ドイツ・環境・自然

環境の国って言われるドイツだけど、色々とジレンマがあるみたい。環境・自然を中心に日常の事書いています。

ドイツ・環境・「バイエル社のモンサント社の買収」に思う事

週のニュースより。

 

色々と言われている除草剤グリホサートの製造元・アメリカの大手農薬メーカー・モンサントの買収が決まった。買収元はアスピリンで有名なドイツの大手医薬品メーカー・バイエル。買収提示総額は620億ドルだと言われていたが、モンサントが金額に不満を示していた。

しかし昨日660億ドル(67800億円)にてモンサント社と最終合意にいたり、買収が決まった。

 

 

農薬の大手企業には色々あるがやはり市場シェア率が一番高いのはシンジェンタである。あるデーターによると1位シンジェンタ(スイス・23.1%)、2位バイエル(独・17.1%)、3位BASF(独12.3%)(ETC Group, 2013 – 11“ Putting the Cartel before the Horse...and Fram, seeds, Soil, Peasants, etc.

 

また種苗市場においては欧州議会発行の調査書によると1位モンサント(アメリカ・21.8%)、2位デュポン(アメリカ・15,5)、3位シンジェンタ(スイス・7,1%)だと言う (CONCENTRATION OF MARKET POWER IN THE EU SEED MARK: The Greens, EFA in the European Parliament; 欧州議会)

 

しかし今回の買収によりバイエルーモンサント社グループによる種苗市場でのシェア率は30%までに拡大、また農薬部門においてのシェアは25%程になると予想され、世界シェアの1位シンジェンタを追い越す形になる。

http://www.spiegel.de/wirtschaft/unternehmen/bayer-chef-zu-monsanto-uebernahme-eine-aussergewoehnliche-moeglichkeit-a-1112434.html)、

 

ここ数年、農業化学分野での大手企業の合併や買収が目立つ。ダウ・ケミカルとデュポン、中国国有の中国化工集団とシンジェンタ。農業関連市場が再編されつつある。バイエル社も例外ではなかった。この波に乗り遅れてはならないっと言う気持ちもわかる。

 

しかしエコ・ビオ・オーガニック ブームのドイツ。市民の多くがエコ・ビオ商品の存在に賛成であり、またエコ・ビオ・オーガニック商品を通常購入しない人でも遺伝子組み換え商品には反対であると聞く。統計的にみても70%以上の市民が遺伝子組み換えに反対だと言う。

 

そんなドイツなのにバイエルが買収したのは悪名高いモンサント社である。

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モンサント社は化学薬品・農薬の会社であった。ベトナム戦争で使われた枯葉剤の製造元でもある。この枯葉剤の影響で奇形児出産率が高まり使用が禁止されている。また同戦争からの帰還兵の間でも健康被害が現れており、枯葉剤製造元(モンサント社)に対し集団訴訟が起されたと言う過去がある。(https://ja.wikipedia.org/wiki/枯葉剤)

 

現在は遺伝子組み換え(GM=genetically modified)をおこなった種子、またそれと一緒に強力な除草剤を販売している。この除草剤の効果は抜群で、害虫・雑草・益虫(蜜バチやミミズなどの役に立つ動物)を死滅させる(話によるとネズミなどの脊椎動物にも効果があるらしい)。しかしGMをおこなった植物は耐久性があり、毒性の強い除草剤にも係わらす成長する。個人的に「自然の理に反した怪しい植物」と言うイメージを持っている。進んで食べたいとは思わない。

 

また同社の事業方針も批判されてる。GMした種に特許を申請してあり、同社の種を使用しての、自家採種(植物を育てて種を取る事)は特許の侵害とし禁止している。またつい昔からの習慣で

同社の種を自家採種した農家は同社の持つ特殊なネットワークにより発見され、違約金を請求される。更に加えて同社は自社の種の権利を守る為、種に自家採種した場合、元気に育たないと言う特徴を組み込んでいる。

