ドイツ・環境・「イタリア・アスベスト除去予算の話」
負の遺産と戦い続けるイタリア。ヨーロッパの中でも数少ないアスベスト採取・生産国であった。今もまだ過去の亡霊を引きずっている。この亡霊と少しでも早く決別すべきイタリアはここ3年間の石綿対策費を可決した。
2016年の予算は550万ユーロ(約6.2億円)17年及び18年は更に予算を増やし、各年度600万ユーロ(約6.8億円)だと聞く。
この予算は「現在まだ多く使用されているアスベスト」の現状改善を目的とするもので、環境保護法の一部として可決された。
今回、公共建築物のアスベストの除去及び廃棄作業、屋根などの石綿セメントのスレートの除去などが対象とされている。
イタリア環境省ガルレッティ担当大臣は「これにより、多くの公共建築物からアスベストを除去で出来ると共にさらに地域の企業などと協力しながらプロジェクトに推進したい」とコメント。
費用の確保、更なる石綿対策プロジェクトの推進、隠されている危険性をはっきり示す事が重要であると言う。
助成金額は費用の50から100%で付加価値税を控除し付与されるという。ちなみにイタリアは確か付加価値税22%だと記憶している。なお予算の割り当て先に関しては毎年調整しなおされる予定である。
助成に関しての優先順位も決められており、幼稚園、学校、公園、病院そしてスポーツ施設など、とりわけ子供たちに多く利用される施設、そしてその施設から半径50mの地域を中心に対策が展開される。またその他の基準としては、一年以内で完了できる石綿対策、厚生当局や環境当局が「即時にアスベスト対策を必要」と判断した建築物、国益に繋がる公な建築物、そして既にアスベストのマッピングが存在する建物などが対象となる。
また今回のプロジェクトにあたり、技術報告書、石綿含有物質に関する調査書、具体的な除去費用に関する書類、そして経済状態を示す書類などの提出が義務づけらている。
さらに学校施設対象のリモートセンシングの先駆けプロジェクトの展開も予定されている。
これは学校校舎内にあるアスベストをマッピングして記録するシステムである。アレッサンドリア、ピサ、サレルノの3県からスタートさせるという話である。
ちなみにここドイツでは国のアスベスト対策費予算の話は聞かない。民間の建築物の場合、石綿除去工事などに掛かった費用は、確定申告の際に控除の対象にはなると聞く。ただし事前に専門のアスベスト調査機関に石綿除去の即時・随時必要性を判断してもらう必要がある。その際に即時除去の必要性が認められた場合、控除の対象になる。すなわち石綿スレートの屋根などで、現在アスベスト繊維の飛散がない場合は、即時除去の必要性がなく、控除の対象にならないらしい。なのでなかなか石綿スレートが減らないのが現状である。
ドイツ・環境・「イタリア・エタニット社の話」
Casale Monferrato カザーレ・モンフェッラートはイタリア北部、トリノ郊外に位置する街である。
街中には多くの古い建物が残されており、なかなか見ごたえがある。周辺には田園が広がり、またイタリアきってのワイン産地として有名である。
しかしこの町の名はもう一つの大きな出来事でも知れらるようになった。
汚名の多い、スイスの建築資材メーカー・エタニット社。イタリアのカザーレ市に工場があり、1985年まで操業していた。その工場の従業員・周辺住民2〜3000人がアスベストによる疾患で死亡したと言うイタリアでの社会問題は決して過去の事ではない。
労災認定者、約1700人。彼らには補償金及び労災が払われる結果となったのは90年代初期の事である。
90年中期より、アスベスト環境曝露による被害者数も増えてきた。その数大よそ500人。彼らは環境曝露の為、労災の対象外となり、補償もないままであった。
2009年、当時のスイス人及びベルギー人の経営者2名(シュミットハイニ被告、ルイ・ド・カルティエ被告)が過失致死罪・環境破壊罪及び安全配慮義務違反の容疑で起訴された事は記憶に新しい。なお2056件の死亡被害と833件の疾病被害の責任が問われた。
トリノ裁判所での一審・二審では有罪判決が下だり、また二審では禁固刑18年及び賠償命令が言い渡された。しかし、この判決を不服した被告側は上告。最高裁で経営者の責任追及がなされる結果となった。
しかし最高裁での判決はアスベスト被害の犠牲者やその遺族の気持ちを顧みないものであった。「既に時効が成立している」との理由で同被告は免訴になったのである。すなわち裁判が打ち切られ、法の基での責任追及が無効になった。賠償命令も取り消された。2014年の冬の出来事であった。
