ドイツ・環境・アスベストの話
環境の国ドイツ。
今日のジレンマはアスベスト。
子供の頃に石綿除去で学校が休校になった事を思い出した。
そう、この石の綿がアスベストである。天然に産する繊維状の鉱物で髪の毛の5000分の1の細さだと言われる。この繊維の問題点は空気と一緒に吸い込んだ際、肺の組織に刺さり、その事により発がん性が非常に高くなる事である。
ドイツでは1993年に新規使用が規制されたが、それまでに使用されている分に関しては、石綿繊維の飛散の危険が低い場合には即時除去の義務はない。故に欧州議会が「2028年までにアスベストの完全な根絶」という行動計画を決議しても、現在までドイツでは具体的な石綿除去のプランが立っていないのが現状である。
そんな中で吉報をひとつ。
ヨーロッパの中央に位置する産業の拠点ハノーファー。世界最大の産業見本市の開催地でもあり、工業都市しての歴史は長い。その中に存在するリンデン地区なのだが、創立900年の歴史を持ち、19世紀に工業都市とし飛躍的に発達した。
当時産業発展の欠かせないのが水と蒸気であり、蒸気機関の発達により、従来の原動力(人力・牛馬・水車など)より、更に大きな動力を得る事が可能になった。
Christian A. Schröder氏がWikimedia commonsで公開
その当時の歴史を語る最後の蒸気機関施設(kesselhaus linden)がリンデン地区に文化保護遺産とし残されている。
1927年に建てられ37年まで使用されていた。しかしその建物にはアスベストが使用されていた。当時防熱、防火効果があるアスベストは工場に適した素晴らしい素材だった思われ、多様に使用されていた。
この蒸気機関の建築物、その後文化保護遺産して残されていたものの、アスベストによる汚染の為、内部の見学は一切禁止。また建物の老朽化にともなりアスベスト繊維の飛散の危険だけではなく、建物自体の存続も懸念されるようになり、結果修築の必要が生じた。
しかしアスベスト除去作業を含む基礎修築費は大よそ 250,000 Euro、日本円で約2850万。その費用をどの様に工面すべきかが大きな課題となり討議された。
幸いにも文化財保護の為の助成金の対象となり国から半額の 125,000 Euro、日本円で1425万円の補助が決まった。また市民や民間団体からの寄付を募り、現時点の寄付合計額は64,000 Euro。約720万円。流石、環境や文化遺産を愛するドイツの国民性を垣間見る事が出来る。しかしまだ61,000 Euroが不足していると言う。なので自分もまったく恥ずかしい金額なのだが寄付させてもらった。ちなみに除去されてアスベストの量はハトの糞と混ぜ7,000kgから10,000kgだと言う。
修復工事が予定通りに終われば今年9月11日より一般に公開される。