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聞くところに因るとドイツでは母乳や尿からこの除草剤に成分が検出されていると言う。ラットによるGM食物実験により発がん性も強く疑われている。同社の製品を買わないようにするデモも盛んである。しかしドイツ政府の対応は曖昧である。ドイツ国内でのGM種子の販売の不許可、GM植物の栽培・収穫の禁止などに向けと調整をする方向であるとは聞くが、発がん性の疑いがある同社の除草剤グリホサートの使用も学術データーがそろっていないと言う事で未だに禁止されていない(なお長期使用の許可も認定されていない)。

 

また健康被害への懸念だけではなく、特定の植物の栽培により動植物の多様性の減少が心配されている。特に昔からその地で栽培されてきた、在来種の栽培が抑制されたり、またGMとの交配なども心配される。

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ドイツではTTIPの反対も強い。TTIPとは環大西洋貿易投資パートナシップの事でアメリカとEUとの間の自由貿易協定の事を言う。ドイツ市民はこれによりGM農作物の流入を懸念している。

 

しかしこれにより欧州において毎年1200億ユーロ、アメリカでは950億ユーロの経済効果があるとされており(Raoul & Renaud 2014)、またモンサント社、バイエル社、共にTTPIの望んでいると聞く。この買収の裏にはTTIPとの何らかの関連性があるのかもしれない。

 

ドイツ・環境・「同時多発テロ事件がもたらしたモノ」

月11日

 

アメリカ同時多発テロ事件から15年。この無差別テロ事件の死亡者数は3千名以上になる。またこの事件での家族や友人を失った者、心理的なショックを受けた者、すべての犠牲者を数えると膨大な数字になる事は十分に予測できる。そして、これから健康被害による犠牲者も増えてくると懸念されている。

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当時ニューヨークタイムズ紙アスベストや水銀、その他の有害な化学物質が空中に飛散したと伝え、またWikipedia (ソース: Longitudinal Assessment of Spiromentry in the World Trade Center Medical Monitoring Program)によると、当時の作業員3千名のうち、28%(840名)で肺機能に病的異常が見られていると言う

 

ニュースウィーク誌に因ると世界貿易センタービル・ツインタワーの北棟だけでも当時4百トンのアスベストが使用されていた。この発ガン性の高い繊維がビルの崩壊と共にニューヨーク市の空中に飛散し、市民5千人以上がこの繊維を吸い込んだと想定されている。

 

青石綿(クロシドライト)は高層ビルや劇場大型体育館やホールなど火災予防の為に吹き付け剤として使用されていた。またアスベストの中でもとりわけ発ガン性が高いと言われている。世界貿易センタービルのツインタワーも例外ではなく、この青い石綿が大量に使用されていた。しかしビルの崩壊と共にアスベスト、また建築材などに含まれていた、水銀などが埃とし、地上に降り注いだのである

 

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青石綿(クロシドライト

 

アスベストによる疾病の発病までの潜在期間は、早くとも20年、通常30年から40年だと言われている。その為、今後石綿による肺がん患者の増加が懸念されると共に、疾病と同時多発テロ事件での健康被害の因果関係の証明する事も、今後重要な課題となってくる。

 

Mori et al. 2016 (American Journal of Industrial Medicine)によると同時多発テロ事件で出動した消防隊員では甲状腺がん、前立腺がんの割合が通常の消防隊員に比べ多くなっているらしいという。しかし一方、統計に基づく学術的な知見ははっきりしていないと聞く。自分の知る限りでは甲状腺がん、前立腺がんとアスベストの因果関係は現代医学では特定されていない。通常アスベストによる疾病は肺の異常や胸膜にできる腫瘍とし発病する事が多い。この同時多発テロでは種々の多環芳香族炭化水素(PAHs)も飛散されており、故にこれらの有害物が甲状腺がん、前立腺がんなどの原因の一部になったと考える事もできる。

 

