ドイツ・環境・自然

環境の国って言われるドイツだけど、色々とジレンマがあるみたい。環境・自然を中心に日常の事書いています。

アメリカ・同時多発テロ後の癌が増加

アメリカ同時多発テロ事件は今から17年前。この無差別テロ事件の犠牲者数は3千名以上になる。それから17年経ち、先日ほぼ1万人のNY市民が癌だと言うニュースを読んだ。その原因は2001年の同時多発テロと関係すると見られている

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新聞等によると当時ワールドトレードセンタービル・ツインタワーの北棟だけでも4百トンのアスベストが使用されていた。これがビルの崩壊と共にNY市の空中に飛散し、市民5千人以上がこの発がん性の高い繊維に曝露したとされている。また飛散したのはアスベストだけではなく、水銀などの有害な化学物質やさらには微小なセメントやガラス粒子が空中に飛散した、多くの市民がこれらの有害な粉塵を吸い込んでしまったのである

 

 

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The federal World Trade Center Health Program(世界貿易センタービル健康プログラム)は当時、救助活動にあたった人の健康状態のモニタリングを2013年にスタートしたのだが2015年では約3200名、2016年には約8200名が何らかのがんを患っていると発表している。そして今現在癌患者数は9795名だと言う。

 

このプログラムを担当しているCrane医師はテロから17年経った今、年配の患者数が上昇しているという。当時のNY市民で何らかの形でテロの被害にあった人々のうち、現在までに1700名が死亡しているがそのうち癌での死亡数は420名だという。当時救助活動にあたった人々では甲状腺がん、悪性メラノーマ(皮膚癌の一種)を発病しているケースが多くまた膀胱がんの危険も高かまっている。またテロの際に有害物質に曝露した市民では通常よりも乳がん及び非ホジキンリンパ腫(色々な悪性リンパ腫)の割合が高くなっており、また白血病やその他の血液の疾病も増えているという。

 

同時多発テロ事件で出動した警察官や消防隊員では実年齢の肺活量よりも実際の肺活量が減少しているという。(肺活量は通常年齢と共に減少する。ニュースによると警察官や消防隊員の肺活量は実年齢のものより平均12歳年上の肺活量に匹敵するという)。また2年前の論文でも同時多発テロ事件で出動した消防隊員では甲状腺がん、前立腺がんの割合が通常の消防隊員に比べ多くなっているデーターを発表している。このテロでは種々の多環芳香族炭化水素(PAHs)も飛散されており、故にこれらの有害物が甲状腺がん、前立腺がんなどの原因の一部になったと考える事ができる。

 

日本は平和な国であるが自然災害の脅威と向きかっている。大きな地震や災害のたびにアスベストの飛散状態や崩壊した建築物でのアスベストの露出状態等が調査されている。環境省も2017年に「災害時における石綿飛散防止に係る取扱いマニュアル」を発表したくらいなので、災害時のアスベスト飛散というのは懸念されるテーマである。

 

健康被害、環境汚染の危険がある有害物質は建築物の崩壊以前に何らかの対策をする事で減災できる可能性が大きい。是非一度考えてほしいテーマである

 

ソース 

https://nypost.com/2018/08/11/nearly-10k-people-have-gotten-cancer-from-toxic-9-11-dust/

https://www.rt.com/usa/435801-911-dust-cancer-cases/

 

猛暑と農作物

このところ本職やアルバイトが忙しく、趣味のブロクまで手がまわらない。

 

就業後にブロクのための時間を取れば良いのだが、毎日快晴なのでついつい夕方にロードバイクにまたがって2時間ほどサイクリングをしてくる。そうすると1日終わりである。雨が降ると自転車に乗れないのしっかり晴れている間に走り貯め・・・・。

 

ところがここしばらく全然雨が降らない。自転車の走行距離の貯蓄だけが増えている。何故か体重は減らない。

 

