ドイツ・環境・自然

環境の国って言われるドイツだけど、色々とジレンマがあるみたい。環境・自然を中心に日常の事書いています。

新容器包装廃棄物法

一部の大都市でディーゼル車乗り入れ禁止が施行される2019年1月1日。

 

実は同じ日より「新容器包装廃棄物法(Verpackungsgesetz)」も施行されるここドイツ。

今までは条令として容器包装廃棄物の回収、リサイクルに取り組んでいたドイツだが、これが強化・改正され、法律として効力を発揮する事となって。これにより「ゴミ」のリサイクル率の増加をめざす事になる。

 

下記の図で2019年以降のリサイクル目標率を示す。なお2022年以降の目標も公に発表されているが、今回は省略する。

 

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この図よりプラスチックのリサイクル率が低いのが見うけられる。今回、施行されるこの新容器包装廃棄物法でプラスチックのリサイクル率が少しでも高くなれば良い。

 

さて対象になるのは一般個人が最終消費者として商品を買った際に使用されている包装材、通常販売容器と言われる物である。食料品や衣類、化粧品や医療品の袋や箱、オンラインショッピングで使用されるダンボールの箱やプラスチックの緩衝材(例えばビニールのプチプチ)、液体洗剤の容器、歯磨きのチューブやマヨネーズの容器など多種多様な販売容器が流通している。販売容器を簡単に言えば直接商品に接している容器や包装材の事で、消費者が商品を買った後、ゴミとして廃棄される物と説明できる。この最終的にゴミとして捨てられるプラスチックの容器や包装材を効率良く集め、再資源化する事が求められる。

 

加えて一般個人が購入しない場合でも家庭と同じようなゴミがでる場合、例えば学校や行政機関、病院や会社やホテルなので購入した商品に使用されていた包装材などもリサイクルの対象になる。

 

さて自分を含め一般消費者にとっては変化はなく、今まで通り、ゴミの仕分けをし、色分けをしたコンテナに廃棄する。

 

しかし包装材を使用する側、この場合包装材を使用し流通に流す事業者、通常「中身メーカー」と呼ばれる、販売容器の「中身」、例えばポテトチップスやヨーグルトやプリン、シャンプーやリンス、ペンキや逸れこそ袋に入っている釘や花壇の土、キャットフードやドックフードなど多種多様の中身を生産しているメーカーにはいくつかの新しい決まりが適応される。

 

現在まで多くのメーカーではグリューネ・プンクト(グリーン・ドット)マーク、もしくはそれに順ずるマークを製品につけ、そのマークがある包装材は回収されるようにシステム化されてきた。

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しかし今度の法律化にともなって中身メーカーは年間の使用し、流通にまわる包装材の推定量を新たに組織化されて中央包装登録局(Zentrale Stelle Verpackungsregister)の包装登録データベースに包装材の種類と素材と共に登録する義務が生じる事になった。なお登録料は無料である。また登録されたデーターは公開されるので、一般消費者でもメーカーが正しくリサイクルに貢献しているのか見る事ができる。

 

また同時に中身メーカーは流通させた包装材を回収する義務がある。現在までもグリューネ・プンクトマーク、もしくはそれに順ずるマークの付いた包装材に関しては回収し、分別し、そして資源と再び加工され使用されてきており、中身メーカーが費用を捻出している。(私的にいえば中身メーカーはこの費用も入れて製品価格を決めていると思うで、よって製品を購入する消費者も費用の一部を負担している言う事ができると思うが・・・)。

 

今回の法律化によって回収が強化される。実質的には中身メーカーは包装登録データベースLUCIDに登録した包装材をリサイクル業者に依頼し回収をしてもらう。なおその際には中身メーカーはリサイクル業者と回収契約を結び契約金を払う事になる。

 

上記は中身メーカーを中心に書いたが、オンラインショップも多様な包装材を使用するという事で、同様の登録義務および回収の義務が生じる。今まではオンラインショップで何か購入すると箱だけ必要以上に大きく、中には緩衝材がぎっしり・・・という事も多くあった。これが改善される事だと期待する。

 

法律化する事でデーターベースに未登録であったり、リサイクル業者と契約をしていな場合など法律違反となり最大20万ユーロの罰金が科される可能性があるとも聞く。

 