同時多発テロ事件での石綿やその他の有害物質による健康被害が増えてくるのは潜在期間の長さの為に今後だと懸念されている。このテロ事件がもたらした犠牲者の数、引き起こした被害、そして将来おこりうるであろう健康被害、底知れない深さを思い知らされる。

 

ドイツ・ベルリンにアスベスト被害者の救済の為に力を注いでいるる弁護士さんがいる。彼は2001年の同時多発テロ事件の際にドイツ人犠牲者の為に尽力に努めた。その際に石綿による疾病の深刻さ、今後増えるであろうこのテロ事件による健康被害などと言う問題点に直面し、その後アスベスト問題に取り組むようになったと聞く。

 

 

 

 

 

ドイツ・環境・「アウトドア・ブランド」

Septemberに入り秋の兆しも見え始めたドイツ。秋の快晴の澄みわたるような空が青く、ハイキングやサイクリングなどのアウトドアなアクティビティーにはちょうど良い季節である。

今日はアウトドアに関連して、身近なアウトドアブランドを紹介する、といってもの自分も持ち物に関しのみだけど。

 

 

Jack Wolfskinジャックウルフスキン

オオカミの足跡がマークのジャックウルフスキン

ここドイツで一番メジャーなのではないだろうか?

雨が降っても傘をささないドイツ人。雨のふりそうな日や寒い日には子供から大人までここのマウンテンパーカーを着ている。品揃えは多く、靴や衣料品からアウトドア用品やテントまで、何でもあるといった感じである。質が良い分、多少値段もするが、それでもT-シャツ1枚3千円位などからあるので、手の出せない値段ではない。

自分も緑のマウンテンパーカーやリュックサックなど、愛用している物も多い。創立は1981年。最初のショップがオープンしたのは1993年。ちなみに自分が初めてここのリュックサックを通学用に買ったのは確か1997年。PCの持ち運びに、頑丈で且つ、四角い形で、またカバンとしても持ち運びできるように、持ち手とストラップが付いたものを購入。当時80マルクだった。下記、現在愛用している物の一部を紹介。なお写真は自分の所有と商品カタログから、ただ同じ製品なので出典を省略。 

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VAUDE (ファウデ)

動物のロゴではないのが可愛くないがサイクリング・自転車ファッションが充実している。自分もここのやサイクリングウェアやショーツ、パットの入ったインナーパンツを愛用。なお自転車ファッションの利点は乾きが早い事。また中・長距離を走るとサドルに乗る部分が痛くなってくるのでパットの入りインナーパンツは快適である。ウェアに関しては半そでで約45ユーロ(約5千円)くらいからある。ただ自分はこだわりが殆どないので、バーゲン品で十分、用が足りている。自転車ファッション以外には靴や衣料品もあり、またテントや寝袋、リュックなどデイ・キャンプだけではなく、本格的登山に利用できるものまでバリエーションは広い。

お値段の相場は私のサイクリングショーツで90ユーロ(1万円)と60ユーロ(6千800円)。

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Elkline (エルクライン)

創立1999年。まだ新しい会社であるが、確実に業績を伸ばしている。ヘラジカ君のロゴがドイツらしくない可愛いさを出している。主な製品は衣料品。子供用にはロゴのヘラジカがプリントされているT-シャツや遠足用リュックなど大分前からあったのだが、ここ最近大人向けのヘラジカプリントのT-シャツやカバンなども出てきている。

先ほどオンライン・ショップを拝見したら新作のカバンが掲載されていた。「ほっほしい!」ここのT-シャツの隠されてたお洒落はT-シャツの背中の部分にはヘラジカ君の後ろ姿がプリントされて事である。あと襟元にもヘラジカ君が。カラーバリエーションやヘラジカ君のバリエーションもある

なおこちらのT-シャツは31ユーロだったかな?甥っ子には遠足用にリュックをプレゼント。

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Mammut (マームット)