それから約半年後、2015年夏。トリノ裁判所の検察当局をはじめ閣僚評議会議、ピエモンテ州、アレッサンドリア県などがローマの最高裁の判決を批判すると共に、原告人となり、スイス人元経営者シュミットハイニ氏の再審を要求した。起訴の理由としてはアスベストによる健康被害での死亡者258名に対しての過失致死罪である。
ここで問題になったのは一事不再理の原則である。つまり「ある事件で一度裁判で責任を追求した場合、同じ事件で有罪・無罪・免訴に関係なく、再び起訴できない」っと言う決まりがある。今回の258名に対しての過失致死罪での起訴が憲法違反にあたるかどうかを判断するため、まずはイタリア憲法裁判所にて審議が行なわれ事となった。
その判決が2016年今月21日に下った。
今回の起訴内容258名のうち、186名に関しては一事不再理の原則にて再審不可と言う内容であり、「起訴状より186名を削除するように」とトリノ裁判所の検察当局に伝えられた。
しかし逆の見方をすれば残り72名の過失致死罪での起訴の可能がまだ残っているとみられている。
シュミットハイニ氏の代理弁護人は「前回の裁判ではすべて決着がついている」とコメント。また一事不再理の原則とは同一事件で再審を受けないという事なので、つまり今回新たな被害者名が挙ても事件としては前回と起訴内容と同じでものであるっと言う見解を示したと聞く。
これに対し原告側は「法律に基づく訴追責任の権利」を主張。前回の裁判では「時効」と言うで事で、結局有罪でも無罪でもない判決結果である。すなわち検査当局に責任追及の権利があると言う意見もある。
また原告側は「被害者の救済を行なわない為、今後欧州人権裁判の介入の可能性もある」とコメントとした。
エタニット裁判はまだ終わっていない。
ドイツ・環境・自然とビールを愛するドイツ人
Natur & Bier (ナチュゥアー&ビァ)自然とビールを愛するドイツ人。
多くの企業がCSRとし環境問題への取り組んでいる、今日。その中でクロンバッハ社の環境プロジェクトを紹介したい。
クロンバッハ社はケルンから東に200キロほど行った、のどかな田舎町「クロンバッハ」にある醸造所。200年以上の歴史がある。麦芽・ホップ・水・酵母のみを原料とした口当たりが滑らかなピルスナーはドイツで好まれ、飲まれるピルスビールの10杯に1杯はこのクロンバッハのピルスナーであるとも言われている。とりわけ麦芽の風味が強い事から「飲むパン」と言われる所以が納得できる。多くのドイツ人愛され、国内消費量ナンバーワンと言っても過言ではない。
そのクロンバッハ社がWWF(世界自然保護基金)、NABU(ドイツ自然保護連盟)などと提携し生物多様性保全の為に一役買った。
現在ドイツ国内で約71,500種の動・植物が確認されている。そのうち約1/3の動・植物が希少種・絶滅の恐れがあると数えられており、また今世紀までに6%、約4300種がドイツ国内では絶滅したと言われている。
生物多様性、環境保全はドイツでは決して新しい課題ではい。何十年も取り組んでいるにも関わらず、現在する動植物の生活環境の61%は「悪い環境」としてランク付けされているのが現状だ。
そのような調査結果(最新版2014年)が背景にあり、今回の大規模な生物多様性保全キャンペーンが行なわれた。ちなみにモットーは「保護と満喫」。ビールの味わいを満喫する事と自然を満喫する事がかけてある。
簡単に説明するとビール1ケースを購入すると10セント(約11円)が保全プロジェクトに流れる仕組みになっている。さらい小粋なのはビール瓶に貼ってある銘柄ラベルの裏側に動物の写真ステッカーが貼ってあり、これをコレクションをする事もできる。もちろんコレクション用のアルバムも用意されており、「収集」と言う人間本能をくすぐっている。
生物多様性保全キャンペーンでの収益金は具体的には以下の6つのプロジェクトに使われると言う。
1.オオヤマネコ(リンクス):
ドイツ・フランス国境にあるペルツァーの森への野生復帰・移住計画。
2.カワウソ:
北ドイツ・ゴーデン村にて、カワウソの生息域の水位の回復。
3.カワウソ:
交通事故防止の為の横断用トンネルの設置。
4.アシナガワシ:
北ドイツ・ポーランド国境近くにある湿原での原生林保護。
獲物の狩りに適した開けた草原などの保全。
6.ナベコウ(黒コウノトリ):
ブランデンブルク州。水深が浅い池沼の保護・水質保全。
キャンペーン期間は4月15日より今月15日までの3ヶ月間。当初の目標金額は1,500,000ユーロだったが最終的には1,862,165ユーロ(約217,661,018円)に達したと言う。計算すると約18、000,000ケースが売れたという事になる。
ビールを飲みながら、環境問題について語る。いかにもビールと自然を愛するドイツ人らしき発想ではないだろうか?