あとついでなのでサービス容器についても少し記載する。

 

サービス容器とは主に外食産業で使用される使い捨ての紙・プラスチックのコップやその蓋、ピザのデリバリー配達の箱、ケーキ屋さんのケーキの箱やパン屋さんに紙袋。また対面式で肉や魚、チーズを購入する際に使用される包装紙、スーパーにあるサラダやお惣菜の容器などがサービス容器である。これらもしっかり回収されるべきである。

これらのサービス容器では包装素材や容器を製造したメーカーに登録義務が生じる共に、包装廃棄物の再利用可に積極的に参加してもらう事になりそうだと聞く。

 

近年使い捨て容器はドイツ国内でも大量に使用され廃棄されており、社会問題である。大手のコーヒーショップなどでは自分のカップを持参する人に割引をしたり、デジポッット性のカップを導入したりと色々と挑戦しているようだが、浸透していない。

 

そんな中2018年12月末のニュースだがテュービンゲン(シュトゥットガルトのちょっと南)では使い捨て容器に対し課税する方針を打ち出したと聞く。ニュースによると2020年からこの課税システムを導入する予定だと言う。これによりドイツ国内で初めて使い捨て容器が課税される事となる。

 

ソース

https://www.bmu.de/pressemitteilung/neues-verpackungsgesetz-staerkt-recycling-und-mehrweg/

https://www.tagblatt.de/Nachrichten/Es-ging-um-den-Wurstsalat-398065.html

胡桃を割ってみた

たまには自分ネタ・・・。

 

何事も自分で動かないと、何もおこらないドイツ。今年前半に歯医者の治療がひとまず終わったので、今回始めて通いつけの医院(ホームドクター)で健康チェックをしてもらった。その結果コレストロール値が少し高めとの事。

 

40過ぎればエストロゲンも減ってくるから、それが関係しているかも知れないが、まぁ改善できるのあれば何とかするに越した事はない。

 

そう言えば胡桃にコレステロール値を下げ効果があるらしいっと言うことを以前どこかで読んだなぁ・・・と自宅で胡桃の籠を眺めながら思った。

 

今年の異常な気候ためか胡桃が例年以上によく取れた。

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胡桃を割るためにクルミ割り人形氏にご活躍いただこうかとと思ったのだが、彼の歯の健康を懸念し断念。よって「おばあちゃんの知恵」ではないが普通にナイフで胡桃を割る事にした。

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そんな事をドイツ人友人に話した所、「ナイフで胡桃がわれるのぉ??」と質問されてしまった為、急遽ブログを書いている。まぁ知っている人は知っている簡単な方法ですが・・・。

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どうするかと言うと胡桃の下の部分(胡桃のおしり??尖がっていない方)にナイフの先を数ミリ差し込み、殻が開くように少しナイフを回転させる。すると面白いように殻を開く事ができる。(ドライバーでも先の平らな爪やすりでもOK

 

 

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更に殻から実をはずす時は赤い矢印のところにもう一度ナイフを差し込み「てこの原理」で取りだす。ナイフにもう少し力を入れて殻を割っても良い。

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暇に任せにやり始めると、空気のはいったあの「プチプチ」をつぶしていく作業に通じるものがあるっと勝手なことを思ってしまう。











 

ドイツ人の環境政策に関する意識調査

やっとやっとやっとの更新。書きかけの文章はいくつかあるのだが、長くほっと置くと新鮮がなくなってしまう。でも今回は3,4日前のニュースから・・・。

 

先週のパリでの大暴動。政府の政策や社会問題に不平・不満を抱いている多くの市民が「燃料税引き上げ」をきっかけに、大型デモをおこなった。それがエスカレートし大暴動へ。その結果増税はひとまず延期されることになった。環境対策は大切な事だが、弱者にシワ寄せが行く形では問題だろう。

 

そんな事を思いつつニュースを見ていたら、今月頭に行なわれたアンケート調査の結果が放送されていた。その一部でドイツ人の環境政策への満足度をあらわすようなアンケート調査の結果があった。ニュースが終わってからオンラインでニュースの再放送とアンケートのソースを探し出し目を通した。