創立は1862と言うスイスの歴史のある会社。日本でも店舗がいくつかある。元は農業などに使うロープの生産をおこなっていたとか。それが原点となり、後に山登り用のロープへ発展し、その後、登山用品、寝袋、ウェアなど総合的な商品展開を発展している。トレードマークのマンモスのロゴは1943年からあると読んだ記憶がある。自分はこの会社のシュラフをキャンピングに行く際などに使っているが軽くて暖かい。なお寝袋の足先には大きくトレードマークのマンモスが付いている。ここのT-シャツも好きなのだが、ロゴが大きくプリントされている物はメンズT-シャツのみ、私的には別に問題はないのだが。なおメンズT-シャツ1枚約40ユーロ。上記のヘラジカ君より1000円くらい高い。たかが千円、されど千円。ケチな自分はもっぱらバーゲン時ねらい。

 

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Fjällräven (フェールラーベン)

スウェーデンの会社。丸くなった北極キツネのロゴマーク。ちなみに英語のホームページでも、ちゃんとAに点々(Ä)を付けて記載されてる。なお日本のショップはA

の上の点々を付けていないところも多い。点々が有ると無いととでは違う文字ですよ。「め」の代わりに似てるから「ぬ」を書くいった感じだと、スウェーデン人の友達は言っていた。

日本での一時期はやって「カンケンバック」(ちなみに正しくはKånken書きます。aに○が付いてます)はカラーバリエーションが多いのと、小型で手軽なのが人気。バック以外だとドイツではジャケットやマウンテンパーカーが主流。あと流石北欧!といった感じのセーターなんかもある。更に変わったとこでは狩猟用のナイフケースや鉄砲ケースなどもある。でも個人的にはキツネのロゴで大きくプリントされているT-シャツが好きだ。

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しかしこの会社のマークにもなった北極キツネだが、天然記念物とし保護がされているにも関わらず生息数は激減。更に近年、温暖化の影響で彼らの生活環境の変化、またキタキツネなども彼らの生活圏に増え、餌の取り合いなども激化していると聞く。

同社は1990年より北極キツネ保護プロジェクトにも大学・研究機関と共同で参加。絶滅の危機から北極キツネを守るため保護に力を入れていると聞く。

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ドイツ・環境・「エネルギー証明書」

エネルギー証明書の話

 

現在住んでいる賃貸のフラットが冬場異常に寒い。暖房はつけているのだが、断熱性が悪く、室内は通常18度くらい。なかなか20度以上に温度が上がらない。早朝は室内の窓に露がびっしり。ガラスワイパーで拭くものの、すでに露では無く、水流として窓を流れ落ちるので、窓下にバスタオルを轢いて、水流をキャッチ。

窓ガラスは2重だが、建物のつくり自体が安いらしく、故に断熱効果が悪い。なので毎年、春先から秋にかけ、引越し先を探しているのだが、住居不足と家賃の急上昇が社会問題化している現在、なかなか思った物件が見つからず、既に7年間、同じフラットで生活している。

 

そんな状態なのだが最近、払えそうな家賃の一軒家の物件があったので、見学に行って来た。家自体は二階立て、さらに地下室があり楽器の練習も出来そうな感じ。庭は家庭菜園や植物を愛でるのには十分な広さで、また大きな物置小屋もあり、なかなか興味が引かれる物件だった。

 

だがその物件のエネルギー証明書を見た瞬間、「この物件はやめるべきだ」と言う結論に達してしまった。なんとエネルギーの消費クラスがHなのである。正しくH-クラスの物件だあった。

 

 

ここドイツにはエネルギーの節約に関する法律がある。簡単に言えば「省エネ法」である。

2014年に強化され、住居の賃貸や売買時にその建築物のエネルギー効果を示さなければならない。抜き打ちで検査があり、このエネルギー証明書がない場合は、罰金になると聞く。

 