さて自転車では大体同じ道を走るので違いに気付くも多い。今年気がついたのは農作物の収穫の早さである。

 

今年は暑い日がつづき農作物の収穫が大分早い。近くの畑でも7月はじめには牧草狩りがすんでしまった。ワイン用のブドウの成熟も大分進んでいる。これ自体まったくありがたい事である。

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しかしこれだけ猛暑がつづき雨の降らない日が続くと、そろそろ心配する声が聞こえてくる。

 

 

畑の土は乾燥しボロボロとくずれ、砂埃をあげる。一度乾燥すると雨が降っても水の吸収が悪くなるという。通常は作物の収穫後、次の年の為に土つくりがおこなわれるが、これができない状態でいる農家があると聞く。

 

家畜の飼料用の穀物の話をすれば、収穫こそ早かったが、高温によるストレスで植物自体へのダメージ、また稲穂や麦穂へのダメージが懸念されており、収穫高は例年より低くなると見込まれている。これは穀類だけではなく他の野菜や果実でも心配されている。

 

大学での植物生理学の授業を思い出して少し書いてみる。

 

植物には気孔という穴がいくつもあり、根から吸い上げられた水はこの穴より水蒸気になって放出される。気温があまりにも高いと植物はこの穴を閉め、体内の水が空中に放出されるのを防ぐ。簡単だがよく考えられている仕組みである。

 

ただしこの穴が閉じていると植物は光合成に必要な二酸化炭素を空中から取り入れる事ができないし、また体内で酸素は生産されず、排出もされない。早い話、光合成が進まなくなるのである。光合成が進まないと植物はでんぷんや脂質をつくれず、果実や野菜の成長が止まったり、場合によっては全然果実がつかない・・・・という事がおこるのである。既に収穫されて穀類やこれから収穫予定の果実や野菜の値段の高騰、また家畜飼料の十分な供給など色々と心配要素が見え出してきている。

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またこの暑さにまいっているのは人間だけではない。動物たちの多くも暑がっている。

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畜産家畜も同じで、乳牛なのでは乳の出が悪くなっている。牛乳を飲むの人間ばかりではない。子牛も牛乳で成長する。暑さと母牛の乳の出の悪さでダブルパンチをくらっている子牛も多い。

 

また有機酪農家や有機畜産農家では通常、家畜の餌も無農薬の新鮮な牧草や野菜、穀類なのだが、家畜の餌になる植物の不足で化学飼料の使用を余儀なくされる事を心配している。そうなると「ビオ農家」としての尊厳にも関わってくる。

 

ドイツのどの地域でどのような植物を育てるかによって多かれ少なかれ違いはあるものの、ドイツ・農業団体は20から50%の生産高に削減を懸念していると聞く。

 

ソース

WRD5ラジオニュース

地下鉄のストとアスベスト(その2)

地下鉄のストライキの話 (その2)

 

前回につづきブエノスアイレス地下鉄とマドリード地下鉄の話。

 

マドリード地下鉄は問題渦中の真っ只中いる。

 

その一つは同地下鉄公社がアルゼンチンの首都を走るブエノスアイレス地下鉄に石綿含有の中古車両を譲渡した事にある。スペイン、アルゼンチンともに石綿の輸出・入および取引は2001年より禁止になっているのが、その規制設立後10年を経しているのにも関わらずブエノスアイレス地下鉄に譲渡された車両に石綿が見つかったという。

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どのような経緯で譲渡が行なわれたのか現在調査中だと言う。

 

さて今回は石綿含有車両の輸出元であるマドリード地下鉄について記述したい。

 

マドリード地下鉄とはスペインの首都マドリードにある地下鉄で、かない大きな地下鉄網である。

実はここの地下鉄でも先6月にストライキが行なわれたのである。

これはスペイン最大規模の労働組合と同地下鉄の運転士組合が共同で行なってものであり、地下鉄公社従業員は現存する石綿の管理や対応の改善、従業員の健康管理と同社の責任を要求すると共に具体的な健康管理システムの枠組みをつくるように訴えた。

