ドイツ・環境・自然

環境の国って言われるドイツだけど、色々とジレンマがあるみたい。環境・自然を中心に日常の事書いています。

「石綿含有」、「石綿フリー」??

今日は「未来のための金曜日」の日。天気も晴れそう。わが町では9時よりデモ行進。明日以降にこのFridays for Futureの話をアップしたい。

よって今日はお仕事の話。

1月後半から2月いっぱい何かと急がしかった。調査書を書いたり、翻訳の依頼をこなしたり、日帰り手術を受けたり・・・etc。

 

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嬉しいことに日本からアスベスト関連の視察団を迎える事ができた。日本よりドイツの石綿事情を視察にこられ皆さんである。日本の現状をドイツと比較しながら説明してください、大変勉強になった一週間であった。

 

その関連で現在も日・独の相違に関し質問を頂く。

 

私自身、ドイツ生活が長くなってもドイツ語に関しては内容にもよるが決しては100%の理解になることはない。そんな自分がドイツ人でも理解の相違がある法律文や規制文を相手に頭を悩ませるのである。

 

先日日本から「石綿含有建材の定義」についてご質問を頂いた。

 

%以上石綿含有は石綿含有製品とみなす」・・・という文章を法律文や規制文を探したが見つからないそんな事で今日は「石綿含有」&「石綿フリー」について考えてみた。

 

まずは「石綿含有」とは何かについて考えてみた。

上級規則から見てみたい

 

・・)欧州化学物質規則(REACH Verordnung,AnhnagXVII EG nr.1907/2006)

ではアスベスト繊維及びまたこの繊維を故意に混ぜての生産、上市、使用は禁止と理解できる。(ただし使用に関し一部の例外があるが・・・。)なお含有量の記載は無い

 

・・)ドイツ化学物質規則(chem Verbots V)は上記REACHのドイツ国内法でREACH同様にアスベスト繊維及びこの繊維を故意に混ぜての生産、上市、使用は禁止とある。ここにも含有量の記載は無い。ただし古いバージョンでは下記のドイツ有害物質規則(GefStoffVのように0,1質量%を超えるの禁止が表に書かれている。新しいバージョンでは直接の記載はないが、古いバージョンで禁止事項が維持されると言う一文がある。よって昔の0,1%が有効であるようである。

 

・・)ドイツ有害物質規則(GefStoffV)では「特定」の製品生産、使用は禁止もしくは規制されるとし、石綿もこの「特定」に含まれている

この規則の後ろの方のページに追記されているAnhangIIに石綿についての事が書かれている。これによると石綿および石綿含有にかかわる作業は原則禁止である。例外として、石綿除去や無害化対策、また対策したモノのメンテナンスや維持・管理する作業、また低発塵作業として申請するにあたり、必要な計測調査や分析などは認められている。ただしメンテナンス、維持・管理作業でも石綿製品の表面構造の影響をあたける作業、例えば削る、水圧洗浄、たわしでこする事や穴をあける事は原則禁止である。ただしこれらの穴を開けたり、こすったたり、削ったり、水圧使用したりする作業でも低発塵作業として申請されている特別な作業や仕法で行なわれう場合はOKであるという。

さてこの追記AnhangII(2)にやっと石綿含有率の数字記載を発見した。それによると石綿の天然鉱石の発掘や加工、利用や更に再利用、またそれから作られて部品や製品で石綿含有の質量が0.1%超えるものは禁止とある。

(ただし一部の例外があり、条件がそろえば使用が許可されるものとし石綿隔膜電解が記載されている。私個人としてイオン交換膜電解法で代用できると思うので未だに石綿隔膜電解の方法が使用されているかどうか疑問である。しかい規則上では使用が可であるようだ)

 

さて石綿と取り扱う作業でもうひとつ認められている作業がある。これは石綿の廃棄作業である。石綿廃棄物に着目し、「石綿含有」について、具体的な数字を探してみた。

 

・・)欧州およびドイツの廃棄物規則では0.1%以上のアスベスト含有する廃棄物有害廃棄物であるとされている。(2018C/124/01)、(AVV)、(TRGS519)

 

これらの文章をまとめてみると0.1質量%を超える製品は「石綿含有」である・・・と解釈する事が可能である。また逆の見方をすると石綿含有の質量が0.1%を超えないもものに関してはその上市が認められてる・・・と解釈し、同時にこれらの製品は「石綿含有」製品から外す・・・と考える事も出来る。

 

しかしこの0,1質量%に捕らわれると、問題が出てくる。

 

今ドイツで問題になっている、タイルを張るの使用された石綿含有接着剤、レンガの隙間をうめている石綿含有コーキング剤、石綿含有の壁の漆喰や仕上げ剤など、建築物の一部でのみ石綿含有の物が使用されている場合、壁面積全体や壁の厚さを考慮して見た場合には計算上、石綿含有濃度は小さくなる。それこそ0,1%以下になる事もある。またこれらの製品で石綿含有量が非常に低く場合もある。例えばタイルの接着剤を例にとると通常は石綿含有率は1%以下だと言う。調査によると0.1%以下も多いようである(W. Hiltpold 2014)

さてこのタイルだが接着剤がついている部分は石綿含有である。

石綿含有量の割合は少ないが、仮にこの接着剤が大量についている部分を削れば空気中に飛散する繊維も瞬時に増える事ことであろう。これは低リスクを見る事はできないと自分は思う。

 

建材中の石綿含有が高く、加えて飛散のリスクも高かければ、危険度は増加するだろう。

しかしアスベストの危険は石綿含有率よりも実際にどのくらいの数の繊維が肺に届くかである。だが実際問題としまた実際にどの位の繊維が肺に届くのか・・・という数字を具体化する事も不可能である。

 

結局のところ、ドイツの場合、製品に含まれる石綿の下限値というものは設定されていない。

 

石綿含有が0.1%超えるものは禁止しているが、石綿含有が0.1%以下の製品に対して「石綿フリーある」・・・とは決して言わない。

 

またドイツ国内規則(LAGA M 23)では石綿含有廃棄物は含有率が0,1%以下でも廃棄物選別処理センターなどに流しては・流れてはいけないという。つまりリサイクルの流れに取り入れてはいけないと言う事らしい。これは「含有率が低くても石綿含有だから危険」と言うように深読みする事もできる。

 

もしかすると「石綿含有」「石綿フリー」の概念は検出限界と関係があるのかもしれない。

 

簡単に分析関連の規則に目を通すと

ISO(22262-2:2014-02),VDI(3866 Blatt5AnhangB:2017-06)によれば検出限界は0.001質量%である。BIA/IFA(7487)では0,008質量%、VDI(3876)では0.005質量%もしくは0.001質量%だと言う。ただしこれらの検出限界はおおよその数字である。実際にどれだけ石綿が検出できるかは技術や分析屋さんの経験によるところも多いだろう。

 

1995年以前建材の多くに何らかの形で石綿が含まれている。これには故意的ではなく、不純物としてまぎれてしまった事もあるだろう。技術の進歩で石綿検出が更に下がれ、石綿含有製品の数は今後更に増えるのだろうか?