 

さてこの調査でドイツの気象環境保護・温暖化防止において重要で意味のある対策・政策について1000人以上から意見をきいたという。なお各質問に対し「はい」「いいえ」で答えるものであった。

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はじめに再生可能エネルギーの施設の増設は重要な環境対策・政策であるか?いう質問に対し全体の92%が「はい」と回答している。

 

次に産業・工業などの分野で環境汚染を防止すべく、対策を強化する事が重要であるか?と言う問いに「はい」と答えた人も90%と高い数字である。

 

また「ハムバッハの森」でメディアを騒がしている石炭発電からの迅速な撤退が環境を守る上で重要な政策であるとした人も半数を上回り69%である。

 

加えて飛行機による環境破壊をへらすべく、飛行機の運賃を値上げする事が有意義な政策であると答えた人も62%である。

 

また約半数である53%の人がディーセル車やガソリン車から電気自動車への変換が重要であると答えている。

 

ただし、流石車社会のドイツ。ディーセル車やガソリン車の購入費や維持費、また燃料費を高額にすることが環境保護に一役買ってでるっと考えている人は全体の27%である。多くのドイツ人は自動車の燃料費や自動車税が高くなることに反対であるという。

 

また私生活の中で自分の行動に変化があったかどうかと言う質問では約半数が自動車を使用する際にエコを気にするようになったという。ただしまだ半数は「変化なし」と答えている。

 

 

脱石炭と石炭委員会

ディーゼル車乗り入れ禁止ハンブルクで試行され、シュトゥットガルト、アーヘン、フランクフルト、ベルリン、マインツと次々にディーゼル車の乗り入れ禁止が広がっている。事の発端はディーゼル車からの排出ガスに含まれる窒素化合物の濃度が基準値を長年上まっていた事にある。

 

重たい腰をあげやっと(苦肉の)対策案を今月冒頭に発表した矢先、今度は欧州理事会で車両から排出される二酸化炭素(CO2)の量を2030年までに2021年に比べて35%削減する目標が発表された。ドイツは30%削減を求めていたが、多くの国が40%以上の削減を求めた為、その中間値で合意にいたった。

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色々と解決すべき課題が多いドイツである。

 

さて今日10月25日、現在、石炭委員会の会議が行なわれている。この会議の主要テーマはCO2による気候変動対策と雇用問題である。

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気候変動に関して言えば豪雨や日照りなど、これほど顕著に現れた年はまれであるだろう。また現在でも日照りの弊害が残っており、ダムの貯水量が回復するどころが、一部では更に貯水量が減少していると聞く。ドイツの産業地帯を結ぶライン川でも水量が減少し、大型タンカーや貨物船は重量を半減し、川を行き来している。これによりガソリンの供給が心配されだしており、また生産業等では輸送貨物の遅れが懸念されて始めている。

 

車社会や工業や生産業、また食に関する農業や畜産業、これらは気象環境が許すから成り立つのであろう。気候変動が更に加速すれば、それだけ弊害も大きくなるだろう。よって一番大事なのは気候変動を抑える事であると私自身は考えている。

 

そんな事を思うと「脱石炭」は一日でも早く実現させる必要がある。

 

 

しかし現在鉱山で働く人々や鉱山地域と密接に関係して事業を行なっている人にとっては炭鉱の閉鎖は死活問題である。昨日もRWE社員を中心に2,3000人が集まり安定した雇用、安定した生活を求めデモをおこなった。

 

鉱山で生活をしている人々の気持ちも理解できる。

 

しかし環境保護派の人々に槍を向けるのは違うのではないだろか?「脱石炭」は遅かれ、早かれやってくる。しかし地域の自治体、州政府や国政府、また雇用者であるRWEは今まで鉱山で生活をしている人々の雇用問題や死活問題につき、進んで対応策を検討してこなかったようにみとれる。

 

ドイツでは現職での就労が困難な場合や他の職業へ転職したい場合、職業転換/再教育訓練(Umschulung)を受ける事が日本より盛んである。そのために助成金を申請する事もできる(ただし申請を却下される事も多いが・・・)。また雇用者側が積極的にキャリアアップの一貫として、向上職業訓練(Fortbildung)を提供している場合も多い。このようなシステムが整備されている社会なのに、そのシステムを積極的に活用してこなかった会社や社員の姿勢も気になる

