ドイツ・環境・自然

環境の国って言われるドイツだけど、色々とジレンマがあるみたい。環境・自然を中心に日常の事書いています。

ドイツ・環境・「バイエル社のモンサント社の買収」に思う事

週のニュースより。

 

色々と言われている除草剤グリホサートの製造元・アメリカの大手農薬メーカー・モンサントの買収が決まった。買収元はアスピリンで有名なドイツの大手医薬品メーカー・バイエル。買収提示総額は620億ドルだと言われていたが、モンサントが金額に不満を示していた。

しかし昨日660億ドル(67800億円)にてモンサント社と最終合意にいたり、買収が決まった。

 

 

農薬の大手企業には色々あるがやはり市場シェア率が一番高いのはシンジェンタである。あるデーターによると1位シンジェンタ(スイス・23.1%)、2位バイエル(独・17.1%)、3位BASF(独12.3%)(ETC Group, 2013 – 11“ Putting the Cartel before the Horse...and Fram, seeds, Soil, Peasants, etc.

 

また種苗市場においては欧州議会発行の調査書によると1位モンサント(アメリカ・21.8%)、2位デュポン(アメリカ・15,5)、3位シンジェンタ(スイス・7,1%)だと言う (CONCENTRATION OF MARKET POWER IN THE EU SEED MARK: The Greens, EFA in the European Parliament; 欧州議会)

 

しかし今回の買収によりバイエルーモンサント社グループによる種苗市場でのシェア率は30%までに拡大、また農薬部門においてのシェアは25%程になると予想され、世界シェアの1位シンジェンタを追い越す形になる。

http://www.spiegel.de/wirtschaft/unternehmen/bayer-chef-zu-monsanto-uebernahme-eine-aussergewoehnliche-moeglichkeit-a-1112434.html)、

 

ここ数年、農業化学分野での大手企業の合併や買収が目立つ。ダウ・ケミカルとデュポン、中国国有の中国化工集団とシンジェンタ。農業関連市場が再編されつつある。バイエル社も例外ではなかった。この波に乗り遅れてはならないっと言う気持ちもわかる。

 

しかしエコ・ビオ・オーガニック ブームのドイツ。市民の多くがエコ・ビオ商品の存在に賛成であり、またエコ・ビオ・オーガニック商品を通常購入しない人でも遺伝子組み換え商品には反対であると聞く。統計的にみても70%以上の市民が遺伝子組み換えに反対だと言う。

 

そんなドイツなのにバイエルが買収したのは悪名高いモンサント社である。

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モンサント社は化学薬品・農薬の会社であった。ベトナム戦争で使われた枯葉剤の製造元でもある。この枯葉剤の影響で奇形児出産率が高まり使用が禁止されている。また同戦争からの帰還兵の間でも健康被害が現れており、枯葉剤製造元(モンサント社)に対し集団訴訟が起されたと言う過去がある。(https://ja.wikipedia.org/wiki/枯葉剤)

 

現在は遺伝子組み換え(GM=genetically modified)をおこなった種子、またそれと一緒に強力な除草剤を販売している。この除草剤の効果は抜群で、害虫・雑草・益虫(蜜バチやミミズなどの役に立つ動物)を死滅させる(話によるとネズミなどの脊椎動物にも効果があるらしい)。しかしGMをおこなった植物は耐久性があり、毒性の強い除草剤にも係わらす成長する。個人的に「自然の理に反した怪しい植物」と言うイメージを持っている。進んで食べたいとは思わない。

 

また同社の事業方針も批判されてる。GMした種に特許を申請してあり、同社の種を使用しての、自家採種(植物を育てて種を取る事)は特許の侵害とし禁止している。またつい昔からの習慣で

同社の種を自家採種した農家は同社の持つ特殊なネットワークにより発見され、違約金を請求される。更に加えて同社は自社の種の権利を守る為、種に自家採種した場合、元気に育たないと言う特徴を組み込んでいる。

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聞くところに因るとドイツでは母乳や尿からこの除草剤に成分が検出されていると言う。ラットによるGM食物実験により発がん性も強く疑われている。同社の製品を買わないようにするデモも盛んである。しかしドイツ政府の対応は曖昧である。ドイツ国内でのGM種子の販売の不許可、GM植物の栽培・収穫の禁止などに向けと調整をする方向であるとは聞くが、発がん性の疑いがある同社の除草剤グリホサートの使用も学術データーがそろっていないと言う事で未だに禁止されていない(なお長期使用の許可も認定されていない)。

 

また健康被害への懸念だけではなく、特定の植物の栽培により動植物の多様性の減少が心配されている。特に昔からその地で栽培されてきた、在来種の栽培が抑制されたり、またGMとの交配なども心配される。

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ドイツではTTIPの反対も強い。TTIPとは環大西洋貿易投資パートナシップの事でアメリカとEUとの間の自由貿易協定の事を言う。ドイツ市民はこれによりGM農作物の流入を懸念している。

 

しかしこれにより欧州において毎年1200億ユーロ、アメリカでは950億ユーロの経済効果があるとされており(Raoul & Renaud 2014)、またモンサント社、バイエル社、共にTTPIの望んでいると聞く。この買収の裏にはTTIPとの何らかの関連性があるのかもしれない。