ドイツ・環境・イタリアの話
Italyのお話。
現在はテレコム・イタリアの傘下に入りイタリアを代表するシステムソリューション事業を運営しているオリベッティ社。歴史も長い。
このオリベッティ社の工場従業員約20名が2008年から2013年次々に中皮腫で死亡した。
これは70年代後半から90年代中期まで工場で使用されていたアスベストの飛散による健康被害が原因とされ、今月18日に地方裁判所にて判決が下った。
この裁判はオリベッティ社のデ・ベネデッティ「責任者」をはじめ、オリベッティ社及ぶ関係の幹部役員17人名を相手に起された裁判である。
デ・ベネデッティ氏はイタリアでも著名な実業家で、イタリア最大部数を発行する日刊紙 レ・プッブリカ新聞社の所有者であるだけではなく、エネルギー分野、自動車関連分野などと幅広く事業を展開している。その為、裁判の成り行きに注目が集まっていた。
裁判にあたり同社工場従業員の死亡とアスベストの因果関係が2年以上の月日をかけて慎重に調べられた。その結果、デ・ベネデッティ氏をはじめ、幹部役員に「アスベストの危険性を知りながらも適切な対策を怠った」と言う判決が下された。デ・ベネデッティ「最高責任者」及び兄弟にあたるフランコ「幹部役員」に対しては業務上過失致死罪・傷害罪とし禁固5年2カ月の実刑判決が言い渡された。加えて判決では損害賠償支払いも命じられた。
なおオリベッティ社と関係が深いパッセラ「元経済開発・インフラ整備交通相」に対しては、90年代にオリベッティ社のCEOを努めていた経歴に基づき、責任に問われていたものの、1年11カ月の執行猶予と言う判決が言い渡された。
デ・ベネデッティ氏は今回の判決を「検察側の主張はまったく事実無根である。」とコメントを発表し、判決を不服として控訴するとの方針だと聞く。
近年イタリアでは子の様なアスベスト被害に対しての刑事責任が問われている。
イタリア北部にある汚名の高い建材製造会社エタニット社の裁判では従業員及び周辺住民2000人以上がアスベスト関連の疾病で死亡したとされ、当時の経営者2名に多額の賠償命令と共に禁固18年の実刑判決が言い渡された。
また大手タイヤメーカ・ピレり社の裁判では工場従業員20名がアスベストによる健康被害で死亡したとし、同社最高責任者に対し禁固7年11カ月の実刑判決が言い渡された。また同時に賠償金の支払いも命じられた。
この様にイタリアでは悪に対し個人の責任を追及する傾向があるようだ。
なお、エタニット社の裁判なのだが、地方裁、高等裁では当時の経営者の刑事責任が認められてものの、最高裁では「時効が成立している」とし、それまでの判決を廃棄し無罪を言い渡した。同時に賠償命令も取り消しになった。
エタニット社は富を築く為に健康と環境に多くの犠牲を出した。その結果が無罪と言う。被害者は遣るせない思いだろう。ここ数年被害者の数は増え続けている。
責任の追及も大切だが、被害者の救済・今後の石綿飛散対策の方がより大事ではないかと個人的に思う。
ドイツ・環境・ゴミの不適正処理の話
Wein(ワイン)畑に囲まれたシュトゥットガルト。市内から約12km程に北にルートヴィヒスブルクと言う街がある。。ヨーロッパ最大規模のバロック宮殿 ルートヴィヒスブルク城が佇む。その庭園の一角にはメルヘンの庭があり、グリム童話の世界が再現されている。シュトゥットガルト中央駅から電車で20分、日帰り旅行に最適である。
そのようなメルヘンの世界とは裏腹のロマンチックとかけ離れた話を紹介。
Simisa/wikimedia
Fzrtaarn/wikimedia
ルートヴィヒスブルクの廃棄物回収協会(AVL)はルートヴィヒスブルク郡の100%資本による公益・公共団体であり、廃棄物、つまりゴミ処理事業を行なっている。そのずさな管理・運営が公になり、地元住人に波紋が広がった。
このゴミ処理場は10数年前より建築廃材の最終処理地とし実験的に運営されてきた。しかしAVLの上層部は一般市民に情報公開をすることなく、また同郡管轄の地方行政局に重要報告を怠ったていたと言う過去がある。市民感情を逆なでる行為はそれだけではない。AVLは原子力発電からの撤退ともに発電所の解体で更に生じる建築廃材3300トンの受け入れを容認しているという。
Graham Horn/wikimedia