 

メディアによると現在まで4名の元従業員が石綿由来の癌を発病させており、すでに1名は亡くなっている。この4名は業務中の石綿疾病とし補償の対象となっている。なお勝手な憶測だが石綿由来が立証されなく、補償の対象になっていない患者もいることだろう。

 

さてマドリード地下鉄であるがスト決行日の直前に労働組合側と交渉をおこなっており、一部の要求で合意がなされいる。それによれば当初の予定では石綿曝露の危険がある作業に順次している整備士など470名を対象に石綿疾病特別健康診断を行なうというもではあった。

日本では通常雇用者が社員の健康診断を行欧州では健康診断は自己責任である。よって今回マドリード地下鉄が健康診断を行なった事はかなりまれな事である。それだけ従業員の石綿問題と重要視した結果であるだろう。

しかい今回の交渉で上記の470名だけではなく、石綿曝露の危険が低い運転手や信号手なども石綿疾病健康診断の対象者とし、計1000名まで拡大するという方針で話がまとまった。(ちなみにマドリード地下鉄の従業員数は7000名はどである)

 

またその他の部署の現職従業員に対しては希望があれば今回1回限りの健康診断を受ける事ができるという。ただし退職した従業員には適応されない。

 

またマドリード地下鉄は2025年までに1億4千万ユーロ(約180億円)かけて石綿を対策を行なうという。

手始めに500万ユーロ(約6億5千万円)を導入し車両に使用されている石綿含有部品の取り替えからはじめるという。この作業は2019年内には完了する予定である。また地下鉄駅構内にある石綿除去を目的とし、今夏よりいくつかの駅にて除去作業を始めるべく、手続きが開始されるという。

 

しかしお国柄なのかもしれないがそれでもストライキが決行された。

 

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ソース

     

http://www.latinxtoday.com

https://tribune.com.pk

https://www.sertox.com.ar

https://www.metromadrid.es

https://www.thinkspain.com

 

 

地下鉄のストとアスベスト

地下鉄のストライキの話 (その1)

 

海外生活が長いと「ストで電車が動かない」という事にも臨機応変に対応する事できるようになった。もちろん、不都合は感じるし、出勤日にあたると「どうやって本社まで行くか」と毎回、頭を悩ませる

 

東京を含め多くの大都市では地下鉄は市民の重要な「アシ」である。本数が間引きされただけで混雑が生じる。ましてストライキが行なわれば、生活に多くの支障が生じる。

しかしストライキは労働者に認められた権利であり、またストを決行する事で問題を公にする事や市民や政治家、行政等の注目を集める事もできる。

 

そんな事を思いつつ、アルゼンチンとスペインのストの話を紹介した。このストライキの背景にアスベスト(石綿)がある。

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画像引用:twitter.com/SCMMetroより

 

 

まずはアルゼンチンから。

 

南アメリカにある国で公用語はスペイン語である。国民の多くはヨーロッパ系の子孫でその割り合いは85%ほどだと記憶している。他のラテンアメリカの国々より多い事になる。そのような事もありイタリアやスペインとの結びつきが強い。

 

さてアルゼンチンの首都であるブエノスアイレスは人口約289万人ほどの都市である。ウィキペディアによると南米のパリと呼ばれる美しい町だと言うことだそうだ。その市民の重要な「アシ」になっているのが地下鉄である。1日に100万人以上の利用者がいるという(Wikipedia)

 

さて話しを今年の3月まで溯る。

 

このブエノスアイレス地下鉄(所有:ブエノスアイレス地下鉄公社、運営:メトロビアス社)では現在も多くの「中古車両」が使用されている。これらの多くは日本や欧州などで活躍した車両である。電車の車両というのはかなり高額で、11億円くらいの値段である。近代化やモデルチェンジのために中古となった車両はまだまだ現役で使用できる物が多く、購入希望国も多い