下記エネルギー証明書の概要を掲載。A+が一番エネルギー消費量が少なく、Hがエネルギー消費量が一番高い。ちなみにこのエネルギー消費は暖房に要するコストで、1㎡当たりのエネルギー量の年間値である(kWh/)。

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断熱効果が高めてある近代新築一戸建てでは大体BからCレベル、年間エネルギー量は75kWh/㎡ほど。また平均的な住居では150kWh/㎡の消費量になる。加えてパッシブハウスと言う(超)省エネ住居では年間エネルギー量は15kWh/㎡以下だと聞く。

 

 

エネルギー消費量の違いはずばり家計に響く。下記の表をみてもらえば分かるが、平均的な住居のエネルギークラスはEである。現在住んでいるフラットを例にすると、広さが約80m224.2坪)である。計算上の年間のエネルギー消費量は960ユーロ(約11万円)になる。これがエネルギークラスHになると少なくとも1600ユーロ(約16万5千円)。差額約5万5千円。毎月約4600円出費が多くなる。

 

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ちなみに自分が先週見学に行った物件はエネルギークラスH、総面積は130m2の一軒家。ざっと計算してみると暖房費だけで年間2600ユーロ(約30万円)も掛かる事になる。

 

通常物件の広告には基本の家賃と、水道代や光熱費、諸雑費を含んだ総額家賃が掲載される。暖房代は込みの場合も、また別途の場合もある。今回の物件は別途であった。住居が広くなれば、家賃も高くなる。それに加えて断熱性が悪く、暖房費が必要以上に高くなる。高くならないのは自分の月給だけである。そんな事を思い、今回はこの物件を諦めた。

 

ドイツ・環境・「火災とアスベスト」

Brand (ブラント・火事)火災による、アスベストの飛散。

 

2016年8月

木製インテリア・木材商品の専門店、「ヴィケルト」が火事に見舞われて。総面積12000mの大型展示売り場が全焼した。被害総額はおよそ数百万ユーロだと聞く(数億円)。消化活動は200名の消防隊員により2日かかりでおこなわれた。

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この火災で深刻な被害を受けたのは当事者だけではない。

火災現場から200m以内は立ち入り禁止となった。幸いな事に民家は無いと聞くが、火災現場200m以内にある約20社、計300人の従業員は火災後、事業を行なえない状態にあった。

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その理由は、火災現場より飛散したアスベストが原因である。汚染元は展示売り場の屋根にあったアスベスト混入の防火建築材や波型のスレート板である。アスベストの総面積3150m(高校の体育館800mの約4倍)

 

地元では、火災の発生後、アスベスト繊維の飛散を懸念する声があがり、専門家や消防関連、町の行政が緊急会議を行い、火災現場の立ち入りを規制し、また同時にアスベスト対策とし、消化後も水をまき、繊維が飛ばないよいにするとともに、HEPAフィルターを内蔵する掃除機で有害なアスベストの繊維の除去を行なった。なおこの作業に2週間かかる見通しだと聞く。

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2015年8月

日本人の多く住むデュッセルドルフ。その郊外にある街クレーフェルトはライン川沿いにある、工業の街である。そのケミカル・パークで化学物質による爆発事故が起こったのはちょうど一年前の8月。

消防隊員140人が出動した大規模な爆発事故である。この爆発で20人が負傷したものの、死亡者は出ずにすんだ。しかしこの爆発事故でもアスベスト繊維が飛散してしまったと聞く。幸いな事に爆発事故の起こった建物内に多くのアスベスト繊維が留まり、建物内部、及び周辺では石綿濃度は高かったものの、周辺住宅地での石綿濃度は健康被害げでる程では無いと言う事だった。

私的には「運が良かった」と言うしかない

 

 