今年に入り、地元の環境団体がゴミ処理場の状態を独自調査した。その調査写真には産業廃棄物が詰められている廃棄袋が破れたまま、また数週間そのままの状態で放置されてる様子が収められている。廃棄袋の中身は特別管理産業廃棄物に当たる、発がん性の高いアスベスト。他の建材廃棄物と一緒に処理されていた。なお法律では分別して破棄しなければならない。
このような事実が発覚し「健康被害がでるまで数十年かかるアスベストの管理でさえ、ずさんな状態なのに、放射性で汚染された建築廃材の最終処理など安心して任せる事ができない」、結果AVLは市民の信頼を失う事となった。なお昨年度搬入されたアスベストの量は約13000トン。
ルートヴィヒスブルク郡行政局・ハース局長は提出されて写真については「これだけではなんとも言えない」とコメントするものの「毎回正しく処理されている事を証明する事も難しい。この様な事実はあってはならない」と述べた。その背景には市民からの批判・非難を受け入れた場合、同時にAVLの廃棄物処理法違反の疑いが生じる事を懸念しての回答となった。
ちなみに今回のような不適正処理では最高50000ユーロ(575万円)の罰則が科せられる可能性があるとの事。なお日本だと不法投棄の際は5年以下の懲役または1000万円以下の罰金で、不適正処理はまず行政指導だったと記憶している。またドイツではこの様な不適正処理でアスベストの飛散などが起こった場合は傷害罪としての対応になる事もあると聞く。
今回のアスベスト不適正処理の責任とし、ルートヴィヒスブルク郡行政局はアスベストの搬入を停止するともにAVLの処理管理長の解任及び部署の異動を行なった。またAVLの総責任者、並びに直接現場に近い場所で働く技術担当長も市民の批判が強まり辞任に追い込まれたと聞く。
日本のような連帯責任的な概念はあまり無いドイツなのだが、3人の関係者が次々と任務を降りたのは珍しい個人的に思う。なお謝罪は無かったと聞く。
責任をとろうとしない責任者、謝罪をしない責任者も多いドイツだが、そう思うと日本の方が形だけでも謝罪があり、地位のある任務を降りるので、ある意味では潔い良いのかもしれない。
ドイツ・環境・核のゴミの話
Atommüll(核のゴミ)の最終処分場についての報告書が廃棄物最終処分地検討委員会より先日7月5日ドイツ連邦政府に提出された。
ドイツは脱原発撤廃を掲げているが、原発からの廃棄物の処理が今後大きな課題となる。この課題に取る組むべき、2013年7月に制定された「放射性廃棄物最終処分場の選定」に関する法律に基づき、翌年4月に廃棄物最終処分地検討委員会が発足した。
この委員会は研究者や連邦議会議員、州政府、経済界、労働組合、環境団体、宗教団体などの代表33名から構成されており、当初、報告書の提出期限は2015年末の予定だったが委員会設置作業が難航した為、期限を延長しての提出になったと聞く。しかし同委員会の構成メンバーからも推測できるように多様な視点からの報告書となった。
ドイツは以前よりニーダーザクセン州のゴアレーベンが政治的背景を受け、80年代より放射性廃棄物の最終処分場とし候補に挙がっていた。しかし市民の反対運動と、「反原発」を掲げる緑の党が参加する政権下でゴアレーベンに最終処分施設を建設をする計画が白紙に戻されたという経緯がある。その様な背景を受け、「政治的な視点を抜きにした、科学的な根拠に基づく放射性廃棄物の最終的な貯蔵施設を建設する為の候補地の選定」が2年の月日を掛けてドイツ国内で行なわれた。
今回の約700ページに及ぶ報告書では最終処分場の地質的条件や「公平な選定」を行なうべき手法に付いての案が明記されているものの、具体的な候補地名は挙げられていないと聞く。
しかしな最終処分場の最終選定と言うのは脱原発を計画するドイツの重要課題である。「我々の世代にも多くの反原発支持者がいたものの、結果とし現状の環境・社会負荷を生じさせてしまった。核のゴミを処理する事は我々の義務であり、責任である。」とシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州環境担当相ハーベック氏は語る。
なお選定の手法については始めに政治的背景を抜きにした「白い地図」が編集されると言う。これは地質学的基準、すなわち「地下300mより深いところにある、岩塩、泥岩、花崗岩の層」が必要条件となる。