 

何にせよ、今日は朝からラジオでこの石炭委員会会議について語られている。この会議の中心になるのは上記にあるようにやはり鉱山で生活をしている人々の雇用や生活であり、これらの鉱山地方の再構造化である。

 

アイデアとしてあるのは「脱石炭」後に政府機関や研究機関などの転地、今後増えるであろう電気自動車やバッテリーなどの生産業の転移、また現存する施設を再利用し再生可能エネルギーで作られたエネルギーの蓄電施設やより効果的な蓄電システムの研究開発施設へのリニューアル、また広大な土地があるのでアグリビジネスやアグロインダストリーへの誘致などが挙げられている。

 

会議の結果については早ければ今日の夜のニュース、遅くとも明日のニュースで報道されるだろい。なおこの委員会は多彩なメンバーで構成されている。何らかの合意にいたるだけでもなかなか難しいだろう自分は思っている

 

ソース WDR5

 

子供の中皮腫の話

イギリスの9月のニュースで14歳の少女が中皮腫を病んでいるという記事を読んだ。

 

通常、中皮腫の主な発生場所は胸膜で、その原因の一つにアスベスト繊維がある。これが肺組織に刺さる事が疾病の原因だと言われている。なお発病するまでに長い歳月がかかり、石綿曝露から30-40年経ってから発病するケースが多い。但し潜伏期間15年未満で発病してケースもあると聞く

 

しかし子供の中皮腫というのは極めて稀である。更に驚くべき事に彼女のケースは腹膜に腫瘍ができた腹膜中皮腫であるという。腹膜にできる中皮腫は胸膜の中皮腫よりさらに稀であり、割合を見るとおおよそ腹膜:胸膜=2,5:7である

また現在イギリス国内で腹膜中皮腫を患っている子供の数が9人、世界規模でも20人ほどだと言われている

 

さてこの少女の名前はメイシーちゃん。今年3月に中皮腫がみつかった。現在までに4回もの化学療法が実施されているが、なかなか良い結果が現れず、今年8月に入り手術による患部の摘出も検討されたが、検査の結果手術は適さないという事で実施にいたらなかった。

 

現在は治験を兼ねての薬剤療法に希望を託しているという。

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しかし実際どうして14歳の少女がアスベスト由来の癌になったのか?担当医を含め家族や関係者は頭を悩ませている。

 

中皮腫の発生率は60歳代、70歳代が多い。また胸膜に発病する割合の方が圧倒的に多い。

しかし論文等を検索すると腹膜中皮腫の場合でも、石綿曝露の関与が示唆されている。よって腹膜中皮腫の原因の一つもアスベストだと言って良いだろう。

 

しかし小児若年成人では聊か事情が異なるようである。

 

まず中皮腫全体で見ても小児・若年成人の中皮腫患者は世界規模でも300例ほどであると聞く。またこれらの若い患者の場合、生活史のなかでアスベストとの接触や曝露経験がはっきりしない事が大半である。よってアスベスト曝露歴を確認する事は極めて難しいのが現状である

 

簡単にアスベストとの接触・曝露の可能性を挙げ見ると

・・1)アスベストに接触・曝露した大人がその粉塵を自    宅に持ち帰った場合の家庭内曝露 

・・2)学校にあるアスベスト建材からの粉塵との接触・    曝露(もちろん自宅にあるアスベスト含有健         材からの可能性もある)

・・3)環境曝露(空気中や土壌中にあるアスベスト繊維    との接触・曝露

・・4)アスベスト含有の雑貨との接触、曝露(チョー     ク、クレヨン、粘土など)

※今年の春先に子供用のキラキラメイクや化粧品にアスベストが混じっており、店頭に並んでいる一部の子供用化粧品を下げるよる欧州加盟国内で緊急指令が流れたのは記憶に新しい。

 

などがある。家庭内曝露や学校曝露、また雑貨や玩具が汚染源になっている場合には家族や他の児童にも被害が生じる可能性は十分にある。また環境曝露の場合もまったくの偶然も考えられるし、何らかの汚染源が近隣に有り、今後、患者が増える可能性もある。