 

さてこの「中古車両」のうち、スペインの首都マドリードからブエノスアイレスに渡ったCAF5000系の車両18台で石綿使用がみつかったと言う。CAF5000系は2011年にブエノスアイレス地下鉄がマドリード地下鉄から600万ドル(おおよそ6.7億円)は購入したもので2013年より36車両が地下鉄網で使用されている

 

この石綿発見だけでも事件なのだが、現在この車両の輸出・入に関し更に不祥事が生じている。

 

その理由は石綿使用に関する法律である

 

輸入元であるアルゼンチンでは2001年より石綿および石綿含有製品の輸入は禁止となっている。また輸出元のスペインでも同年より石綿含有製品の販売は禁止にしている。つまり両国にとって禁止となっている行為が行なわれた事となる。すなわち法律違反である

 

ブエノスアイレス地下鉄の労働組合はマドリード地下鉄で石綿由来の疾病を抱えている地下鉄従業員がいる事を指摘すると共に、ブエノスアイレスでの石綿曝露の危険を懸念するとともに、このような事態を重要視し、ストライキを呼びかけた。ほぼ4月いっぱいラッシュアワーに時限付きストや部分的にストを繰り返し決行し、また5月末には全面ストライキも行なった聞く。

 

 

なおブエノスアイレス地下鉄は使用のCAF5000系に石綿がある事は知らなかったとコメント。

現在は石綿曝露防止の為CAF5000系車両を路線から回収されている。

 

しかしマドリードではCAF6000系の車両からも石綿は発見されており、同種に類似した車両が走るブエノスアイレスでも石綿曝露の不安が高まっている。

 

労働組合はマドリード地下鉄に対しCAF5000系車両

 

の石綿含有につき正確に調査を行なう事を請求すると共に製造元に詳細が記されてた書類の提出を求めている。また今後法的手段をとる事も検討していると言う。

 

 

さて輸出元であるマドリード地下鉄だが同公社では2003年段階で車両の一部に石綿が使用されている事を知ってたといわれている。2003年に国の労働安全衛生機関の要請により労災害防止サービスセンターが職場の安全につき調査をおこなったのだが、その調査書によると乗客車65台、保守車50台、及び64に地下鉄の駅にて石綿がある事が記載されあったと聞く。

 

このうちの36車両がブエノスアイレス地下鉄に譲渡されたのである。

 

これが事実であれば、「国による他国市民の健康や環境をおびやかす犯罪行為」であり、重大な法律違反になる。

 

現在、両国で譲渡にあたり、怠慢や手抜かりはなかったのか?それこそ、どういう経緯で石綿含有の車両が譲渡される事になったのか?また販売書類は何時、何処で誰によって作成されたのか?おおくの疑問を可決すべく、販売書類等の再調査がおこなわれている。

ドイツ・水汚染問題

車からの排気ガスによる窒素化合物が問題となり大気汚染の改善が課題となっているドイツ。今度は水質問題も公になってきた。

昨日ベルギーに在る欧州連合機関にあたる欧州司法裁判所がドイツ国内の地下水をはじめとする「水」に規定値より多くの硝酸・亜硝酸生窒素といった物質が検出されている事を指摘し、ドイツに改善を指示した。

農地では畜産動物からの屎尿などが肥料とし多く使用されるが、この肥料の過剰使用により水質に悪影響がもたらされている。

 

二酸化炭素による温暖化、排気ガスによる大気汚染、化学肥料や屎尿肥料による水汚染、ネオニコチノイドなどと言った農薬や単作による環境負荷の増大や生物多様性の破壊、グリホサートによる発ガン性の危険・・・etc

 

「環境先進国」ドイツは本当はかなり病んでいる国なのである

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アスベスト事情・オランダ

仕事絡みでアスベストの話

 