また具体的な候補地の選定は市民参加型で進められると聞く。つまり放射性廃棄物最終処分施設の建設とは市民・国民すべての問題及び課題であり、故に専門家からなる検討委員会のみではなく、市民・国民が一緒になり問題解決に向け尽力するべきだと言う方針である。
ちなみにこの「白い地図」の編集にあたり、以前から大規模な反対運動が起こっているゴアレーベンも例外視されない。つまり地質などの科学的条件が当てはまれば、核のゴミの最終処分場の候補地になりうるわけである。
しかしニーダーザクセン州、ウェンゼル環境相はゴアレーベンの岩塩層は地下水の浸入などがあり、放射性廃棄物の最終処分場としては不適切であると発表している。
ドイツ環境自然保護連盟(BUND)ブルンスマイヤー氏も「ゴアレーベン計画は当時の政治的背景に基づき進めれられ物であるため、ひとまず候補地から外すべきだ」との言う。
また今回ゼクセン州、バイエルン州は「花崗岩層は核のゴミの長期貯蔵に不適切」だと言う意見を提出し、そのにより、同州が選定候補地に挙がらないようにする動きがある。ちなみにバイエルン州なのだが、同州はバーデン・ビュルテンベルク州と並び最も原発が多い州であり、原発に因る恩恵も大きかったと推測できる。
なお報告書に拠ると候補地の選定を2031年までに終え2050年より放射性廃棄物の搬入されて予定であるという言うが、候補地の最終決定までに更なる調査が必要である。また市民・国民の理解をどの様に得るかと言った課題も残っており、まだまだ多事多難である。
ちなみに報告書はドイツ連邦議会のHPhttp://www.bundestag.de/endlager/で見る事ができます
ドイツ・環境・アスベストの話
環境の国ドイツ。
今日のジレンマはアスベスト。
子供の頃に石綿除去で学校が休校になった事を思い出した。
そう、この石の綿がアスベストである。天然に産する繊維状の鉱物で髪の毛の5000分の1の細さだと言われる。この繊維の問題点は空気と一緒に吸い込んだ際、肺の組織に刺さり、その事により発がん性が非常に高くなる事である。
ドイツでは1993年に新規使用が規制されたが、それまでに使用されている分に関しては、石綿繊維の飛散の危険が低い場合には即時除去の義務はない。故に欧州議会が「2028年までにアスベストの完全な根絶」という行動計画を決議しても、現在までドイツでは具体的な石綿除去のプランが立っていないのが現状である。
そんな中で吉報をひとつ。
ヨーロッパの中央に位置する産業の拠点ハノーファー。世界最大の産業見本市の開催地でもあり、工業都市しての歴史は長い。その中に存在するリンデン地区なのだが、創立900年の歴史を持ち、19世紀に工業都市とし飛躍的に発達した。
当時産業発展の欠かせないのが水と蒸気であり、蒸気機関の発達により、従来の原動力(人力・牛馬・水車など)より、更に大きな動力を得る事が可能になった。
Christian A. Schröder氏がWikimedia commonsで公開
その当時の歴史を語る最後の蒸気機関施設(kesselhaus linden)がリンデン地区に文化保護遺産とし残されている。
1927年に建てられ37年まで使用されていた。しかしその建物にはアスベストが使用されていた。当時防熱、防火効果があるアスベストは工場に適した素晴らしい素材だった思われ、多様に使用されていた。
この蒸気機関の建築物、その後文化保護遺産して残されていたものの、アスベストによる汚染の為、内部の見学は一切禁止。また建物の老朽化にともなりアスベスト繊維の飛散の危険だけではなく、建物自体の存続も懸念されるようになり、結果修築の必要が生じた。
しかしアスベスト除去作業を含む基礎修築費は大よそ 250,000 Euro、日本円で約2850万。その費用をどの様に工面すべきかが大きな課題となり討議された。
幸いにも文化財保護の為の助成金の対象となり国から半額の 125,000 Euro、日本円で1425万円の補助が決まった。また市民や民間団体からの寄付を募り、現時点の寄付合計額は64,000 Euro。約720万円。流石、環境や文化遺産を愛するドイツの国民性を垣間見る事が出来る。しかしまだ61,000 Euroが不足していると言う。なので自分もまったく恥ずかしい金額なのだが寄付させてもらった。ちなみに除去されてアスベストの量はハトの糞と混ぜ7,000kgから10,000kgだと言う。
修復工事が予定通りに終われば今年9月11日より一般に公開される。