2015年2月

ライン川とルール川の合流地点に位置する工業都市デュイスブルクで火災が起こった。この火事で大型倉庫が全焼、その際にアスベスト繊維が飛散した。汚染元を中心に半径500m以内の領域は立ち入り規制となった。なおこの規制区内には340件のアパートや住宅、また60件のオフィスや店舗があり、建築物の壁、屋根、ベランダ、また規制地域内の車、道は歩道など放水車や放水ポンプ仕様しアスベスト繊維を除染した。また必要におおじ、特別なHEPAフィルターを搭載した産業用大型掃除機にてアスベスト繊維の除去にあたった。この作業にはアスベスト除去作業員50名、さらに消防隊員が加わり、大掛かりな作業となった。なおアスベストの除去作業に掛かった費用、約百万ユーロ(1億6000万円)。この費用は、出火元の倉庫側の保険によってまかなわれると聞く。

 

 

2014年12月

クリスマスのショッピング客で賑わうドイツ・オランダ国境近郊にあるレイモンドと言う街のアウトレットモールで火災が生じたのはクリスマスのショッピング客で賑わう時期であった。その火事でアウトレットモールにある大型ヨット専門店が全焼、100隻以上のヨット台無しになった。。被害総額はおよそ数百万ユーロ。ここで問題になったには火事で飛散したアスベスト繊維である。何でも屋根にはアスベストを含んだ波型のスレートが使用されていたそうだ。火災の消化後、しばらく間学校などは休校となり、また市民も防塵マスクの使用し生活をしたと聞く。また汚染元から4.5kmないでアスベスト繊維の除去作業が行なわれた。

 

 

これがごく最近の火災によるアスベスト飛散で事故である。日本では災害時のアスベスト対策近年重要な課題になっていると聞く。火災時、正しくは火災が起こる前に、アスベスト対策をするのが一番良い事なのだろうが、除去費用と法律の甘さでなかなか進まないのが本当のところである。

 

ドイツ・環境・「マイクロプラスチック」

Microplastic マイクロプラスチック

 

小さなミクロのプラスチック破片が魚の稚魚の成長を脅かしている。この様な環境で育つ魚の稚魚は遊泳に関しても些か活発ではなく、また自然界の天敵の出す、化学物質への反応も鈍い。

このような事が他の種の魚の稚魚でも起こりうるなら、ミクロサイズのプラスチックによる生態系への悪影響は当然危惧されるべきであると言うコメントが雑誌サイエンスに掲載されていた。

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世界的に見て、毎年300万トンのプラスチックが生産されている。その多くが自然界に流出し、最終的に河川・湖・海洋環境に流出する。プラスチックの問題点の一つは、分解されにまでに時間が掛かる事である。波による侵食、紫外線による光化学反応でプラスチックは壊れ、砕け、削れ、更に細かい粒子になり環境に累積する。

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マイクロプラスチックとは通常5mm以下のプラスチックを言う。小さいものでは化粧品や歯磨き粉に含まれる粒子、また工業用・産業用研磨材などに利用されるものなど様々マイクロプラスチックがある。ポリ塩化ビニル、ポリスチレン・ポリウレタン、難燃剤、柔軟剤などが主なマイクロプラスチックである。

専門家は数年前より環境への影響を懸念しているが、個々の動物種への影響、環境全体への影響など調査が始まり、日が浅く、まだ大規模なデーターがそろっていない。

 

スウェーデン、ウップサラ大学の研究グループは大変興味深い論文を発表していた。3つ水槽で、魚の稚魚をふ化させ、飼育した。その際に個々の水槽は以下の条件になっている。

・水槽1・コントロール(マイクロプラスチックは無)

・水槽2・発泡スチロールの破片 1万個/1m3

・水槽3・発泡スチロールの破片 8万個/1m3(これはスウェーデンや他の国の沿岸近辺で確認されてマイクロプラスチックの濃度と等しい)

 

さてまずは卵からのふ化率だが水槽1(マイクロプラスチック・無)は96%。逆に水槽3(マイクロプラスチック・8万個/1m3 )は81%と言う結果がでている。

またふ化10日の稚魚では、個体の運動能力に違いが見られ、マイクロプラスチック入りの水槽の稚魚は泳ぎが鈍く、また移動距離の短さが顕著であると言う。

 