子供用キラキラ・メイクにアスベスト/石綿の混入が発覚したオランダ。

 

この商品と同じものを発売しているお店はドイツにもある。しかしオランダのようにメディアで大きく取り上げれらる事はなかった。欧州緊急警報システムRAPEXでクレアーズ社のアスベストが検出されたメイク・アップ商品の詳細がドイツにも通達されており、またクレアーズ社でもこれらの商品の返品に対応してるのだが、このニュースを知らないドイツ市民は多いことだろう。

 

オランダとドイツのアスベスト対策・意識の違いが窺われる。そんな事もありオランダのアスベスト事情の一部を紹介したい。

 

オランダでの石綿禁止は確か199年だと記憶している。

 

オランダは農業国として有名であるが造船業でも長い歴史があり、欧州で最大の造船国と言っても良いだろう。しかし造船業は建設業と共にアスベスト関連疾患の多い業種として指摘されているおり、この事が同国の石綿事情と深く関係しているといわれている。また現在も港町に往けば石綿含有のスレート屋根の倉庫を見かける事も

実際、調査によるとオランダでは現在も約70%の建築物で石綿含有の健在が使用されたままであるという。ドイツや日本同様、アスベストとセメントを混ぜて作られてスレート屋根の使用もまだまだ多い。

 

またオランダは石綿疾患での死亡率も高いと聞く。中皮腫だけをオランダとドイツと比べてみるが、単純に数字を見るとオランダでの中皮腫の死亡数はおおよそ年間500件ほどであり、ドイツは年間約1400件だと聞く。しかしオランダとドイツの総人口を比べると、ドイツの方が5倍ほど多い。単純に考えるとオランダでの中皮腫の死亡率はドイツの3倍ど多い事になる。

 

そのような数字データーも関係しているのか、オランダで2024年を目標に、石綿スレートの屋根の全廃を決めたのは記憶に新しい。これは公共の建築物だけではなく個人住宅も対象である。最終的には2040年までに石綿関連疾患による死亡率を0%まで下げるという大きな目標が掲げられている。

 

さてオランダ全体で実際どくらいの石綿スレートの屋根があるか言うと、総面積で13000ヘクタールだと言われている。東京ドーム約2780個分匹敵する大きさである。この多くのスレートの屋根を除去する作業は莫大な時間と費用がかかる事だろう

 

さてこの費用は誰が負担するのか?

これはもちろん建築物の所有者である。

 

では建築物の所有者にどうやってスレート屋根を撤去させるか?

これは飴とムチの政策をしていくしかない。

 

はじめに飴の部分を紹介する。これは国からの助成金による支援がある事である。しかし些か条件や上限がある。下記、助成金申請の決まりと金額の概要を箇条書きにする。

・・1)スレートの屋根1m2につき4.5ユーロ(約600円)、

・・2)支援金の上限額は25,000ユーロ(約330万円)。

・・3)最小限でも5m2のスレート屋根の除去

・・4)スレート屋根対策と太陽発電装置の設置併用

 

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国の助成金に関して言えば、条件があるとは言え、大変ありがたい制度である。

助成金の申告期間は2016年1月1日より19年12月31日までで、国としては7千500万ユーロ(約98億円)の準備があるという。(ちなみにここドイツでは通常石綿調査・石綿除去の助成金はない。あえて可能なのは確定申告で申告するくらいである)。

しかし一部のアスベストの専門家はオランダ全てのスレート屋根の除去には1.5兆ユーロ(200兆円・・・私の想像不可能な数字国家単位でのお金の規模)、また屋根撤去後の建築物修繕作業等に更に2兆ユーロから6兆ユーロかかるとみており、国の助成金はかかる費用の氷山の一角でしかないという。

 

加えて現在どのような地域に石綿が残存しているかと言うと、比較的収入額の少ない農村や低収入労働者の住む地域であるという。このような地域では建築物の所有者自身の所得が低い場合があり、石綿除去費用の工面をどうするのかが課題であろう。