 

しかし通常は中皮腫の発病までに数十年かかる為、年齢が低い子供の中皮腫では家庭曝露、環境曝露はなかなか考えがたい。

だが子供時期に起こったアスベスト曝露で発ガンリスクは高まる事は十分考えられている。

 

また詳細がはっきりしない事のひとつに子供の中皮腫の根源がアスベストであるかどうかという点も挙げられている。いくつかの論文では放射線曝露、イソニアジド系の薬剤による副作用、また遺伝的な要因でも中皮腫になる可能性があるという。

 

下記に様々な考察簡単に紹介する

 

・・) 放射線曝露

 

いくつかの小児癌の研究では放射線曝露も中皮腫の原因になりうると言う報告がある。例えば幼少期に特定の癌に対する放射線治療を受けた場合など中皮腫リスクが高まる可能性があるという。また実際にこの放射線治療を幼少期に受けた子供の患者2名でその後、中皮腫が確認されているという。

(※この特定の癌というのは小児の腎臓に発生する悪性腫瘍でウィルムス腫瘍と呼ばれている。抗がん剤が比較的効きやすく腫瘍のステージにもよるが80%以上で治癒が期待できると聞く。)

 

・・) イソニアジド曝露

 

出生前のイソニアジドという薬剤曝露でも中皮腫になる可能性が無くはないとも聞く。動物実験では母体にイソニアジドを注射する事で、胎児で肺癌が確認されている。ただし人では現在1例のみ確認されているという。

(※この薬は主に結核に対して使用される。ちなみに結核は感染力が強く空気感染する病気で、世界規模でみるとまだまだ死者も多い。また発展途上国だけでなく先進国でも感染者は多く、東京都の感染症情報センターによると日本でも約2万人が毎年新たに報告されていると言う)

 

・・) 遺伝性による癌

 

またほかの要因として遺伝的な要素も考えられる。(遺伝性がんと言う。)これは子供の遺伝子に何らかの変異があり、それが原因となりうる事例である。2013年に発表されて論文だとBAP1と言う遺伝子に問題があると中皮腫などの癌の発生率が高まるという。またこの遺伝変化は親から子へも伝わるという。この遺伝変化により少量のアスベストやそれに似た物質、例えばエリオン沸石(※人に対する発癌性が認められている)やゼオライト(人に対する発癌性が分類できない)などにも過剰反応し癌を引き起こすのではないかと考察することもできる。

 

子供の中皮腫患者を調査したデーターがあるがそれによると80人の患者のうち、2名でのみ幼少時代でのアスベスト曝露があり、また他の2名においても他の危険因子による曝露があったと報告されている。しかし残りの76名に関しては原因不明だと言う

 

さらにネットサーフィン、論文検索をしてみたがやはり若年層(20代)での中皮腫患者では幼少時にアスベストと接点があった、またはあった可能性がある事例もいくつかあるが、10代の患者を含め多くの場合には原因不明であることの方が多いようである。

 

大人でも子供でも病んでいる人も見ると痛々しく辛い。しかし当人は更に辛い事だろう。彼ら達が、心穏やかに過ごせる時間が少しでも多く増える事を願ってやまない。

 

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ソース・文献 

) dailymail.co.uk

) asbestos com

) Mesothelioma in child with prenatal exposure to isoniazid

) Mesothelioma of childhood

 

ベルギー・アスベストの話 その2

アスベストがベルギーで禁止になったのは1998年で、イギリスと同年である。

 

さて私が頻繁に訪問するインターネットのホームページではアスベスト関連の各国ニュースが英語で簡潔紹介されている。このサイトで世界中のアスベスト関連の動きを垣間見る事ができる。そのサイトでベルギーのフランデレン地域のアスベスト関連のニュースが紹介されていた。興味があったので詳細を検索してみた。

 

まずフランデレン地域(フランドル地域、フランダース地域)だが、ベルギーの北半分の位置する。オランダ国境と接しており、主要言語もオランダ語である。なおベルギーの首都であるブリュッセルも地理的にみるとこのフランデレン地域の中にある。ブリュッセルには欧州連合や欧州委員会があり、アスベストに関しいつくかの指令をだしており、EU各国に対策を促している。

