 

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ソース・文献 

) dailymail.co.uk

) asbestos com

) Mesothelioma in child with prenatal exposure to isoniazid

) Mesothelioma of childhood

 

ベルギー・アスベストの話 その2

アスベストがベルギーで禁止になったのは1998年で、イギリスと同年である。

 

さて私が頻繁に訪問するインターネットのホームページではアスベスト関連の各国ニュースが英語で簡潔紹介されている。このサイトで世界中のアスベスト関連の動きを垣間見る事ができる。そのサイトでベルギーのフランデレン地域のアスベスト関連のニュースが紹介されていた。興味があったので詳細を検索してみた。

 

まずフランデレン地域(フランドル地域、フランダース地域)だが、ベルギーの北半分の位置する。オランダ国境と接しており、主要言語もオランダ語である。なおベルギーの首都であるブリュッセルも地理的にみるとこのフランデレン地域の中にある。ブリュッセルには欧州連合や欧州委員会があり、アスベストに関しいつくかの指令をだしており、EU各国に対策を促している。

 

このフランデレン地域にはブリュッセルの国際機関と別にフランデレン政府が設けられている。

 

この地方政府は2014年にアスベスト排除促進プロジェクトを発進した。

ハイ・リスクなアスベスト含有建材を2040年までに排除する事を目標としており、2100万トンあると言われているアスベスト含有建材の除去・排除を建材の使用寿命が来る前に撤去する事をゴールにしている。

またアスベストという遺物を健全な環境のために排除するだけではなく、アスベスト除去後の建築物はリフォーム・リノベーションをおこない、再利用する計画をたてている。これにより持続可能な資源の利用を促進することになるという。

 

OVAM(フンデレン地域廃棄物公社)がこのプロジェクトを遂行する事となり、2015から2018年の第一段階では、下記の難題・課題の解決の糸口を見つけるため危険評価や現状把握、また資金面や社会にもたらす利益など様々な調査が行なわれ、プロジェクトの草案作りが進められた。

 

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難題・課題の一例

・・・ 石綿曝露による健康リスク

・・・アスベストセメント建材の除去費用の上昇

・・・建築廃棄物や風化・劣化した外壁や屋根からのアス

    ベスト繊維の飛散

・・・アスベスト除去後の建築物のリサイクル利用

 

実地した調査の一例

・・・風化、劣化した外壁や屋根からのアスベスト繊維の   飛散の調査

・・・アスベスト建材の処理と行方に関する調査

・・・アスベスト関連のネット・ワークやアスベスト排除   に関係しての市場とステークホルダーの調査

・・・プロジェクト実行にかかる費用や効果に関する調査

 

なお欧州議会は5年前に「職場におけるアスベストによる健康被害の危機と現存するアスベストの撲滅の展望」を決議しリリースしている。欧州議会の決議を守る為にもアスベスト対策は必要だとフランデレン政府は捉えているようである。

 

さて具体的な方針だが

・・・アスベスト含有建材使用の建築物の登録義務

・・・建築物のアスベスト除去の進行状態のモニタリング

・・・建築物の解体費用やリノベーション費用ための特別   共同融資システムの整備

・・・安全対策や廃棄物の処理に関する政策

・・・省エネ省(屋根上への太陽パネルの設置、外壁の断   熱対策など)とアスベスト除去の同時対策の推奨

・・・問題を抱えている建築物の所有者のサポート

などを挙げている。

 

なおアスベスト対策優先順位だが学校や病院、公共機関や政府機関の建築物、公営住宅・団地、また更には農村地にある倉庫なども積極的にアスベスト対策を行なっていくと言う。

 

ちなみに同地域では学校アスベスト調査もおこなっている。

2017年の調査では69校のうち20校でアスベスト含有建材が確認されたという。

近年問題になっているのはここでもアスベストセメントの建材である。学校の外壁や暖房の管などにアスベストセメントの製品が使われている事がまだまだい多い。風化・劣化がなければアスベストセメント建材からの繊維の飛散のリスクは低いが、現状では風化・劣化が進んでいるアスベストセメント建材も多くあるという。

 

なお日本の学校でも毎年アスベスト調査が行なわれいる。これは飛散度の高いL1建材(吹き付けアスベスト)とL2建材(円筒内の断熱材など)の調査だと聞く。石綿セメント建材の調査は非飛散性アスベストっと言うことで行なっていないようである。

しかし欧州の事例をみる限りでは、今後日本でも非飛散性アスベストといわれるものでも調査・対策が必要になってくるだろう。

 

さて話をベルギーにもどす。

 

同地域では今後出てくるであろう大きな課題とし、アスベスト含有建材の処理を挙げている。

 

現時点では飛散リスクの高い非結合性アスベストはセメントで固めた後、また飛散リスクがさほど高くない強結合性アスベストはそのまま、ラベルの貼られて廃棄袋で2重包装され、埋め立てられている。しかしこれは永久手的な処理対策ではない。