市民にとって石綿による健康被害のリスクよりも、実際に直面する費用の問題の方が多きのではないかと懸念する専門家もいる。

 

また政策のムチの部分に触れるが、2024年までにスレート屋根の撤去を行なわなかった建築物所有者には罰金やもしくは刑罰を課す事があると言う。

 

石綿含有のスレート屋根の撤去を先送りし逃げる事は不可能なようである。またこれを行なった場合、犯罪行為になってしまう可能がある。

 

しかし何故、ここまで石綿スレート屋根の撤去に強行な政策をとる必要が出てきたのだろうか?

これにはつの事象が関係しているらしい。(もちろん石綿疾病患者数等も関係しているが)。

1つ目はスレート屋根自身の寿命である。オランダでのアスベスト禁止から今年で25年になる。石綿含有のスレート屋根の寿命は平均30年だといわれている。このことを踏まえと寿命がきているスレート屋根も多くある推測できる。しかし多くの場合、所有者はスレート屋根に手を着けずにいる事も多いという。

 

2つ目は気象環境の変化である。近年増えている豪雨や暴風はスレート屋根の侵食を加速させている。これにより劣化が進められる。その結果アスベスト繊維の飛散のリスクが高まる事になる。

 

つ目火災事故である。オランダやここドイツでも火災事故、取り分け倉庫や工場火災のたびにアスベスト建材の有無が確認され、また石綿建材があった場合にはアスベストの飛散があったかどうかが調査される。

今年3月にオーストラリアで森林火災がおこり鎮火するものの住民がアスベスト飛散のリスクの為に直ぐには帰還できなかったという事は記憶に新しい。

オランダでも近年大きな火災事故が起こっている。取り分け2014年のアウトレットモールでの大型ショップの火災事故はちょうどクリスマスの買い物客で賑わう時期起こった。

鎮火後も学校はしばらく休校になり、また市民も防塵マスクを使用しての生活を余儀なくされた。汚染源から4、5キロm2内でアスベストの除染作業が行なわれた。

このように火事が原因でアスベストが、何キロも先、また人の多い市内の中心まで飛散してしまうケースも珍しくない。

 

数年前、オランダでは石綿疾病患者数が2017年頃にピークに達すると予測されたが、専門家曰く、中皮腫、また石綿関連の疾病は今後更に増加する傾向にある。

 

ここドイツも同様であるが石綿リスクの認識には多くの個人差がある。取り分け若い世代はアスベストの発がん性リスクが認識され、禁止になった経緯を知らない。日本でも若い世代に石綿のリスクを伝え、認識してもうら事が一つの課題になっていると聞くが、オランダでも同じような問題を抱えている。

 

アスベストが無くなれば、石綿リスクを伝える必要もないかもしれないが、実際アスベストの多くが建築材とし使用されたままの状態である事実を見る限り、石綿リスクを伝える事はそれを使用した世代の最低限の責任ではないだろうか?もちろん負の遺産を次の世代に残さない事が一番良いのだが・・・。

 

ニュースソース

https://www.welt.de

https://www.bme.nl

https://www.asbestos.com

 

 

オランダでもキラキラ・コスメからアスベストが検出

インフルで1週間寝込みました。

その間に欧州委員会がドイツ医薬・農薬大手バイエルによる米モンサントの買収を承認するっと言う話がまいこんできた。また欧州食品安全機関(EFSA)が農薬ネオニコチノイドが、蜂に対してのリスクを再認したと言う話も最近の事である。ちなみにドイツでのネオニコチノイド系農薬の生産メーカーもバイエルである。近い将来バイエル社はドイツの農業分野を牛耳る事になるだろう。

 

さて、更新がいつものように進まないので、今回も本職からみでアスベストの話です。

 

