ドイツ・環境・核のゴミの話
Atommüll(核のゴミ)の最終処分場についての報告書が廃棄物最終処分地検討委員会より先日7月5日ドイツ連邦政府に提出された。
ドイツは脱原発撤廃を掲げているが、原発からの廃棄物の処理が今後大きな課題となる。この課題に取る組むべき、2013年7月に制定された「放射性廃棄物最終処分場の選定」に関する法律に基づき、翌年4月に廃棄物最終処分地検討委員会が発足した。
この委員会は研究者や連邦議会議員、州政府、経済界、労働組合、環境団体、宗教団体などの代表33名から構成されており、当初、報告書の提出期限は2015年末の予定だったが委員会設置作業が難航した為、期限を延長しての提出になったと聞く。しかし同委員会の構成メンバーからも推測できるように多様な視点からの報告書となった。
ドイツは以前よりニーダーザクセン州のゴアレーベンが政治的背景を受け、80年代より放射性廃棄物の最終処分場とし候補に挙がっていた。しかし市民の反対運動と、「反原発」を掲げる緑の党が参加する政権下でゴアレーベンに最終処分施設を建設をする計画が白紙に戻されたという経緯がある。その様な背景を受け、「政治的な視点を抜きにした、科学的な根拠に基づく放射性廃棄物の最終的な貯蔵施設を建設する為の候補地の選定」が2年の月日を掛けてドイツ国内で行なわれた。
今回の約700ページに及ぶ報告書では最終処分場の地質的条件や「公平な選定」を行なうべき手法に付いての案が明記されているものの、具体的な候補地名は挙げられていないと聞く。
しかしな最終処分場の最終選定と言うのは脱原発を計画するドイツの重要課題である。「我々の世代にも多くの反原発支持者がいたものの、結果とし現状の環境・社会負荷を生じさせてしまった。核のゴミを処理する事は我々の義務であり、責任である。」とシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州環境担当相ハーベック氏は語る。
なお選定の手法については始めに政治的背景を抜きにした「白い地図」が編集されると言う。これは地質学的基準、すなわち「地下300mより深いところにある、岩塩、泥岩、花崗岩の層」が必要条件となる。
また具体的な候補地の選定は市民参加型で進められると聞く。つまり放射性廃棄物最終処分施設の建設とは市民・国民すべての問題及び課題であり、故に専門家からなる検討委員会のみではなく、市民・国民が一緒になり問題解決に向け尽力するべきだと言う方針である。
ちなみにこの「白い地図」の編集にあたり、以前から大規模な反対運動が起こっているゴアレーベンも例外視されない。つまり地質などの科学的条件が当てはまれば、核のゴミの最終処分場の候補地になりうるわけである。
しかしニーダーザクセン州、ウェンゼル環境相はゴアレーベンの岩塩層は地下水の浸入などがあり、放射性廃棄物の最終処分場としては不適切であると発表している。
ドイツ環境自然保護連盟(BUND)ブルンスマイヤー氏も「ゴアレーベン計画は当時の政治的背景に基づき進めれられ物であるため、ひとまず候補地から外すべきだ」との言う。
また今回ゼクセン州、バイエルン州は「花崗岩層は核のゴミの長期貯蔵に不適切」だと言う意見を提出し、そのにより、同州が選定候補地に挙がらないようにする動きがある。ちなみにバイエルン州なのだが、同州はバーデン・ビュルテンベルク州と並び最も原発が多い州であり、原発に因る恩恵も大きかったと推測できる。
なお報告書に拠ると候補地の選定を2031年までに終え2050年より放射性廃棄物の搬入されて予定であるという言うが、候補地の最終決定までに更なる調査が必要である。また市民・国民の理解をどの様に得るかと言った課題も残っており、まだまだ多事多難である。
ちなみに報告書はドイツ連邦議会のHPhttp://www.bundestag.de/endlager/で見る事ができます