 

近年アスベストセメント建材のセメント部の風化・劣化が問題となりつつ背景もあり、セメントで固め、地中に埋められたアスベストであっても、何時、如何なる原因・理由で地上に再び現れるかもしれない。このような埋め立てではアスベストが無害化されるわけではなく、言うのであれば次の世代にアスベスト問題を先送りしたに過ぎない。

 

現在欧州の多くの国で廃棄物の最終処理の為の埋め立て地が不足しており、また現状する埋め立て地も規模が限られている。今後増加するアスベストのゴミをどの様に処理していくか大きな課題だといえる。

 

高温や化学薬品による無害化の研究はフランデレン地域でも進められている。しかし高温で融解させるのに必要な熱エネルギー、また化学薬品を使用する際に必要になってくる薬品量を計算すると小規模での無害化は可能だが、経済面、環境面、健康面、効率などをみた場合、まだまだ全国規模の大量なアスベストを無害化するほど効率のよい対策がうまれていな。

 

無害化対策に力を入れている日本の企業も多いと聞く。「我こそは!!」と思う企業がいたら、是非欧州でも活躍してほしい

 

文献

https://www.ovam.be/asbestos-safe-flanders-2040

http://www.brusselstimes.com/brussels/10594/danger-of-asbestos-in-flemish-schools

脱石炭への光、ハムバッハの森の伐採の差し止め

ここしばらくメディアを騒がしているハバッハの森 (Hambacher Forst)

 

本日ノルトラインヴェストファーレン州(NRW州)高等行政裁判所はRWE社に対し、森の伐採の差し止めを言い渡した。この背景にはドイツの環境団体BUND(ドイツ環境自然保護連盟)が裁判に訴えた事にある。

 

欧州には生息地指令なるものがあり、野生の動植物及びその生態系を保全する事を目的としている。各EU加盟国が保全の重要性のある地区のリストを作りEUに提出する。この候補地をもとに欧州委員会と加盟国が協議をおこない保全地域のリストを作る。

 

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ハムバッハの森は希少種のコウモリや樹齢何百年の樹木があり、生態系ネットワークを作り上げている。保全対象地域としての条件を十分に満たしている。

しかしNRW州はハムバッハの森を保全候補地のリストに掲載していないと言う。

 

このような背景のもとで環境団体BUNDはNRW州の鉱物資源庁(RWEに森の伐採、褐炭の採掘の許可を出している州の区官庁)を相手取ってハムバッハの森を保全候補地リストに掲載しなかった事について裁判に訴えたとの事らしい。

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NRW州としては州内の産業や経済の事を考え、また伐採や採掘の許可を出した手前、ハムバッハの森を保全対象地域として認めたくない、認めるわけにはいかなかったのではないか?と勝手な憶測を自分はしている。

 

ケルンにある一審では環境団体BUNDの主張は認められなかったがこれを不服とし高等行政裁判所に控訴したのである。高等行政裁判所は審理を第一審に差し戻し、また第一審が判決を言い渡すまでの間、森の伐採を差し止める判決をだしたのである。

 

第一審で再び判決がでるまで、数ヶ月から1年もしくは2年掛かると言わる

 

脱石炭をめざすドイツ。CO2の排出量を1990年比で40%削減と目標を掲げたのは2007年、11年前である。この時点で石炭発電の将来は無いのである。しかしRWEも州政府もこの11年間、脱石炭の為に何をしてきたのだろうか??脱石炭の為の準備をしてこなかったのだろうか?

再生エネルギー発電は毎年少しづつ増えているが、それでも改善すべき点もまだまだ多い。何故、この11年間で再生エネルギーでの電力安定供給を積極的に進歩させなかったのだろうか?

色々と思う所がある。

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ハムバッハの森同様、現在ドイツのメディアを騒がしいているのは古いディーゼル車対策である。

 

VWのディーゼル車が違法ソフトウェアを搭載し排気ガスの検査時の排出を減らしている事件が発覚してから既に2、3年経つのではないかだろうか?

また排気ガスからの有害物質もEUの基準を超えている事も明らかになり、大気汚染も明確でる

政府は昨日古いディーゼル車での市街地に乗り入れ禁止の危機回避のため排ガス対策を発表した。VW事件から3年も経ってからである。

 

ドイツは何らかの圧力がないとなかなか動かないのではないか・・・と思う事が私生活でもドイツの政策を見ても時折感じる。

 

ドイツの今日のニュースより

 

ベルギー・アスベストの話

お仕事関連でアスベストのお話。

 

 アスベストがベルギーで禁止になったのは1998年で、イギリスの規制と同年だったと記憶している。

ベルギーでの禁止が遅かったのはやはり当時の大企業といえるエタニット社がベルギーにもあり、また経営者の1名がベルギー人であった事が関係しているのではないか?と勝手な憶測をめぐらす事ができる。大企業は良くも悪くも政治と結びつきが強いことだろう。