オランダのインフラ・水管理省(危険有害物や廃棄物の管理をおこなう管轄官庁)下の検査機関ILTとオランダ食品消費者製品安全機構はオランダ国内で販売されている米国クレアーズ社のメイク・アップ商品2種類にアスベストが混入している事実に基づき該当商品を販売から削除するように命じたという。

 

オランダの関連官庁は昨年12月、米国内でクレアーズ社のメイク・アップ商品からアスベストが検出された事を重要視し、独自に調査を行なってきた。その結果フェイス・パウダーには2%〜5%、またコンタリング・パウダーには0.1%〜2%の濃度でアスベストが混入されている事が発覚。

 

幸いにも低濃度だった為、「健康被害のリスクが有る」とのみ指摘し、疾病などを起す可能性は極めて少ないという。

 

実は昨年の段階でオランダではクレアーズ社商品のアスベスト混入調査の話はあったのだが、アメリカ食品医薬品局FDA)がオランダ食品消費者製品安全機構の問い合わせに対し「問題がない」という見解を示した為、オランダでは今日までアスベストの分析調査が先送りされてきたと言う。しかしアメリカでのアスベスト混入調査報告が公に発表されて事が問題視されたのだろう、オランダでもクレアーズ社商品のアスベストの混入の有無につき分析調査が行なわれた。

 

その結果、アスベストが見つかったという。調査結果も公にされているので画像を引用させていただく。

 

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オランダではアスベスト混入商品の生産や販売は禁止である。関連官庁はクレアーズ社に対し該当商品および同じ成分からなる商品を店頭販売から外すように求めている。

 

なおアメリカ本国では昨年12月の騒ぎの後どうなったのか?

 

事の始まりはアメリカに住むウァーナーさんが娘さんのキラキラ・コスメ成分調査を依頼しアスベストが検出されてた事にある。その後、分析機関Scientific Analytical Institute(SAI)がアメリカ国内9州のクレアーズショップで商品を購入し調査をおこなった結果、すべての商品(17点)でアスベストが検出されたとう言う。

 

その後アメリカの消費者団体Public Interest Research. Group The U.S. PIRG)と調査・分析機関STAT Analysis Corporation (STAT)はタルクを含む化粧品15点(4社)の調査を行なったという。(L’Oreal/ロレアル、Cover Girl/カバーガール、NYX Professional Makeup/ニックス プロフェッショナル メイクアップ、Claire’s/クレアーズ)。

 

その結果クレアーズ社商品3点でアスベストが検出されたという。

 

なおクレアーズ社は12月の時点で自主的にアスベスト混入疑惑商品を店頭から下げていると言うことらしいので、アスベスト混入疑惑商品以外の別の商品で新たにアスベストが見つかったという事になる。

 

加えてこのクレアーズ社商品3点の商品名も発表されているのだが、個人のブログで何処まで引用が許されるのかわからないため、控えるがニュースソースのリンクを張っておくので興味が有る場合は参照して頂きたい。

 

また分析調査の結果、最大で153846本/1グラムのアスベスト繊維が確認されたという。

 

日本では大気中アスベスト敷地境界基準は10本/1リットルと言う基準がある。空気1リットルの重さは1.3グラムほどなので10本/1.3グラムと考えた場合153846本と言う数字がいかに大きいか想像できるだろう。(本当は物質と空気をこのように比較する事はありませんが、想像しやすいかな?っと思って・・・)

 

なおクレアーズ社はホームページでこの調査結果を批判・否定している。

 

現在クレアーズは約20億ドルの負債を抱えており、破産手続きの準備を進めている。今月はじめには会社更生法の適用を申請したと言う。投資家との間でも話が進められており、事業の再構築を目指すという。クレアーズはショップは45カ国で7500の店舗があるという。これらの販売店を閉める予定はないと言う。

 

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ニュースソース

https://www.dutchnews.nl

https://www.asbestos.com