ドイツ・環境・自然

環境の国って言われるドイツだけど、色々とジレンマがあるみたい。環境・自然を中心に日常の事書いています。

地下鉄のストとアスベスト

地下鉄のストライキの話 (その1)

 

海外生活が長いと「ストで電車が動かない」という事にも臨機応変に対応する事できるようになった。もちろん、不都合は感じるし、出勤日にあたると「どうやって本社まで行くか」と毎回、頭を悩ませる

 

東京を含め多くの大都市では地下鉄は市民の重要な「アシ」である。本数が間引きされただけで混雑が生じる。ましてストライキが行なわれば、生活に多くの支障が生じる。

しかしストライキは労働者に認められた権利であり、またストを決行する事で問題を公にする事や市民や政治家、行政等の注目を集める事もできる。

 

そんな事を思いつつ、アルゼンチンとスペインのストの話を紹介した。このストライキの背景にアスベスト(石綿)がある。

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画像引用:twitter.com/SCMMetroより

 

 

まずはアルゼンチンから。

 

南アメリカにある国で公用語はスペイン語である。国民の多くはヨーロッパ系の子孫でその割り合いは85%ほどだと記憶している。他のラテンアメリカの国々より多い事になる。そのような事もありイタリアやスペインとの結びつきが強い。

 

さてアルゼンチンの首都であるブエノスアイレスは人口約289万人ほどの都市である。ウィキペディアによると南米のパリと呼ばれる美しい町だと言うことだそうだ。その市民の重要な「アシ」になっているのが地下鉄である。1日に100万人以上の利用者がいるという(Wikipedia)

 

さて話しを今年の3月まで溯る。

 

このブエノスアイレス地下鉄(所有:ブエノスアイレス地下鉄公社、運営:メトロビアス社)では現在も多くの「中古車両」が使用されている。これらの多くは日本や欧州などで活躍した車両である。電車の車両というのはかなり高額で、11億円くらいの値段である。近代化やモデルチェンジのために中古となった車両はまだまだ現役で使用できる物が多く、購入希望国も多い

 

さてこの「中古車両」のうち、スペインの首都マドリードからブエノスアイレスに渡ったCAF5000系の車両18台で石綿使用がみつかったと言う。CAF5000系は2011年にブエノスアイレス地下鉄がマドリード地下鉄から600万ドル(おおよそ6.7億円)は購入したもので2013年より36車両が地下鉄網で使用されている

 

この石綿発見だけでも事件なのだが、現在この車両の輸出・入に関し更に不祥事が生じている。

 

その理由は石綿使用に関する法律である

 

輸入元であるアルゼンチンでは2001年より石綿および石綿含有製品の輸入は禁止となっている。また輸出元のスペインでも同年より石綿含有製品の販売は禁止にしている。つまり両国にとって禁止となっている行為が行なわれた事となる。すなわち法律違反である

 

ブエノスアイレス地下鉄の労働組合はマドリード地下鉄で石綿由来の疾病を抱えている地下鉄従業員がいる事を指摘すると共に、ブエノスアイレスでの石綿曝露の危険を懸念するとともに、このような事態を重要視し、ストライキを呼びかけた。ほぼ4月いっぱいラッシュアワーに時限付きストや部分的にストを繰り返し決行し、また5月末には全面ストライキも行なった聞く。

 

 

なおブエノスアイレス地下鉄は使用のCAF5000系に石綿がある事は知らなかったとコメント。

現在は石綿曝露防止の為CAF5000系車両を路線から回収されている。

 

しかしマドリードではCAF6000系の車両からも石綿は発見されており、同種に類似した車両が走るブエノスアイレスでも石綿曝露の不安が高まっている。

 

労働組合はマドリード地下鉄に対しCAF5000系車両

 

の石綿含有につき正確に調査を行なう事を請求すると共に製造元に詳細が記されてた書類の提出を求めている。また今後法的手段をとる事も検討していると言う。

 

 

さて輸出元であるマドリード地下鉄だが同公社では2003年段階で車両の一部に石綿が使用されている事を知ってたといわれている。2003年に国の労働安全衛生機関の要請により労災害防止サービスセンターが職場の安全につき調査をおこなったのだが、その調査書によると乗客車65台、保守車50台、及び64に地下鉄の駅にて石綿がある事が記載されあったと聞く。

 

このうちの36車両がブエノスアイレス地下鉄に譲渡されたのである。

 

これが事実であれば、「国による他国市民の健康や環境をおびやかす犯罪行為」であり、重大な法律違反になる。

 

現在、両国で譲渡にあたり、怠慢や手抜かりはなかったのか?それこそ、どういう経緯で石綿含有の車両が譲渡される事になったのか?また販売書類は何時、何処で誰によって作成されたのか?おおくの疑問を可決すべく、販売書類等の再調査がおこなわれている。