また自然界の天敵が出す「ニオイ」を水槽に入れてみたところ、マイクロプラスチック入りの水槽の稚魚では反応も鈍く、実際に天敵種である大型の肉食魚を水槽に入れてところ、24時間以内にすべての稚魚が捕食されてしまった。なお同実験で水槽1の生存率は46%だった。

 

驚くべき事に、マイクロプラスチック入りの水槽の稚魚では餌の好みが通常の稚魚と異なり、マイクロプラスチックを通常の餌より好んで食べるようになった。動作も鈍く、通常の餌よりも身近にあるマイクロプラスを食す様子は、ファーストフードを好んで食し、体を動かさないカウチポテト族の様だと研究者は言う。なおその為、体長も通常の稚魚に比べて小さかったという。

 

近年、北海ではヘヒト(英語はパイク)とバーシュ(英語パーチ)が減っている。また逆にマイクロプラスチックは増えている。と言う研究結果もあり、どうも実験室内での様な事が自然界でも起きているのではないかと懸念されている。また今後様々な生物種における世代を超えてのマイクロプラスチック影響、また生態系や多様性への影響なども調査をすすめていく必要がある。

 

なおこの研究結果につき「今後マイクロプラスチックによる環境汚染・環境負担を理解するべきよき手がかりになるのではないか」と他の研究者も期待する。

 

2014年にドナウ川でのマイクロプラスチックの調査結果がある。これによると稚魚よりマイクロプラスチックの方が多い調査箇所が点在した。オーストリア・ウィーン大学の研究グループによると、1000m3につき稚魚・推定275匹のに対しマイクロプラスチック・317個のが存在すると言う。

 

これらのマイクロプラスチックはすべてプラスチック製品に由来する。直接排水から河川へ流れ出るもの、ゴミ集積場から河川や海に流れ込むもの、また人が投げ捨てたプラスチック製品が砕け、削られ細かくなったものなど汚染元は様々だ。

これらは様々な水性生物の体内で蓄積される。ゴカイ・ウミウシ・貝類、又これらのプランクトン状の幼生など、魚の稚魚だけではない。また食物連鎖ではそのつど、蓄積が増えてくる。例えばある種の魚は自分で直接食したマイクロプラスチック、また餌になる生物が食したマイクロプラスチックの両方を体内に蓄積する事になる。またこれらのマイクロプラスチックは食物連鎖の流れにのり、最終的には我々の生活圏に戻ってくる。

 

ちなみにマイクロプラスチックの細片化が進みナノレベルの粒子になった場合、動植物の細胞内への侵入も考えられる。どの様な悪影響があるか懸念される。

 

1950年代にはまだ年間100万トンのプラスチック生産だったが現在はその100倍である。

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ヘヒト: カワカマスと言う別名がある。アリゲーターのような巨大な口と鋭い歯、及びカマスの様な長い体が特徴。ほぼ何でも食べる肉食魚。なお日本だと生態系に被害を及ぼす特定外来生物。私的に言えばどんどん釣り上げてから揚げにしてしまえば良いと思う。

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バーシュ: ヨーロッパではポピュラーな魚でスズキの仲間。特にドイツでは食用漁獲対象魚。写真だとブラックバスを小さくした様な感じ。なおこれも特定外来生物。

 

 

 

 

ドイツ・環境・「家賃20%Off」

 

ここ数ヶ月、「引越しをしたいなぁ」思いつつ、いくつか物件を見学しているのだが、地下室の仕切り板にそのまま石綿スレート板が使われている物件に遭遇した。

日本では賃貸契約書に石綿調査を行なったか、いなかを記入する欄があると聞くが、ここ、ドイツでは質問しない人の負けである事が多い。つまり借り手は不動産屋なり大家なりに「アスベスト使用してる?」と質問しない限り、貸し手側は不利な情報を提供しない。