 

そんなベルギーなのだが、近年ベルギーのフランデレン地域(フランドル地域、フランダース地域)でもアスベスト対策に力をいれている。ちなみに欧州連合や欧州委員会があるベルギーの首都であるブリュッセルも地理的に見るとこのフランデレン地域の中にある。EU本部は近隣諸国にアスベスト対策をするように通達をだしており、やはり地元がお手本になるべく、アスベスト対策をリードするのは良い事である。

 

さてフランデレン地方なのだが、同地方政府は2014年にアスベスト排除促進プロジェクトを発進さて、すべてのハイ・リスクなアスベスト混入建材を2040年までに排除する事を目標として掲げている。その第一段階が2018年に完了する予定である。詳細はまた改めて紹介したいと思うが、そのプロジェクトの一貫で結合性アスベスト(主にセメントなどとアスベストを混ぜたもの。日本ではレベル3の建材にあたる)の発じん・飛散調査が行なわれた。英語記載の調査の要約があったので紹介したい。なお調査の原文はベルギー語(オランダ語)だと思うので、原文を入手する以前にギブアップである。

 

まず調査の背景を箇条書きにすると、

  • フランデレン地方ではアスベスト含有建材は今だに多 く使用されている。その多くは建築物の外殻部とし波型のスレート板や石綿パネルとし利用されている
  • 地方でのアスベストの飛散リスクについての調査データーは1998年(20年前)に溯り、加えて多くの調査データーは40年以上も経つ古いものである為にデーターのバックアップ
  • また建材のセメント部の風化・劣化はアスベストの発じんや飛散の原因と考えられている

との事。

 

調査の主な目的

  • 石綿含有屋根材からのアスベスト繊維の環境への飛散の評価
  • アスベストの発じんと建材の風化・劣化状態の関連性の検証
  • 人と環境へのリスク評価

だと言う。

 

さて調査方法を下記に簡単に記載。

  • 25箇所でのサンプリング
  • 調査表を使用した検視による石綿スレート及び建材の風化・劣化の査定
  • エア・サンプラーおよび粘着テープによる発じん採取
  • 雨どい、雨水の貯水容器内の堆積物のサンプルリング
  • 屋根から雨水が落ちる地表土壌のサンプルリング

 

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その調査の結果

  • 雨どい及び貯水容器の堆積物より多くのアスベストが検出
  • 結合性にもかかわらず多くのアスベスト繊維が建築物の外殻部から発じん・飛散
  • 石綿繊維の発じん・飛散建材の風化・劣化状態及び建築物の築年数には明確な関連性が認められる
  • コーティングされている石綿含有スレートではコーティング状態が発じん量を左右する。コーティングがしっかり保たれており、その保護機能が作用している場合には繊維の飛散はない

という事である。

 

またこの調査よりアスベスト繊維の発じん・飛散の主要要因

  • 雨水によるもので、風食作用よりも発じん・飛散の原因となっている

と言う。

 

加えてリスク検証だが

  • 堆積物や屋根からの雨水の落下地点での蓄積による汚染閾値の上昇
  • 地表面や雨どいからの二次的な飛散の可能性
  • 火事や災害による飛散の危険、解体作業、リフォームやリノベーションによるリスクの可能性もあるが、日常生活でのアスベスト曝露のリスクは建材の状態や生活様式などに左右される
  • 植物が生育するような地表面ではアスベスト・リスクが低いが土壌を堀りおこす事により土壌粒子の拡散と共にアスベスト飛散リスクが増加

との事。

 

今後のポリシーとして

  • フランデレン地方政府による石綿含有建材の調査拡大の奨励
  • 2040年までに生活域からのアスベスト含有建材の排除という目標の遂行
  • 安全な石綿排除へのロードマップの策定を掲げている

簡単だがなかなか興味深い調査である。 機会が有れば、調査担当機関に具体的な調査方法や数字データーを英語で問い合わせしたいと思う。

 

ソース https://www.ovam.be/asbestos-safe-flanders-2040

 

 

ドイツ・ネオニコチノイドの禁止 その2

欧州委員会の決定に基づきドイツ連邦消費者保護・食品安全庁(BVL)は今年8月にネオニコチノイド系の化学物質、クロチアニジン、イミダクロプリド及びチアメトキサムからなる農薬の使用許可の取消を決定した。

穀類、とうもろこし、菜種ではこのネオニコチノイド系の農薬の使用は以前から禁止になっているのだが、今度はジャガイモと砂糖大根での使用が昨日9月18日より禁止となった。(正しくは使用許可が取り消されたのだが)

しかし逃げ道が用意されており、ビニールハウス内で栽培する場合、使用する種子でのみ上記の農薬使用で種子を処理する事が認められているという。

またネオニコチノイド・チアクロプリド、アセタミプリドは続行して使用が許可されている。

 

ドイツのニュースより