ドイツ・環境・自然

環境の国って言われるドイツだけど、色々とジレンマがあるみたい。環境・自然を中心に日常の事書いています。

ドイツ・環境・「イタリア・エタニット社の話」

Casale Monferrato カザーレ・モンフェッラートはイタリア北部、トリノ郊外に位置する街である。

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街中には多くの古い建物が残されており、なかなか見ごたえがある。周辺には田園が広がり、またイタリアきってのワイン産地として有名である。

 

しかしこの町の名はもう一つの大きな出来事でも知れらるようになった。

 

汚名の多い、スイスの建築資材メーカー・エタニット社。イタリアのカザーレ市に工場があり、1985年まで操業していた。その工場の従業員・周辺住民23000人がアスベストによる疾患で死亡したと言うイタリアでの社会問題は決して過去の事ではない。

 

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労災認定者、約1700人。彼らには補償金及び労災が払われる結果となったのは90年代初期の事である。

90年中期より、アスベスト環境曝露による被害者数も増えてきた。その数大よそ500人。彼らは環境曝露の為、労災の対象外となり、補償もないままであった。

 

2009年、当時のスイス人及びベルギー人の経営者2名(シュミットハイニ被告、ルイ・ド・カルティエ被告)が過失致死罪・環境破壊罪及び安全配慮義務違反の容疑で起訴された事は記憶に新しい。なお2056件の死亡被害と833件の疾病被害の責任が問われた。

 

トリノ裁判所での一審・二審では有罪判決が下だり、また二審では禁固刑18年及び賠償命令が言い渡された。しかし、この判決を不服した被告側は上告。最高裁で経営者の責任追及がなされる結果となった。

しかし最高裁での判決はアスベスト被害の犠牲者やその遺族の気持ちを顧みないものであった。「既に時効が成立している」との理由で同被告は免訴になったのである。すなわち裁判が打ち切られ、法の基での責任追及が無効になった。賠償命令も取り消された。2014年の冬の出来事であった。

 

それから約半年後、2015年夏。トリノ裁判所の検察当局をはじめ閣僚評議会議、ピエモンテ州、アレッサンドリア県などがローマの最高裁の判決を批判すると共に、原告人となり、スイス人元経営者シュミットハイニ氏の再審を要求した。起訴の理由としてはアスベストによる健康被害での死亡者258名に対しての過失致死罪である。

 

ここで問題になったのは一事不再理の原則である。つまり「ある事件で一度裁判で責任を追求した場合、同じ事件で有罪・無罪・免訴に関係なく、再び起訴できない」っと言う決まりがある。今回の258名に対しての過失致死罪での起訴が憲法違反にあたるかどうかを判断するため、まずはイタリア憲法裁判所にて審議が行なわれ事となった。

 

その判決が2016年今月21日に下った。

 

今回の起訴内容258名のうち、186名に関しては一事不再理の原則にて再審不可と言う内容であり、「起訴状より186名を削除するように」とトリノ裁判所の検察当局に伝えられた。

 

しかし逆の見方をすれば残り72名の過失致死罪での起訴の可能がまだ残っているとみられている。

 

シュミットハイニ氏の代理弁護人は「前回の裁判ではすべて決着がついている」とコメント。また一事不再理の原則とは同一事件で再審を受けないという事なので、つまり今回新たな被害者名が挙ても事件としては前回と起訴内容と同じでものであるっと言う見解を示したと聞く。

 

これに対し原告側は「法律に基づく訴追責任の権利」を主張。前回の裁判では「時効」と言うで事で、結局有罪でも無罪でもない判決結果である。すなわち検査当局に責任追及の権利があると言う意見もある。

また原告側は「被害者の救済を行なわない為、今後欧州人権裁判の介入の可能性もある」とコメントとした。

エタニット裁判はまだ終わっていない。