ドイツ・環境・自然

環境の国って言われるドイツだけど、色々とジレンマがあるみたい。環境・自然を中心に日常の事書いています。

ドイツ:昆虫の減少について思う事

こ40年の間に昆虫を含む無脊椎動物の数が45%削減したいう論文を何処かで読んだ。

 

普段は車を運転しないので気には止めなかったが、指摘されればまったくその通りで、以前の様にフロントガラスが虫でいっぱいになる事がない。

3年前の夏、2度も蜂に刺されたのに、今年はベランダに植えてあるラベンダーやミントの花を訪れた気配があまりない。

 

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ここドイツでも最新の研究データーによると有翅亜綱(ユウシアコウ※主に羽を持ち飛ぶ事ができる昆虫)に属する昆虫が過去27年間の間に75%減少したっと先月のメディア(10月18日)が報じていた。自然保護区内63箇所で採取トラップを用い、トラップにかかった昆虫を量として測定調査を長期に渡りおこなってきた。その結果、昆虫の活動が活発な夏期で最大約82%の減少がみられたという。なおこのデーターを収集したのはデュッセルドルフから東南20キロに位置するクレーフェルトという街にある昆虫愛好会(Entomologischer Verein Krefeld)で、会の創立は1905年という。メンバーには現職の生物学者を始めとする専門家から昆虫を愛でる市民まで多様である。

 

自然保護区内でこのように多くの昆虫が姿を消している事にまったく驚きである。

 

昆虫の減少というのはここ数年ずっと懸念されているテーマである。減少のはっきりし原因は特定されていない、様々な事情が絡み合っている事だろう。気候環境の変化、生息域の破壊、単一作物栽培での多様性の損失、普遍的な農薬や化学肥料の使用など

 

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生態系とは相互に関連する複数の要因が重なり合って作られている。一つの要素にダメージがあると補正システムが働き、生態系が回復される。しかし近年、生態系を作る複数の要素にダメージや変化があり、生態系の回復能力及び回復速度が追いつかないのではないだろうか?

 

そんな事を考えてから約一週間。

 

今度は除草剤「グリホサート」に関してのニュースを聞いた。発がん性の疑いがあるモンサント社の除草剤グリホサート。2017年末に暫定的使用の認可が切れるため、欧州委員会がそれまでにグリホサートの使用に関し最終結論を出す意向である。それに伴い欧州化学品庁(ECHA)が発がん性について再調査を行なっている。再認可された場合、グリホサートの使用が今後10年間許可される。

 

しかし先月中旬、欧州議会はグリホサートの使用を2022年12月までに禁止する決議を採択した。それに対し欧州委員会はグリホサートの使用有効期限を最長で7年間に短縮する案を提案した。まだ決着がついていない。

 

ドイツでは収穫直前でのグリホサートの使用は禁止だと聞く。しかし年間使用量は5000トン。ドイツ国内の農地の40%以上でグリホサートは使用されている。また冬小麦や他の冬穀類の畑だけをみた場合では全体の70%でグリホサートが使用されていると言う。これはグリホサートの効果が大きく、また価格も安いからである。農家にとっては大変助かる商品である。もしこの除草剤が禁止になった場合、農家は生産率を維持する為に更なる労働力や機械が必要になってくる。その結果農作物を収穫するまでの費用が11%程高くなるという (Universität Gießener )。またプラウなどと言った耕作機械を常用する事で土壌への負荷が高まり、また弊害が生じる事も重々考えられる。

 

農作物の生産コストの増加は販売価格の値上がりにつながり、国民の生活に支障が出ることも懸念される。しかしドイツでは年間約1100万トンの食料品が廃棄されており、家庭から廃棄される量だけでも約670万トンだと言う(Universität Stuttgart)。そんな事を思うと食料品の値上がりで、消費者が節約志向になっても良いのではないかと考えてしまう。

 

また別の専門家は販売価格の高騰だけではなく、外国産農作物の市場での割合が増えるだろうと予測している。(Fraunhofer Institut

 

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グリホサートが安全なものであれば、農家も消費者も助かる。しかし現在はその安全性が疑問視されている。疑問を無視したまま使用を許可した場合、「第二のアスベスト」になる可能性もある。

しかし何においてもやはり一番困るのは農家なのではないだろうか?生産コストの増加、消費者の節約志向、安い外国産農作物の流通、また花粉を媒介する昆虫や害虫を食べる昆虫といった有益な働き手を失う事が懸念される。

 

ソース:Entomologische Verein Krefeld、PLOS ONE、Zeit OnlineSpiegel OnlineUniversität Stuttgart、 Universität GießenerFraunhofer Institut