ベルギー・アスベストの話
お仕事関連でアスベストのお話。
アスベストがベルギーで禁止になったのは1998年で、イギリスの規制と同年だったと記憶している。
ベルギーでの禁止が遅かったのはやはり当時の大企業といえるエタニット社がベルギーにもあり、また経営者の1名がベルギー人であった事が関係しているのではないか?と勝手な憶測をめぐらす事ができる。大企業は良くも悪くも政治と結びつきが強いことだろう。
そんなベルギーなのだが、近年ベルギーのフランデレン地域(フランドル地域、フランダース地域)でもアスベスト対策に力をいれている。ちなみに欧州連合や欧州委員会があるベルギーの首都であるブリュッセルも地理的に見るとこのフランデレン地域の中にある。EU本部は近隣諸国にアスベスト対策をするように通達をだしており、やはり地元がお手本になるべく、アスベスト対策をリードするのは良い事である。
さてフランデレン地方なのだが、同地方政府は2014年にアスベスト排除促進プロジェクトを発進さて、すべてのハイ・リスクなアスベスト混入建材を2040年までに排除する事を目標として掲げている。その第一段階が2018年に完了する予定である。詳細はまた改めて紹介したいと思うが、そのプロジェクトの一貫で結合性アスベスト(主にセメントなどとアスベストを混ぜたもの。日本ではレベル3の建材にあたる)の発じん・飛散調査が行なわれた。英語記載の調査の要約があったので紹介したい。なお調査の原文はベルギー語(オランダ語)だと思うので、原文を入手する以前にギブアップである。
まず調査の背景を箇条書きにすると、
- フランデレン地方ではアスベスト含有建材は今だに多 く使用されている。その多くは建築物の外殻部とし、波型のスレート板や石綿パネルとし利用されている
- 同地方でのアスベストの飛散リスクについての調査データーは1998年(20年前)に溯り、加えて多くの調査データーは40年以上も経つ古いものである為にデーターのバックアップ
- また建材のセメント部の風化・劣化はアスベストの発じんや飛散の原因と考えられている
との事。
調査の主な目的は
- 石綿含有屋根材からのアスベスト繊維の環境への飛散の評価
- アスベストの発じんと建材の風化・劣化状態の関連性の検証
- 人と環境へのリスク評価
だと言う。
さて調査方法を下記に簡単に記載。
- 25箇所でのサンプリング
- 調査表を使用した検視による石綿スレート及び建材の風化・劣化の査定
- エア・サンプラーおよび粘着テープによる発じん採取
- 雨どい、雨水の貯水容器内の堆積物のサンプルリング
- 屋根から雨水が落ちる地表土壌のサンプルリング
その調査の結果だが
- 雨どい及び貯水容器の堆積物より多くのアスベストが検出
- 結合性にもかかわらず多くのアスベスト繊維が建築物の外殻部から発じん・飛散
- 石綿繊維の発じん・飛散と建材の風化・劣化状態及び建築物の築年数には明確な関連性が認められる
- コーティングされている石綿含有スレートではコーティング状態が発じん量を左右する。コーティングがしっかり保たれており、その保護機能が作用している場合には繊維の飛散はない
という事である。
またこの調査よりアスベスト繊維の発じん・飛散の主要要因は
- 雨水によるもので、風食作用よりも発じん・飛散の原因となっている
と言う。
加えてリスク検証だが
- 堆積物や屋根からの雨水の落下地点での蓄積による汚染閾値の上昇
- 地表面や雨どいからの二次的な飛散の可能性
- 火事や災害による飛散の危険、解体作業、リフォームやリノベーションによるリスクの可能性もあるが、日常生活でのアスベスト曝露のリスクは建材の状態や生活様式などに左右される
- 植物が生育するような地表面ではアスベスト・リスクが低いが土壌を堀りおこす事により土壌粒子の拡散と共にアスベスト飛散リスクが増加
との事。
今後のポリシーとして
- フランデレン地方政府による石綿含有建材の調査拡大の奨励
- 2040年までに生活域からのアスベスト含有建材の排除という目標の遂行
- 安全な石綿排除へのロードマップの策定を掲げている
簡単だがなかなか興味深い調査である。 機会が有れば、調査担当機関に具体的な調査方法や数字データーを英語で問い合わせしたいと思う。
ソース https://www.ovam.be/asbestos-safe-flanders-2040