脱石炭と石炭委員会
ディーゼル車乗り入れ禁止がハンブルクで試行され、シュトゥットガルト、アーヘン、フランクフルト、ベルリン、マインツと次々にディーゼル車の乗り入れ禁止が広がっている。事の発端はディーゼル車からの排出ガスに含まれる窒素化合物の濃度が基準値を長年上まっていた事にある。
重たい腰をあげやっと(苦肉の)対策案を今月冒頭に発表した矢先、今度は欧州理事会で車両から排出される二酸化炭素(CO2)の量を2030年までに2021年に比べて35%削減する目標が発表された。ドイツは30%削減を求めていたが、多くの国が40%以上の削減を求めた為、その中間値で合意にいたった。
色々と解決すべき課題が多いドイツである。
さて今日10月25日、現在、石炭委員会の会議が行なわれている。この会議の主要テーマはCO2による気候変動対策と雇用問題である。
気候変動に関して言えば豪雨や日照りなど、これほど顕著に現れた年はまれであるだろう。また現在でも日照りの弊害が残っており、ダムの貯水量が回復するどころが、一部では更に貯水量が減少していると聞く。ドイツの産業地帯を結ぶライン川でも水量が減少し、大型タンカーや貨物船は重量を半減し、川を行き来している。これによりガソリンの供給が心配されだしており、また生産業等では輸送貨物の遅れが懸念されて始めている。
車社会や工業や生産業、また食に関する農業や畜産業、これらは気象環境が許すから成り立つのであろう。気候変動が更に加速すれば、それだけ弊害も大きくなるだろう。よって一番大事なのは気候変動を抑える事であると私自身は考えている。
そんな事を思うと「脱石炭」は一日でも早く実現させる必要がある。
しかし現在鉱山で働く人々や鉱山地域と密接に関係して事業を行なっている人にとっては炭鉱の閉鎖は死活問題である。昨日もRWE社員を中心に2,3000人が集まり安定した雇用、安定した生活を求めデモをおこなった。
鉱山で生活をしている人々の気持ちも理解できる。
しかし環境保護派の人々に槍を向けるのは違うのではないだろか?「脱石炭」は遅かれ、早かれやってくる。しかし地域の自治体、州政府や国政府、また雇用者であるRWEは今まで鉱山で生活をしている人々の雇用問題や死活問題につき、進んで対応策を検討してこなかったようにみとれる。
ドイツでは現職での就労が困難な場合や他の職業へ転職したい場合、職業転換/再教育訓練(Umschulung)を受ける事が日本より盛んである。そのために助成金を申請する事もできる(ただし申請を却下される事も多いが・・・)。また雇用者側が積極的にキャリアアップの一貫として、向上職業訓練(Fortbildung)を提供している場合も多い。このようなシステムが整備されている社会なのに、そのシステムを積極的に活用してこなかった会社や社員の姿勢も気になる。
何にせよ、今日は朝からラジオでこの石炭委員会会議について語られている。この会議の中心になるのは上記にあるようにやはり鉱山で生活をしている人々の雇用や生活であり、これらの鉱山地方の再構造化である。
アイデアとしてあるのは「脱石炭」後に政府機関や研究機関などの転地、今後増えるであろう電気自動車やバッテリーなどの生産業の転移、また現存する施設を再利用し再生可能エネルギーで作られたエネルギーの蓄電施設やより効果的な蓄電システムの研究開発施設へのリニューアル、また広大な土地があるのでアグリビジネスやアグロインダストリーへの誘致などが挙げられている。
会議の結果については早ければ今日の夜のニュース、遅くとも明日のニュースで報道されるだろい。なおこの委員会は多彩なメンバーで構成されている。何らかの合意にいたるだけでもなかなか難しいだろう自分は思っている。
ソース WDR5