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ドイツ・環境・自然

環境の国って言われるドイツだけど、色々とジレンマがあるみたい。環境・自然を中心に日常の事書いています。

ドイツ・環境・「マイクロプラスチック」

Microplastic マイクロプラスチック

 

小さなミクロのプラスチック破片が魚の稚魚の成長を脅かしている。この様な環境で育つ魚の稚魚は遊泳に関しても些か活発ではなく、また自然界の天敵の出す、化学物質への反応も鈍い。

このような事が他の種の魚の稚魚でも起こりうるなら、ミクロサイズのプラスチックによる生態系への悪影響は当然危惧されるべきであると言うコメントが雑誌サイエンスに掲載されていた。

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世界的に見て、毎年300万トンのプラスチックが生産されている。その多くが自然界に流出し、最終的に河川・湖・海洋環境に流出する。プラスチックの問題点の一つは、分解されにまでに時間が掛かる事である。波による侵食、紫外線による光化学反応でプラスチックは壊れ、砕け、削れ、更に細かい粒子になり環境に累積する。

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マイクロプラスチックとは通常5mm以下のプラスチックを言う。小さいものでは化粧品や歯磨き粉に含まれる粒子、また工業用・産業用研磨材などに利用されるものなど様々マイクロプラスチックがある。ポリ塩化ビニル、ポリスチレン・ポリウレタン、難燃剤、柔軟剤などが主なマイクロプラスチックである。

専門家は数年前より環境への影響を懸念しているが、個々の動物種への影響、環境全体への影響など調査が始まり、日が浅く、まだ大規模なデーターがそろっていない。

 

スウェーデン、ウップサラ大学の研究グループは大変興味深い論文を発表していた。3つ水槽で、魚の稚魚をふ化させ、飼育した。その際に個々の水槽は以下の条件になっている。

・水槽1・コントロール(マイクロプラスチックは無)

・水槽2・発泡スチロールの破片 1万個/1m3

・水槽3・発泡スチロールの破片 8万個/1m3(これはスウェーデンや他の国の沿岸近辺で確認されてマイクロプラスチックの濃度と等しい)

 

さてまずは卵からのふ化率だが水槽1(マイクロプラスチック・無)は96%。逆に水槽3(マイクロプラスチック・8万個/1m3 )は81%と言う結果がでている。

またふ化10日の稚魚では、個体の運動能力に違いが見られ、マイクロプラスチック入りの水槽の稚魚は泳ぎが鈍く、また移動距離の短さが顕著であると言う。

 

また自然界の天敵が出す「ニオイ」を水槽に入れてみたところ、マイクロプラスチック入りの水槽の稚魚では反応も鈍く、実際に天敵種である大型の肉食魚を水槽に入れてところ、24時間以内にすべての稚魚が捕食されてしまった。なお同実験で水槽1の生存率は46%だった。

 

驚くべき事に、マイクロプラスチック入りの水槽の稚魚では餌の好みが通常の稚魚と異なり、マイクロプラスチックを通常の餌より好んで食べるようになった。動作も鈍く、通常の餌よりも身近にあるマイクロプラスを食す様子は、ファーストフードを好んで食し、体を動かさないカウチポテト族の様だと研究者は言う。なおその為、体長も通常の稚魚に比べて小さかったという。

 

近年、北海ではヘヒト(英語はパイク)とバーシュ(英語パーチ)が減っている。また逆にマイクロプラスチックは増えている。と言う研究結果もあり、どうも実験室内での様な事が自然界でも起きているのではないかと懸念されている。また今後様々な生物種における世代を超えてのマイクロプラスチック影響、また生態系や多様性への影響なども調査をすすめていく必要がある。

 

なおこの研究結果につき「今後マイクロプラスチックによる環境汚染・環境負担を理解するべきよき手がかりになるのではないか」と他の研究者も期待する。

 

2014年にドナウ川でのマイクロプラスチックの調査結果がある。これによると稚魚よりマイクロプラスチックの方が多い調査箇所が点在した。オーストリア・ウィーン大学の研究グループによると、1000m3につき稚魚・推定275匹のに対しマイクロプラスチック・317個のが存在すると言う。

 

これらのマイクロプラスチックはすべてプラスチック製品に由来する。直接排水から河川へ流れ出るもの、ゴミ集積場から河川や海に流れ込むもの、また人が投げ捨てたプラスチック製品が砕け、削られ細かくなったものなど汚染元は様々だ。

これらは様々な水性生物の体内で蓄積される。ゴカイ・ウミウシ・貝類、又これらのプランクトン状の幼生など、魚の稚魚だけではない。また食物連鎖ではそのつど、蓄積が増えてくる。例えばある種の魚は自分で直接食したマイクロプラスチック、また餌になる生物が食したマイクロプラスチックの両方を体内に蓄積する事になる。またこれらのマイクロプラスチックは食物連鎖の流れにのり、最終的には我々の生活圏に戻ってくる。

 

ちなみにマイクロプラスチックの細片化が進みナノレベルの粒子になった場合、動植物の細胞内への侵入も考えられる。どの様な悪影響があるか懸念される。

 

1950年代にはまだ年間100万トンのプラスチック生産だったが現在はその100倍である。

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ヘヒト: カワカマスと言う別名がある。アリゲーターのような巨大な口と鋭い歯、及びカマスの様な長い体が特徴。ほぼ何でも食べる肉食魚。なお日本だと生態系に被害を及ぼす特定外来生物。私的に言えばどんどん釣り上げてから揚げにしてしまえば良いと思う。

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バーシュ: ヨーロッパではポピュラーな魚でスズキの仲間。特にドイツでは食用漁獲対象魚。写真だとブラックバスを小さくした様な感じ。なおこれも特定外来生物。