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さてこの質問に対し貸し手側「はい・いいえ・わかりません」と言う3つの選択肢から回答をする事になる。「無知は罪にならない」と言う考えがある社会なので貸し手は「わかりません」と答える事が出来、また石綿使用の見解が無くても、調査の義務が生じなし。

故になかなか石綿レジスター、つまり石綿使用建築物の登録システムが普及しない。

 

さて今日はドイツの首都、ベルリンでのアスベスト裁判の判決の紹介。

 

昨年の暮れ某一家は小さな子供をつれ、交通の良い便も良いベルリン市内へ引っ越した。引越しの片付けも済み、5ヶ月が過ぎた。新しい環境に慣れ、生活もやっと落ち着いた矢先に、賃貸住居の床材にアスベストが使用されている事が発覚。即時に賃貸契約を破棄し、それから1ヶ月後に速やかに退去した。

 

通常、賃貸契約の解約については、書面での解約依頼から3ヶ月と言う決まりがある。つまり、今日、住居を退去しても、3ヶ月間、家賃支払い等の義務が生じる。

また引越しをするにあたり、お金も時間もかかる。

まして新しく越してきたばかりなのに、直ちに次の住居を探し、引越しを余技なくされたのでは、心情穏やかでは無い。更に小さな子供がいるのも係わらず、発ガン性の高いアスベスト建材使用の住居は考えものである。

 

今回、問題となったはのはビニール製の床タイルである。このビニール製の床タイルは非飛散性アスベスト建材と言う事で削ったりしなければ、アスベスト繊維が空中に舞う事がないとされる。この一家が新しく入居した際に、既に傷や損傷した床タイルがあったと聞く。これを借り手側である一家が交換を仕様とした際にアスベストの使用が露見したんである。

そのような背景があり、一家は住居の大家を相手取り損害賠償を求め民事裁判を起したのである。

 

地方裁判所での第一審では一家の入居日より退去日までの家賃の20%の引き下げ、またアスベストが発覚する日までの不安要素に対する損害賠償とし、更に5%のの引き下げを命じた。

しかし第二審ではの判決では家賃の20%の引き下げ呑み認められてた。

理由としては損傷のある床タイルは9枚だけだったので、それに見合う額として20%が妥当と言う事であった。しかし通常、アスベストに因る健康被害を訴える際には、石綿飛散を証明すべく、空気中の石綿濃度の測定を行なわなければならない。もちろん費用はそれなりに掛かる。しかし二審の判決では「破損のある石綿含有建材は健康被害の可能性が十分に認められる」と言う事で濃度測定は不要だという結果にあった。

 

この裁判の重要な点は、アスベスト建材が利用されているマンションやアパート、テナントビルなどを貸している所有者や大家などが今後同じ様な理由で民事訴訟で起訴されるかもしれないと言う事である。

 

今回の場合、この貸主の損失は一家が滞在した5ヶ月間の家賃の20%だけで済んだのだが、もし住居者は退去までの3年間の健康被害を訴えた場合、または同じマンショウの他の住居者も似たような理由で同時に訴訟を起した場合、大家側の支払い費用は多くなるだろう。また加えて裁判の費用の負担なども掛かってくる。

実際に石綿関連で総額約500万円の家賃割引をする事になった事例もある。

 

現在、大家やビルのオーナーなどに石綿調査の義務はない。石綿の有無を知らずにいた為に、上記の様に、後になり借り手とトラブルになり、思いがけない費用が掛かってくる場合が増えてきていると聞く。事前にアスベストの「有無」を知っているのであれば、住居者に賃貸契約時に情報を与え、判断を任せる事ができる。

ベルリン市で現在推定8万戸の住居でビニールタイルなどの石綿建材が使われていると言う。住居やビルを貸す側は、自衛の意味を含め、石綿調査をする事を考えるべきだろう。なお調査費用は一検体大よそ約5千円位からだそうだ。

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タイルの下にアスベストがある