 

このフランデレン地域にはブリュッセルの国際機関と別にフランデレン政府が設けられている。

 

この地方政府は2014年にアスベスト排除促進プロジェクトを発進した。

ハイ・リスクなアスベスト含有建材を2040年までに排除する事を目標としており、2100万トンあると言われているアスベスト含有建材の除去・排除を建材の使用寿命が来る前に撤去する事をゴールにしている。

またアスベストという遺物を健全な環境のために排除するだけではなく、アスベスト除去後の建築物はリフォーム・リノベーションをおこない、再利用する計画をたてている。これにより持続可能な資源の利用を促進することになるという。

 

OVAM(フンデレン地域廃棄物公社)がこのプロジェクトを遂行する事となり、2015から2018年の第一段階では、下記の難題・課題の解決の糸口を見つけるため危険評価や現状把握、また資金面や社会にもたらす利益など様々な調査が行なわれ、プロジェクトの草案作りが進められた。

 

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難題・課題の一例

・・・ 石綿曝露による健康リスク

・・・アスベストセメント建材の除去費用の上昇

・・・建築廃棄物や風化・劣化した外壁や屋根からのアス

    ベスト繊維の飛散

・・・アスベスト除去後の建築物のリサイクル利用

 

実地した調査の一例

・・・風化、劣化した外壁や屋根からのアスベスト繊維の   飛散の調査

・・・アスベスト建材の処理と行方に関する調査

・・・アスベスト関連のネット・ワークやアスベスト排除   に関係しての市場とステークホルダーの調査

・・・プロジェクト実行にかかる費用や効果に関する調査

 

なお欧州議会は5年前に「職場におけるアスベストによる健康被害の危機と現存するアスベストの撲滅の展望」を決議しリリースしている。欧州議会の決議を守る為にもアスベスト対策は必要だとフランデレン政府は捉えているようである。

 

さて具体的な方針だが

・・・アスベスト含有建材使用の建築物の登録義務

・・・建築物のアスベスト除去の進行状態のモニタリング

・・・建築物の解体費用やリノベーション費用ための特別   共同融資システムの整備

・・・安全対策や廃棄物の処理に関する政策

・・・省エネ省(屋根上への太陽パネルの設置、外壁の断   熱対策など)とアスベスト除去の同時対策の推奨

・・・問題を抱えている建築物の所有者のサポート

などを挙げている。

 

なおアスベスト対策優先順位だが学校や病院、公共機関や政府機関の建築物、公営住宅・団地、また更には農村地にある倉庫なども積極的にアスベスト対策を行なっていくと言う。

 

ちなみに同地域では学校アスベスト調査もおこなっている。

2017年の調査では69校のうち20校でアスベスト含有建材が確認されたという。

近年問題になっているのはここでもアスベストセメントの建材である。学校の外壁や暖房の管などにアスベストセメントの製品が使われている事がまだまだい多い。風化・劣化がなければアスベストセメント建材からの繊維の飛散のリスクは低いが、現状では風化・劣化が進んでいるアスベストセメント建材も多くあるという。

 

なお日本の学校でも毎年アスベスト調査が行なわれいる。これは飛散度の高いL1建材(吹き付けアスベスト)とL2建材(円筒内の断熱材など)の調査だと聞く。石綿セメント建材の調査は非飛散性アスベストっと言うことで行なっていないようである。

しかし欧州の事例をみる限りでは、今後日本でも非飛散性アスベストといわれるものでも調査・対策が必要になってくるだろう。

 

さて話をベルギーにもどす。

 

同地域では今後出てくるであろう大きな課題とし、アスベスト含有建材の処理を挙げている。

 

現時点では飛散リスクの高い非結合性アスベストはセメントで固めた後、また飛散リスクがさほど高くない強結合性アスベストはそのまま、ラベルの貼られて廃棄袋で2重包装され、埋め立てられている。しかしこれは永久手的な処理対策ではない。

 

近年アスベストセメント建材のセメント部の風化・劣化が問題となりつつ背景もあり、セメントで固め、地中に埋められたアスベストであっても、何時、如何なる原因・理由で地上に再び現れるかもしれない。このような埋め立てではアスベストが無害化されるわけではなく、言うのであれば次の世代にアスベスト問題を先送りしたに過ぎない。

