ドイツ・環境・自然

環境の国って言われるドイツだけど、色々とジレンマがあるみたい。環境・自然を中心に日常の事書いています。

石綿濃度を守る知恵・ドイツ

お仕事の話

 

日本では石綿/アスベストの環境濃度、建築物内石綿濃度が決められていないと聞く。ただしまったく何も無いわけではなく1989年の大気汚染防止によると「石綿工場がある場所と一般住宅のある場所での境界付近での気中の石綿濃度の規制基準は10F/L」であるという。今でこそ日本も石綿禁止となり、当時の話である。また汚染元である石綿工場の傍なので当然、一般環境や家庭での室内環境より高い数字に設定されているのであろう。

ちなみに石綿工場の屋外での数字である。工場内の規制値は存在しなくとも、当然のことながら工場内は多くの石綿が浮遊していた事だろう。

 

しかしまぁ昔は石綿の基準値は高かった。例えばこドイツでも1981年の石綿濃度の室内基準値として10FLが推奨されており、WHOでの石綿リスクの基準値も当時は20FLであったと言う。

 

日本の石綿の全面禁止(ただし石綿含有0.1%を超えるものに限ると言うことだが)は2006年だったと記憶している。しかし上記の大気汚染防止法からは30年経っているが未だに10FLという基準値を使用しているようである。

 

ここドイツでも規制値が定まっていないものも多いが存在する主な規制値として下記の4つを挙げることができる(詳細が前回のFBかブロクをご参照)。

・・A) 作業・労働環境の空気中に浮遊する石綿の基準値(作業・労働環境濃度:受け入れ可能濃度・10FL、許容濃度・100FL

・・B) 石綿対策工事中に養生した作業場から集塵機を使用し屋外に廃棄される空気中の石綿濃度(排気空気濃度:1FL

・・C) 石綿対策工事の効果を見るための基準になる養生内の空気中の石綿濃度、これは工事後に行なわれる(点検検査濃度:0.5FL

・・D) 通常の家庭環境下でのリスク基準値として浸透している室内空気に含まれる石綿濃度(室内空気濃度:0.5FL

 

さて今回も日本の方から質問を頂いた。

これはB):排気空気濃度:1FLに関してである。

簡単に考えるため、詳細にはふれない。

 

 

除去作業時の排気空気の石綿濃度は定められている。これは最大で1FLである(1)

HEPAフィルターの捕手率も凡そ決まっており、欧州H13HEPAフィルターは99.95%である(2) 

上記(1、2)より、HEPAフィルターから洩れる率が0.05%であり、これが許容されている1FLに対応する事になる。

なお99.95%はHEPAフィルターにて捕手されるが、その数字が1999FLである。(3)

よって養生内の石綿濃度は100%にあたる2000FLという事になる。(4)

つまり2000FLまでであれば排気濃度:1FL(以下)を守る事ができる。

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しかし実際隔離養生した石綿除去現場内の石綿濃度は未知である。それこそ飛散しやすい石綿除去をおこなった場合2000FLを超える事もあるだろう。そのような場合でも1FLを守る必要がある。さてどうするのか?

 

前置きが長くなったがこれが今回の質問事項である。

 

質問:養生内の石綿浮遊が多い場合、排気空気濃度である1FLを守る為にどうするのか?

 

話によると吹きつけ材を湿潤無しに除去をすると4000FLくらいの繊維が浮遊するという。しかし通常は繊維の飛散を防ぐ為、湿潤してから除去作業を行なう。また室内すべてを湿潤できないのであればそれこそ塗れた雑巾や大きめのタオルを使用し、部分的に湿潤する事になる。

また作業自体もできるだけ飛散が少ないように行なわれる。ディスクグラインダーや床材研磨機は集じん機能付の物が使用され、粉塵は研磨と同時に吸引される。なお回収された粉塵は手をよごす事なく袋詰めされる。

また手作業で吹き付け材を削りとる場合なども直ぐ隣にバキュームをおき、削ると動じに回収する。

隔離養生内でも、できる限り繊維の飛散がないように作業が進められる。

 

しかしそれでも養生内の石綿濃度が高い可能性もある。そんな時は下記のような対策を行なう。

 

・・A)H14-HEPAフィルターを使用する。

H14-HEPAフィルターの捕手率は99.995%である。よって計算上最大20000FLの繊維が養生内に浮遊していても、19999FLは捕手される事になる。

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・・B)養生内の汚染がさらに深刻な場合、集塵機のろ過システムを3層から4層にすることで対応する事もできる。この場合ファーストフィルター、セカンドフィルター、HEPAフィルター、HEPAフィルターという組み合わせになる。各くHEPAフィルターが99.95%で石綿繊維を捕手するので、結果養生内の石綿繊維濃度が40、000、000FLでも洩れるのは1FLである。

なお40、000、000FLとは計算上の数字である。

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正しくに集塵機を回し、しっかり湿潤して、更にバキュームを常時使用しながら除去作業を行なえば飛散しやすい吹き付け材でも養生内の浮遊石綿濃度は高くても2FLくらいであるといわれている。

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最終画像のみ引用:Köln aktuelle Stunde