 

現在欧州の多くの国で廃棄物の最終処理の為の埋め立て地が不足しており、また現状する埋め立て地も規模が限られている。今後増加するアスベストのゴミをどの様に処理していくか大きな課題だといえる。

 

高温や化学薬品による無害化の研究はフランデレン地域でも進められている。しかし高温で融解させるのに必要な熱エネルギー、また化学薬品を使用する際に必要になってくる薬品量を計算すると小規模での無害化は可能だが、経済面、環境面、健康面、効率などをみた場合、まだまだ全国規模の大量なアスベストを無害化するほど効率のよい対策がうまれていな。

 

無害化対策に力を入れている日本の企業も多いと聞く。「我こそは!!」と思う企業がいたら、是非欧州でも活躍してほしい

 

文献

https://www.ovam.be/asbestos-safe-flanders-2040

http://www.brusselstimes.com/brussels/10594/danger-of-asbestos-in-flemish-schools

脱石炭への光、ハムバッハの森の伐採の差し止め

ここしばらくメディアを騒がしているハバッハの森 (Hambacher Forst)

 

本日ノルトラインヴェストファーレン州(NRW州)高等行政裁判所はRWE社に対し、森の伐採の差し止めを言い渡した。この背景にはドイツの環境団体BUND(ドイツ環境自然保護連盟)が裁判に訴えた事にある。

 

欧州には生息地指令なるものがあり、野生の動植物及びその生態系を保全する事を目的としている。各EU加盟国が保全の重要性のある地区のリストを作りEUに提出する。この候補地をもとに欧州委員会と加盟国が協議をおこない保全地域のリストを作る。

 

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ハムバッハの森は希少種のコウモリや樹齢何百年の樹木があり、生態系ネットワークを作り上げている。保全対象地域としての条件を十分に満たしている。

しかしNRW州はハムバッハの森を保全候補地のリストに掲載していないと言う。

 

このような背景のもとで環境団体BUNDはNRW州の鉱物資源庁(RWEに森の伐採、褐炭の採掘の許可を出している州の区官庁)を相手取ってハムバッハの森を保全候補地リストに掲載しなかった事について裁判に訴えたとの事らしい。

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NRW州としては州内の産業や経済の事を考え、また伐採や採掘の許可を出した手前、ハムバッハの森を保全対象地域として認めたくない、認めるわけにはいかなかったのではないか?と勝手な憶測を自分はしている。

 

ケルンにある一審では環境団体BUNDの主張は認められなかったがこれを不服とし高等行政裁判所に控訴したのである。高等行政裁判所は審理を第一審に差し戻し、また第一審が判決を言い渡すまでの間、森の伐採を差し止める判決をだしたのである。

 

第一審で再び判決がでるまで、数ヶ月から1年もしくは2年掛かると言わる

 

脱石炭をめざすドイツ。CO2の排出量を1990年比で40%削減と目標を掲げたのは2007年、11年前である。この時点で石炭発電の将来は無いのである。しかしRWEも州政府もこの11年間、脱石炭の為に何をしてきたのだろうか??脱石炭の為の準備をしてこなかったのだろうか?

再生エネルギー発電は毎年少しづつ増えているが、それでも改善すべき点もまだまだ多い。何故、この11年間で再生エネルギーでの電力安定供給を積極的に進歩させなかったのだろうか?

色々と思う所がある。

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ハムバッハの森同様、現在ドイツのメディアを騒がしいているのは古いディーゼル車対策である。

 

VWのディーゼル車が違法ソフトウェアを搭載し排気ガスの検査時の排出を減らしている事件が発覚してから既に2、3年経つのではないかだろうか?

また排気ガスからの有害物質もEUの基準を超えている事も明らかになり、大気汚染も明確でる

政府は昨日古いディーゼル車での市街地に乗り入れ禁止の危機回避のため排ガス対策を発表した。VW事件から3年も経ってからである。

 

ドイツは何らかの圧力がないとなかなか動かないのではないか・・・と思う事が私生活でもドイツの政策を見ても時折感じる。

 

ドイツの今日のニュースより